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日が陰ったかと思うや否や

空模様が突如として怪しくなり、

一気に湧いた雨雲によって周囲が暗転した。


ポツポツと降り始めた雨が

土砂降りに変わるのに一分もかからず、

雷鳴を伴って轟き渡る。



「キャー!!何でいきなり降るのよ!」



「マジかよ?雨季でもないのに」



騒ぐのも無理もない。


現在の天気予報は100%の確率、

天変地異などとの言葉は

使わなくなって久しい。


いまや予報とは名ばかりで

余程のことがない限りこれが覆える

事はないからだ。


しかもこの地は若干の四季が

あるとはいっても雨季が過ぎたこの季節

雨が降ることはない。




鬱蒼と生い茂った木々、加えて

厚い雨雲とこの豪雨。



あたりはいつしか闇に包まれ

その光景たるや……




まるで―――夜を彷彿させる。






「オイ……嘘だろ」



不意にキリトの声が少し離れた場所で

聞こえ、反射的にそちらに顔を向けた。



「キリト?」



が、こうも酷い雨と闇では仲間達の姿を

見つけることがかなわず、恐らくは

一番近い位置にいるのであろう

キリトの声がやっと聞こえるだけで

やはりその姿を捉える事は出来なかった。



「セキか?

……なぁ、お前にも見えてるか?

アレは……な……」



「え?何!?」



何を言ってるのか分からず、

というかもう最後の方は一段と激しく

なった雨音でかき消されてしまった。




「オーイ!!皆、何処だ?」



そう言って振り向いた時、不可思議な

光景を目の当たりにした。



光源?


ぼんやりとした小さな光が見える。



誰かがライトでも点けたのだろうか?


……いや、それにしてはおかしい。


その光は余りにも小さく

それに手元が安定してないというか

浮遊しているかのように見える。



浮遊?



頭に一つの仮説が浮かぶが

それは有り得ない事だと

直ぐさま否定した。


そんなことがあるわけない。



だが――



光源が一つまた一つと増えていくにつれ

セキの中で視覚で捉えている物体が

数ある常識の範疇を超え、ソレしかないと

確固たる結論へと淘汰されてしまった。



蛍だ、間違いない。



有り得ない事だとは思う。

が、しかし現実目の前で浮遊している

この特有の動きは蛍しか考えられない。


ただ奇妙な事なのはこの雨の中、

もろともせずに蛍は飛び交っている。



そう認識した時、




「!!!!」




一気にその数が膨れ上がった。

最盛期を思わせる程の乱舞に近い。


それは優に百匹は超えてると

思う位の数で、蛍など映像でしか見た

事のなかったセキは思わず唾を飲み込む。





綺麗だ――とても。




セキは異様な光景に

どうしようもなく惹かれていた。





“蛍?”








“そう、綺麗だよ。

淡い光を放ちながら飛ぶんだ”




“へぇ、見てみたいな”




“見せるよ、いつかきっと”




“――うん……そうだね”





なのに、


どうしてそんなに寂しそうに笑う?




約束をする度、君はいつも

そんな顔をするのは何故?






ねぇ、どうして?






“それは……が、……だから”














「あ……」




ザァァァァアという雨の音に

意識が戻る。



今、一瞬浮かんだモノは何だった?

再度再現しようとしても

たった今考えていた筈の事が

どうしてだか思い出せない。



「何だよ、今の」





いや、そんな事より

皆を探さなくては。



「オーイ、キリト~!コウ~~!!

何処だ?何処にいる?」



大声で叫ぶも

相変わらず雨の音以外に何の

反応もかえってこない。


このままここに居るのはヤバイ気が

するが、かといってこの暗さで

闇雲に動くのも危ないか。



どうしようかと思った時、セキは

自分の手がボゥと光っているのに

気が付いた。


それはトウコの通信機画面の光だった。



さっき借りてそのままだったそれを

手に持っていた事すら今の今まで

忘れていた。



画面は触っていないから

さっきの表示のままの筈なのだが……

どうしてだか、




“レ・コ・ク・タ・コ・ロ・カ”



とだけ表示されていた。





「レ・コ・ク・タ・コ・ロ・カ?」





何だこれ?文字化けか?




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