第048章 二度と好きになったらダメ
第048章 二度と好きになったらダメ
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12月24日、スー・シエンは午後に本田とリー・チョンシーを連れてジャオ・ナンフォンのお見舞いに行き、夜は三人でいろんな場所のクリスマスイルミネーションを見に行く予定だった。しかし、昼過ぎに病院から電話があり、ジャオ・ナンフォンがいなくなったという。
何だって?!
三人は急いで病院へ駆けつけ詳細を尋ねた。看護師によると、午前中に一人の女性が面会に来ており、彼女が去った後、次の回診の時にはもう姿が消えていたという。電話にも出ず、電源も切られている。
スー・シエンが体調に異変があったのかと聞くと、看護師は「全く問題ありません、むしろ回復は予想以上で、元旦前に退院できるかもしれません」と答えた。
仕事面でも佐藤本部長からの朗報があったばかりなので、スー・シエンは彼が自殺に行ったわけではないと推測した。大した問題ではないはずだ。
看護師が「女性」と言った……また女と逃げたに違いない。
本当に、あんなに元気に回復させる必要なんてなかった!
その時、本田が会社にジャオ・ナンフォンの古いスマホがあることを思い出した。今のスマホと同じIDでログインしているため、位置情報を確認できるはずだ。
三人はすぐに会社に引き返し、古いスマホを充電した。数分後、ようやく電源が入り、彼の位置が判明した。成田空港だ。
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ジャオ・ナンフォンは次々と離陸していく飛行機を眺めていた。どれがイタリア行きのJL3087便かは分からなかったが、出発時刻は既に過ぎた。彼女は無事だ。彼は安堵のため息をつき、立ち去ろうと振り返った。
会社の車が目の前で止まった。本田が真っ先に飛び降り、彼の腕をぎゅっと掴んだ。「社長、大丈夫ですか?」
「どうしてわかるの、私の行方?」
本田は古いスマホの位置画面を見せた。
「意外に賢いね。」
「バカ!みんな心配してたよ!」そう言う彼女の目は赤くなっていた。
「ごめんな。」彼は誠実に謝った。
スー・シエンはエンジンを切ったが、ハンドルを握ったまま、少しだけ前に進んで彼にぶつけてやりたい衝動に駆られていた。彼女は深く息を吐き出し、ドアを開けて車を降りると、窓枠に肘をついて腕を組んだ。「さあ、社長。説明してもらいましょうか。」
「さっき、小野茉莉を見送りました。」
?!
「さっき、小野茉莉を見送りました。」ジャオ・ナンフォンは本田にも説明した。
「小野茉莉?警察が探してる小野茉莉?」
「そう、あの小野茉莉。」
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昼時、ジャオ・ナンフォンは最新版の案の修正に没頭していた。横に置かれた病院食はとっくに冷めきっている。一人のしなやかな影が部屋に入ってきた。彼は看護師かと思い、特に気に留めなかった。彼女はベッド脇に座ると、茶碗蒸しを一さじ掬って差し出し、優しく、しかし拒絶を許さない口調で言った。「食べて。」
その声に彼の体は微かに震え、勢いよく顔を上げた。
小野茉莉は大きなマスクをずらし、彼に薄く笑うと、すぐにまたマスクを戻した。
「なぜここにくる?危ないよ!」
「わかります。イタリアに行くわ、別の名前でね。行く前にどうしてもあなたに会いたいです。こんなことに巻き込んで、ごめんなさい。」
「気にしなくていい。」
「じゃ、食べてね、これは最後だから。」
食事を終え、ジャオ・ナンフォンが洗面所で口をゆすいで戻ってくると、小野の姿はもうなかった。ベッドの上には小さな包みが置かれており、中には500万円が入っていた。
ジャオ・ナンフォンは病衣の上にコートを羽織り、そのまま彼女を追いかけて飛び出したのだ。
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「でも、彼女は詐欺師だよ、彼女のせいで社長はこんなひどい目にあったじゃないの?」本田は納得がいかない様子だった。
「自分の女を刑務所に送るなんて、私にはできない。」
「もう心配いらないわよ。彼女は遠くへ飛んでいった。おそらく二度と戻ってこないわ。」スー・シエンは彼を慰めた。
「みんなに申し訳ないと思っている。でも、彼女が暴力団に見つかれば、間違いなく命はない。この間ずっと隠れていたのは逃亡の準備のためだったのに、わざわざ危険を冒して僕に会いに来る必要なんてなかった……」
スー・シエンはどう答えていいか分からなかった。小野は詐欺師だ。ジャオ・ナンフォンのこの500万だけでなく、他にも数億円の横領金を抱えている。自分たちが被った災難も彼女に直結している。だが、ジャオ・ナンフォンのこの行動は、まさに彼女の予想通りだった。
本田もリー・チョンシーも何も言わなかった。もちろん、今さら何を言っても手遅れなのは分かっている。
スー・シエンは自嘲気味に笑い、この話は許書一に売って、「トマト小説(web小説サイト)」で連載させればいいな、とぼんやり考えた。
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帰路、本田が病院に連絡してジャオ・ナンフォンをすぐ連れ戻すと伝えたが、彼は目黒川に行きたいと言い出した。
いいだろう。あそこもイルミネーションをやっている。
車を止め、三人は無言のまま彼に付き添って目黒川沿いを長く歩き、また無言のまま彼を病院へ送り届けた。
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帰り道、またリー・チョンシーがハンドルを握った。彼があまりに沈黙しているので、スー・シエンは尋ねた。「ハニー、どうして何も言わないの?怒ってる?」
「ハニー?ふん。」彼は冷笑した。「今カレを連れて、元カレが逃亡した恋人を想うための彼たちの思い出の場所に付き合わせるなんて、一体誰が君のハニーだよ。」
「あなたも付き合ったじゃない。私の方が文句言いたいくらいよ。」
逆ギレされたリー・チョンシーは、呆れて笑ってしまった。「じゃあ聞くけど、君も午後はずっと黙り込んでたじゃないか。小野茉莉にヤキモチでも焼いてたの?」
「何ですって?!そんなばかばかしいことどうしてそう思うのよ?」
「だって、彼は君に対するよりも小野茉莉に対しての方が優しいじゃないか。」
「そうかしら?」スー・シエンは考えたが、すぐに比較する意味がないことに気づいた。「彼が誰に優しかろうと興味ないわ。私が付き添ったのは、彼が会社の社長で、豊和デザインを立て直すために彼に戻ってもらわなきゃ困るからよ。私に力がついたら、和久井さんよりも潔くおさらばしてやるわ。その時は……本田さんも引き抜いてやりましょう。」
「ふん。」リー・チョンシーは力なく笑った。実は今日の沈黙は怒りからではなく、男が男を見る目でジャオ・ナンフォンを観察し、彼が女を惹きつける理由を見つけてしまったからだった。「スー・シエン、彼がどんなに魅力的でも、二度と好きになったらダメだからな。」
「もう彼の技を全部解けてるわよ。彼の体から金貨でも降ってこない限り、ありえないわ。」
「僕の体からも金貨は降ってこないけど。」
スー・シエンは顔を向けて彼を見つめ、手をこすり合わせながら唇を噛んだ。
彼女がまた下ネタを言おうとしているのを察知して、彼は即座に警告した。「黙れ!」
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責任を負わされるのを恐れたのか、二日後、医師はジャオ・ナンフォンの退院許可にサインした。
年末の最後の日、仕事もほとんどなかった。三人は茶話会でもして一日中サボるつもりだったが、空気の読めない社長が戻ってきた。彼は壁に貼られていたボツ稿を全て剥がし、最終デザイン案に貼り替えた。スー・シエンはすぐにそれに引き込まれ、長い間立ち尽くして眺めていた。
何年経っても、彼の作品は彼女を驚嘆させる。
ジャオ・ナンフォンは温かい茶を持って彼女のそばに来た。「何か意見はあるか?」
「ええ、完璧だわ。でも……」
「でも?」
「でも、完璧すぎて、人を寄せ付けないような冷たさを感じる。これが『哲学』ってやつなのかしら?」スー・シエンは、自分が実務的すぎて哲学や芸術への造詣が浅いことを少し後悔した。
「なら、君が直せ。」
「私が?」
「君はこのプロジェクトのために来たんだろう?」
「それはそうだけど……でも私が手を入れたら、あなたの統一性が壊れてしまうわ。」これは大規模な複合建築だ。ジャオ・ナンフォンは既に完全に作り上げていた。
「哲学とは本来、矛盾に満ちているものだ。恐れるな。壊してこい。」
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