記憶10 復習の時
「くそっ!・・・何なんだよ・・・」
頼斗はさっきまで寝ていたところに戻る。
外は真っ暗で、見える明かりは南エリアの商業ビルの明かりや、北エリアの住宅で起こっている火災ぐらいだった。
周りではそれぞれ好きな体勢で眠っている。
頼斗も周りと同じように、壁に寄りかかるとそのまま眠った。
「起きてください!」
頼斗が目を覚ますと、外は明るくなっていた。
「何だよこれ!」
頼斗が外を見て驚いた。
北エリアが海に浸かっていた。
「多分、昨日の攻撃ね」
和花が手に缶コーヒーを持ってやって来た。
「これ以上は沈まないと思うけど、早めに南エリアに逃げた方が良いわね」
「でも、南エリアは化け物しか居ないんじゃ・・・」
「そんなことはないわ。今朝、優衣が偶然無線に反応があって生存者は北エリアを放棄して南エリアの主要な建物に逃げ込んでるらしいわ」
カシュッ
和花が缶コーヒーを開けて飲み始める。
「そんで、あんた達二人が寝てるときに大半の人間は時計台から逃げていったわよ」
「え!?」
頼斗が周りを見るが話し声のひとつもしない。
「皆はどうやって逃げたんですか?」
「大半が車ね。海に浸かっているって言っても足首ぐらいまでだから車は十分走れるわ」
「そうですか」
「・・・あの、美咲は・・・?」
「仕方ないけどここに置いていくわ。今、優衣が良いのにしてる」
「そうですか・・・」
優衣がやって来る。
「起きてたんだ」
「あ、はい」
「準備してって言っても特に準備することはないし、すぐに行きましょうか」
「そうですね」
頼斗はあることに気が付く。
「帯広は?」
「わかんない。多分逃げたかな?まぁ、武器も持ってないんだし大丈夫じゃない?」
「あいつ人殺ししたんだぜ大丈夫かよ・・・」
四人は、展望台に残っていたわずかな食料と(カップ麺とポテトチップスだけ)、わずかな医療品(包帯や市販の消毒液のみ)を持って階段を降り始めた。
「下りは楽ですね」
「登りはきつかったわね~」
そんな雑談をしながら一階につく。
和花の言うとおりに足首ぐらいまでしか海水は来てなかった。
「靴が・・・」
「そんなもんどうでもいいじゃねぇか」
頼斗が靴の中に海水が入って嫌がっている亜理砂に言う。
「・・・・いじわる」
「ん?何か言ったか?」
「別に」
海に浸かっている中央公園を駐車場に向かって歩く。
すると、目の前にゾンビが三体ほどうろついていた。
「どうします?」
「三発で片付けれる?」
「楽勝ですよ」
タンタンタン
頼斗はしっかりと三発で三体のゾンビを倒した。
ゾンビが倒れたところからは海水に混じって血も流れていた。
「もうすぐで駐車場ね」
「先輩が運転で良いんですね」
「勿論」
四人は駐車場に着いた。
駐車場には頼斗達が乗ってきた車とは別の車が一台止まっていた。
「ジープか・・・いい車だな・・・」
「まだ残っている人いたのかな?」
「そんなことはいいですから車に乗りましょう」
「そうね」
頼斗達が時計台を出た頃。
中央公園内身体障害者専用公衆トイレの中では、帯広がつい先程殺害した男性の持ち物をあさっていた。
すると、胸ポケットから車の鍵を発見する。
「あの餓鬼・・・殺す!絶対に!」
帯広は公衆トイレから優衣特製の包丁付きパイプを持って駐車場に向かった。
駐車場ではハンヴィーに頼斗達が乗り込んでいた。
「早く乗って行くわよ」
和花が運転席でエンジンをかけている。
ドルゥン
車のエンジン音が辺りに響く。
助手席には優衣が載った。
「乗れるよな」
「乗れるわよ!」
亜理砂が頼斗にバカにされて怒る。
亜理砂が車に乗り込み、頼斗が車に乗り込もうとする。
「危ない!」
突然車の中から亜理砂が頼斗を押した。
バシャッ
頼斗は尻餅をつく。
ガキィン
頼斗が目を開けると、パイプがあって、その先に包丁がついている物が車のドアに傷を作っているのが見えた。
「ちっ・・・」
帯広が舌打ちをする。
「帯広!」
頼斗は立ち上がる。
「そうだよ!お前がタックルしたやつだよ!」
帯広は包丁付きパイプを振り回す。
ブン
「うわぁっ!」
頼斗は避ける。
バキィィン
包丁が車の固いボディに当たって折れる。
「早く乗って!」
和花が運転席で言う。
頼斗はすぐに乗り込むとドアを閉める。
ドン!
帯広はパイプで車を殴る。
ブォォォン
車は水を掻き分けながら駐車場から出た。
帯広は駐車場にあるJEEPの車に乗り込むとエンジンをかけて和花の運転するハンヴィーを追いかけた。
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