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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

貴方の為に、ドレスを着ます

***BL***僕と結婚した貴方の好きな人は、お姉様だったんですね。僕はお姉様になります。ハッピーエンド。



 なんだ、、、そうだったんだ、、、。

 納得した。


 結婚式で、あの人は優しく微笑んで僕の手を握ってくれたのに、初夜には何も無かった。


 僕の事を愛していると思っていたのに、違った。


 本当に好きなのは、お姉様だった。

 僕のお姉様の婚約者は、彼よりも爵位が上だったから、彼はお姉様を諦めるしか無かったんだ。


 絵姿でしか会えなかった婚約時代、彼からたまに届く手紙の内容はとても優しかった。


 それなのに、結婚して一週間。彼は一度も僕とベッドを共にしていない、、、。


 そして、今日、僕は聞いてしまった。彼とお姉様の会話を


「彼と、触れ合うなんて私には出来ない、、、」

「そんな事、、、」

「貴女に私の気持ちはわからない、、、」


 ああ、そうか、彼が欲しかったのは、僕じゃ無い。お姉様だったんだ、、、。


 可哀想な彼、きっと自分の婚約者はお姉様だと勘違いしていたんだ。だから、結婚相手が僕みたいな男の子でショックなんだろうな、、、。


 僕は、扉から静かに離れ、部屋を後にした。



*****



 僕とお姉様の顔は良く似ている。絵姿では区別も付かないと思う。

 ただ、違うのは僕の体は棒みたいに真っ直ぐな事だ。

 


 僕はその日から毎日ドレスを着た。彼の好きなお姉様に見える様に、決して喋る事無く、扇子で口元を隠し、胸はツルツルペッタンでどうしようも無いから許して貰うにしても、遠くから見たらお姉様に見える様に、仕草も動作も女性らしく、、、。

 でも、彼とは絶対に接近しない、、、。

 だって、接近したら僕のまっすぐな身体を見てガッカリするだろうから、、、。


 僕のドレスは首から下、全身の素肌が見えないドレスを選んでいる。そうすれば、彼の目にはドレスばかりが写り、僕の印象は薄くなる。

 本当は帽子も被れば良かったんだろうけど、流石に食事の場には似合わない。


 朝から侍女に綺麗に化粧をして貰い、今日は優しいパステル調のドレスを選んだ。

 僕が遅れて食堂に入ると、彼は顔を真っ赤にして嬉しそうな顔をした。

 僕のドレスはお姉様が選ぶドレスに近付けた。

 彼は、そこにお姉様がいる喜びで溢れている。


「おはよう」

彼の言葉に、僕はにっこり笑う。それが僕の今日からの挨拶。

「綺麗なドレスだ、とてもよく似合っているよ」

もう一度微笑む。お姉様になったつもりで。


 静かに食事を終えると、彼は仕事に向かう。

 僕の席まで回り、わざわざ僕の手を取りキスをした。

「仕事に行って来るよ。時間が合えば、夕食も一緒に摂ろう」

僕はにっこり笑い。心の中で、それはきっと無理ですわ、と呟いた。


 彼が仕事に行ってから、僕の今までの全ての衣服を処分した。

 新しい衣服は全て女性もの。

 僕はこれからお姉様として生きて行くんだ。



*****



 夜遅く、僕の部屋の扉が開く。

 僕は女性用のナイトドレスに身を包む。


 ギシッとベッドが軋み、彼がすぐそこに腰掛けたのが分かった。僕は寝たフリをする。


「綺麗だ、、、」

と言って、僕の髪に触れる。

「私の可愛いお姫様、、、」

そう言って、キスをすると部屋を出て行った。


 ほらね、彼が好きなのは僕じゃ無い、、、。

 僕は涙を流した。

 僕を愛してくれる人はいない、、、。



*****



 彼と一緒に過ごすのは、朝食の時だけ。その時の会話は執事を通して行われる。

 執事は僕の予定を把握しているので、彼の質問に対する返事は全て彼が答える。

 まるで、彼と執事との会話だ。



*****



 僕がドレスを着始めてから一週間経った頃、彼は僕が会話をしない事に気が付いた。

 そして、執事では答えられない質問をした。

「毎日ドレスを着ているのは、どうして?」

僕は、にっこり笑う。

「ここ一週間、君の声を聞いていないけど、喉の調子でも悪いの?」

僕は喉を抑えて静かに笑う。



**********



 私が彼に出会ったのは、彼がまだ五歳位の頃だった。小さな身体で、姉上を追い掛ける姿が可愛かった。私が十歳だと思う。

 姉上に良く似た、綺麗な顔。クルクルと変わる表情。とても愛らしかった。

 父は、姉上と婚約をさせたかった様だが、彼女は私より爵位の高い男性と既に婚約済みだった。

 父はとても残念がり、私の手を引いて帰ろうとした。

「彼ではだめなのですか?」

と言うと

「男の子ではないか、お前はそれで良いのか?」

と聞かれた。

「僕は彼が良いです!」

返事をすると、父と彼の父上の話し合いが始まった。 

 


*****



 私は、父の横に座りながら、窓の外を眺めていた。彼が庭を走り回り、元気に遊ぶ姿から目が離せなかった。

 彼との婚約が決まり、彼と顔合わせをしようと席を立つと、彼は遊び疲れて眠っていた。

「お姫様みたいだ」

僕は彼を起こすのが偲びなくて、父にこのまま帰りましょうと提案した。

 


*****



 結婚式は私が17歳、彼は12歳だった。彼にはまだ早い結婚。

 私の国では、一人が17歳になれば結婚が出来る。私は17歳になると直ぐに結婚式を挙げた。それ程彼が早く欲しかった。

 しかし、結婚式で12歳の彼を間近に見ると小さくて壊れてしまいそうだった。

 いつも絵姿で見ていた彼。

 たまにこっそり彼を見に行ったが、遠くから見ていた為、ここまで小さいとは思わなかった。

 結婚式に浮かれ過ぎていた。

 いざ初夜となり、彼との時間を考えると、彼を壊してしまいそうで怖かった。

 かと言って、同じ布団に入れば自制が効かない自信がある。


 長い長い間待っていたのだから、、、、仕方が無いではないか。


 結局初夜に彼の部屋へ行く事が出来なかった。

 それから、毎晩悩み続けた。

 とうとう一週間目、彼の姉上に、私が彼の部屋に行っていない事実が伝わってしまった。


 彼女と話し合いを持たれ、真実を話した。

「彼が大切なんだ、、、。愛し過ぎて彼を壊してしまいそうで怖い。今、、、彼と、触れ合うなんて私には出来ない、、、」

「そんな事、、、」

「貴女に私の気持ちはわからない、、、。小さな彼と触れ合いたいのに、我慢しなければいけない私の気持ちなんて、、、」


 翌日の朝、彼は可憐なドレスを身に纏い朝食を摂りに来た。

 細い体にドレスの生地がフィットしていて、美しかった。

 首元から全身覆われた、柔らかい花の様な色のドレス。細いウエストから大きく広がるスカート部分をフワフワとさせながらテーブルに近付いて来る。

 


 これは罰だろうか、初夜を迎えなかった私を、神が試している様だ。



 夜、彼の部屋に入るとナイトドレスを着ている、、、。このまま一緒の布団に入り、夫婦の時間を過ごしたい、、、。

 しかし、眠っている彼の顔は化粧をしていないからか、無防備だからか、、、いつもより更に幼く見えた。

 

「綺麗だ、、、」

と言って、彼の髪に触れる。

「私の可愛いお姫様、、、」

そう言って、キスだけで我慢して部屋を出る。


 

 暫くして、彼が言葉を発しない事に気が付いた。いつも会話の間に執事が入る。

 最後に彼の声を聞いたのはいつだろう、、、。

 そして、毎日ドレスを着てくれているけど、彼はそれで良いんだろうか、、、。



*****



「奥様はドレス以外のお洋服を処分なさいました」

執事が言う言葉に驚いた。

「全て処分したのか?」

「はい、全てでございます」

何故だ?

 彼を探す。

 いない。

 屋敷からは出ていない筈だ。

 部屋にはいなかった。庭に出ても見当たらない。

 そう言えば、彼とは朝食の時と、眠りに着いた夜中に顔を見るだけだった。

 仕事中とは言え、屋敷の中で一度もすれ違う事が無いなんて、あるだろうか、、、。


 屋敷の2階から庭全体を見回す、離れた場所に一人で佇む彼を見つけた。

 何を見ているんだろう、、、。 

 私は、急いで彼の元に行く。


 先程の場所は此処だろうか、、、。彼はいない。

 どこに?と見回すと厩の方にいる。

 馬丁の男と話しをしている様だった。

 私とは直接話しをしないのに、あの男とは話しをするのかと思うと腹が立った。



 私は厩に近付く。彼は私に気が付くとそっと移動する。


 イライラした。


 ワザと私を避けている様に見える。

 私は怒りを抑えながら早足になっていた。

 ドレスの彼も逃げる様に歩く。しかし、私の方が早かった。彼の腕を掴み、引き止める。

 彼は私に顔を見られたく無いのか、扇子で顔を隠した。

「私の事が嫌いなのですか?」

声が低くなってしまう。彼を怖がらせたく無いのに、怒りが抑えられない。

 思わず手に力が入ってしまった。

 彼が痛そうに顔を歪める。しかし、言葉は発しない。

「馬を!」

馬丁に馬を連れて来させる。彼を馬に無理矢理乗せ、屋敷に戻る。

 馬から彼を降ろすと、腕を引き私達の部屋へ戻る。

 鍵を掛けて、彼をベッドに放り投げる。ドレスが捲れ、白く細い足が露わになる。

 彼はサッとドレスを直し、私を睨んだ。

 怒りに頭が沸騰する様だった。自制が効かない。

彼は、枕を掴み私にぶつける。顔に枕を当てられ、更に頭に来てしまった。

 彼を押し倒し、彼を睨む。彼も私を睨んでいる。

 彼が怒りに震えながら、涙をポロポロと流した。

 それでも、彼は言葉を発しない。

 私は彼を壊したくなる。掴んだ腕を離す事無く、口付けをしようとした。

「辞めて下さい。僕はお姉様ではありません、、、」

出来る限り、私から離れる様に顔を横に背ける。

 

 お姉様?


 何を言っているんだ?


 私は溜息をいて彼を離す。彼はそっと身体を起こし、ベッドの一番端に逃げた。


「貴方の姉上がどうしたのですか?」


 彼は、出来るだけ私から離れ膝を抱えた。

 綺麗に整えられた爪を撫でながら

「貴方の好きな人は、お姉様ですよね、、、。申し訳ありません、お姉様の様な姿にはなれますが、、、その様な行為は出来ません」

ポロポロ、ポロポロ涙を流す。

「何故貴女のお姉様になる必要があるのですか?、、、それに、私の好きな人は貴方です」

「だって、、、一度も僕を抱いてくれませんでした」

「それはっ!」

「僕に触れたく無いと言っていました、、、。本当に結婚したかったのは、お姉様なんでしょ?」

ちが

「良いんです。お姉様は美しいですから、、、貴方の気持ちもわかります。僕が男の子でびっくりしたでしょ?ごめんなさい、、、せめて、女の子だったら良かったのに、、、」

「違うっ!貴方と婚約したいと言ったのは私だ!」

「無理なさらないで下さい。僕は大丈夫ですから」

「ライニール!」

彼は肩を弾かせて、私を見た。

「私が君を欲しがったんだ、、、本当だよ」

膝を抱えた彼の手に触れる。

「隣に座っても良いかい?」

彼はそっと動き、私が座る場所を作ってくれた。

「私が父に連れられ、貴方の屋敷に伺った時、既にあなたの姉上は婚約されていました。父は残念そうにしていたんですが、私は、父に貴方との婚約を打診しました。貴方の父上にも賛成して頂き、その日の内に婚約の運びとなりました、、、」

「僕に会った事があるんですか?」

「貴方がまだ五歳の時でした。庭で目一杯遊ぶ貴方は可愛かった、、、。一目で引かれました。貴方に見つからない様に、何度もこっそり見に行きました」

「絵姿でしかご存知無いかと思ってました」

「私はズルいんです。自分のは絵姿だけなのに、貴方の姿は本物が見たくて、、、」

彼はそっと涙を拭いた。

「結婚式も、私が17歳になった日に行いました。一日も早く、貴方と結婚したかったから、、、。ただ、初夜だけは出来なかった、、、」

彼の表情が小さく揺れる。

「初夜で何をするかご存知ですか?」

彼は顔を真っ赤にして、

「口付けをして、一緒に寝ます」

「一緒に寝て何をするかご存知ですか?」

「抱き合って眠ります」

「違います、赤ちゃんを作るんです」

私は何だか楽しくなって来た。

「赤ちゃん作ってるじゃないですか!だって、口付けするんですよ?!」

「違います、、、ライニール、、、」 

私は彼の頬にキスをする。

「あの、、、」

瞼にキスをする。

「旦那様?」

唇にキスをする。

 彼は私の瞳を見つめる。

 少し長めのキス。

 彼の身体が逃げる。腰に腕を回し、彼の身体を引き、ベッドに寝かせる。

「あ、、、の、、、」

彼を見ながら、口付ける。

「口付けだけでは赤ちゃんは出来ません、、、」

私は彼の下腹部を撫で

「貴方の此処に種を植えるんです」

「種?!」

「そうです。種です、、、」

「でも、どうやって?」

「しー、、、黙って、、、」

私が人差し指で彼の唇を塞ぐと、私の瞳をそっと見つめる。

 可愛い、、、。

 私はゆっくり口付けをする。

 彼の視線が唇に移り、瞼をゆっくりと閉じる。

 ドレスの裾を少しずつ捲ると、細い脚が私を誘う、、、。

 触れるか触れない程度に白い脚を撫でると、眉間を寄せて息を漏らす。足をしっかりと閉じて、モジモジしている。

「これから初夜を始めましょうか、、、」

耳元で囁くと

「ぁ、、、」

と小さく呻いて、しがみ付く、、、。



 私の自制心が崩壊した。



**********



 彼は初めての経験に動けなくなった。

 私は彼を抱き上げ、入浴を手伝う。

 まだ、目が覚めない。

 実際に最後までした訳では無い、、、ただ、彼には少し協力して貰った。乗馬で鍛えた内腿を借りただけだ、、、。

 彼の身体を洗い、清め、ベッドに入る。

 私達が入浴している間に、シーツは替えられ、清潔なベッドになっていた、、、。

 

 もっと早くこうすれば良かった、、、。私は最後まで考えていたから、彼が壊れてしまうのでは無いかと恐ろしかった。


 侍女達が、部屋のカーテンを閉めていった。薄暗い部屋、枕元の小さな灯り、そして私達だけの時間、、、。


 横で眠っていた彼が、微かに動く、もう直ぐ目を覚ますだろう、、、謝らなければ、、、。

 


 彼が静かに目を覚ます、、、。



 嬉しそうに私を見て、手を伸ばす。

「済まない、君の身体はまだ子供の様だから、最後までは出来ない。、、、そもそも、私達は同性だから子供は産まれないのに、、、」

「旦那様、、、旦那様の愛をたくさん頂きました、、、。僕はそれだけで幸せです、、、」

そう言って、私にキスをしてくれた。



 私は何を悩んでいたのだろう、、、。こんなに幸せな時間を過ごせるのなら、結婚式をした日に彼の部屋に行けば良かった、、、。



「愛してる、、、君だけをずっと、、、」

「僕もすごくすごく、大好きです、、、」




短いお話です。最後まで読んで頂けて嬉しいです。

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