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ベッドにはノーチェが息苦しそうに

横たわっていた。



「どうしたんだ?」



「……っ……セキ?」



何時もの明るい声はなりを潜め

弱々しく、その表情も

暗がりでさえ、そうだと分かるくらいに

かなりキツそうに見えた。



「具合悪いのか?ノーチェ」



「うん……何か気分悪くって

ちょっと眠っていたみたい。


夕食作らなきゃ……待って……」



「バカ!いらないよ!

一日二日抜いた所で死にやしない。

俺のことより自分の心配したらどうだ」




起きようとするだけでフラフラしてるくせに

何がメシの支度だ。



「……ごめん」



「いや、俺も具合悪いのに大声出したりして、

兎に角……良いから寝てろって」



セキが触れると思った以上に体温が高く

加えて全身凄い汗だった。



このまま寝ては風邪を引く。



「身体拭くよ?良い?」



「……うん、ありがとう」







「はい、両手あげて」



「ん……」



身体を拭くためにお湯を用意し

拭き始めると、ノーチェは余程

体がダルイらしくセキに身を委ね、

されるがままになっている。



下はどうしようかと一瞬思ったが

男同士、別に気にする方が変だと

割り切って脱がせるぞ?と一言掛けた

までは良かったが、



「……下着、つけてないのか?」



「下着?何それ」



「いや……いいんだ」




正直目のやり場に困る。



まさか――だとは思わなくて。




セキはなるべくそこに目を向けないように

努めて一通り拭き終わると替えの

服を着せていった。



「気持ち良かった、ありがとう」



「あ、そ、そうか」



ノーチェの無邪気な表情と声は自分の

湧き上がりそうになっていた邪な気持ちを

払拭するには充分で、セキは柄にもなく

焦って吃ってしまった。



「セキ……?」



「ちょっと片付けてくる。

あと温かい飲み物飲めそうなら

持ってるくるけど」



「飲める~」







沸騰する湯気を見つめながら

セキは自分は平静だと数度口にした。



なに動揺してるんだ。


病人相手にバカか、俺は。



いや、そこじゃなくて

……見ただろ、今。



ノーチェは男だ、何処からどう見ても。

そして自分にその趣味は無い。



無いんだ。




「――どうしたっていうんだ、俺は」










「何時から調子悪い?」



漸く落ち着いて戻って来た時、

ノーチェは少し楽になったからと

上半身を起こしてはいたが

傍から見る限りまだ相当苦しそうに見えた。



「目が覚めた時にはね、こんなだった。

風邪かなぁ」



ベッドの傍らに座り彼の額から

温かくなってしまったタオルを

時々交換しながら話していた。



「熱以外に風邪症状はないみたいだけど。

ていうかこんなに話しててキツくないか?

寝てて良いんだぞ」



ノーチェはフッと笑うと

ううんと小さく首を振った。



「ボクはセキともっと話したい」




「……じゃ、せめてそれを飲み終えたら

横になると約束するなら」



「するする!」












「え?森の奥?

もしかしてセキ、昼間森へ入ってるの?

危ないよ、この家の付近なら大丈夫だけど

湖の周辺は獣が多い、その多くは猛毒を

持っているから。


本当だったらボクが回避して

あげれるんだけど。

未だその能力は無くて、ごめんね」



「流石に夜は出歩かないし、

でも昼間にも今まで何度も森に入った時に

声とかはよく聞こえるてくるけど

一度も遭遇したことはない」



それは申し訳無さ気な声で

しょんぼりしてしまったノーチェを

励ます意味ではなく事実で、

昼間イゼルと一緒だった時、

鳥の姿をしたアレが此処へ来て

目にした初めての動物だった。



が、それは余程おかしなことなのか

ノーチェはひどく驚いた表情に変わった。



「それは本当?不思議だな……

まだボクじゃ出来ないのに」



と、しきりに呟いている。




さっきから能力とか出来ないとか

何の事だ?と聞き返そうとした矢先、



「……!?」



汗で額にはりついた髪を拭う

ノーチェの指を見たセキの目がとまった。



「指、どうした?」



怪我している部分が、まだ少し血が滲んで

いることからその傷の真新しさを示していた。





しかも―――



その場所にセキは見覚えがあった。




続きは明日。

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