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ワガママ王女、死に戻って全人類から愛されます!~今度の死因は絶対、老衰ですわ!~  作者: 八星 こはく


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第40話 ワガママ王女、ワガママに決意する

「オリヴィエ……!」


 本来なら今すぐ抱き着いて愛を確認し合いたいところだが、そういうわけにもいかない。

 頷き合った後、イレーヌは改めて周囲に視線を向けた。


 本気で焦っている者、野次を飛ばす者、ひたすら呆然としている者……いろんな反応を示す者がいる中で、一際大きな声で笑っている男がいる。

 騎士団長のイヴァンだ。


「さすがは殿下。ただのお姫様ではないと思っていましたが……これほど大胆な告白をなさるとは。いや、殿下から言わせるなんて、オリヴィエも情けないな」


 笑いながら、イヴァンがオリヴィエの背中を何度も叩く。

 彼なら、イレーヌがオリヴィエを選ぶことに賛成してくれているはずだ。


 イヴァン殿はオリヴィエに目をかけているし、昔から親交があるみたいだもの。それにオリヴィエがわたくしと結婚すれば、騎士団の待遇だってよくなると思うはずよ。


 深呼吸をし、なんとか冷静に頭を働かせようとする。

 オリヴィエを選んだのはイレーヌのワガママだが、全員が全員、この選択を否定するわけではないはずだ。


 それこそ国民からすれば、イレーヌの夫が誰であろうとたいした問題はないだろう。王の配偶者として国民に嫌われるのは、過度な浪費家や政治に関心のない人間である。

 もちろん私情だけで選んだ、という事実を非難されることはあるだろうが、それだけで処刑に繋がるほどの失態ではないはずだ。


 そうよ。ワガママは、それ以上の功績で補えばいいんだわ!


「……本当に、イレーヌ様はただのお姫様ではありませんね」


 背後からフェデリコの声が聞こえ、イレーヌは慌てて振り返った。よく見れば彼もオリヴィエとの決闘で傷を負っているが、些細なものばかりだ。


「それに彼も、つまらないだけの男ではないようだ」


 激怒されてもおかしくない状況だが、フェデリコに怒った様子はない。むしろ、この状況を楽しんでいるようですらある。


「パーティーの準備があるので、僕は失礼します。このような格好では、美しいティーグル王国の女性をダンスに誘えませんから」


 微笑んで、フェデリコが去っていった。相変わらずの甘い言葉に、傍で見ていた令嬢たちが黄色い歓声を上げる。

 イレーヌも一度部屋に戻って落ち着こう……と動き出そうとした瞬間、肩を軽く叩かれた。


「お、お母様……!」

「わたくしと二人で話をしましょう。いいわよね、イレーヌ?」


 にっこりと笑っているが、その目は少しも笑っていない。母親のこんな顔を見るのは、生まれて初めてな気がする。


「だってわたくし、全然、ちっとも、ほんの少しも、この話を聞いていなかったんだもの」





「どうして、わたくしに事前に相談してくれなかったのよ?」


 頬を膨らませて拗ねる様子は、とても15歳の娘がいる大人には見えない。アゼリーはカップに入っていた果実水を一気に飲み干し、酷いわ! と近くにあったクッションを叩いた。


 予想はしていたけれど、お母様が怒っているのは、わたくしが何も言わなかったからよね……。


 アゼリーはイレーヌに甘く、その上政治には全く関心がない。イレーヌが望めば、あっさりと婚約を許可してくれたはずだ。

 そんなアゼリーが怒っているのは、愛娘であるイレーヌから何の話も聞いていなかったからである。


「ごめんなさい、お母様。わたくしも本当は違う場面で言うつもりでしたの。でも、我慢できなくなってしまって……」


 嘘ではない。鮮明に予知夢を思い出してしまい、いてもたってもいられなくなったのだ。


「分かったわ。過去のことは言っても仕方ないものね」


 はあ、とアゼリーが溜息を吐く。この様子だと、しばらくは拗ねた状態が続くだろう。


「それで、イレーヌはどう考えているの?」

「どう、とは?」

「オリヴィエのことよ。今のままだと、家格が釣り合わないわよね。そうだわ。彼の兄を宰相にする、っていうのはどうかしら? それなら悪くないんじゃなくって?」


 名案を思いついたわ! とでも言いたげな顔をアゼリーはしているが、間違いなく悪手だ。

 そんなことをすれば高官連中はこぞって敵になるだろう。

 既得権益を貪るだけの彼らにいつまでも不相応な地位を与えておくつもりはないが、今すぐに敵に回すのはまずい。


「それとも、オリヴィエ自身を騎士団長にでもする? 空いている家の爵位をあげる、って方法もあるけれど……」


 父親が病に臥せている今、この国の最高権力者はアゼリーだ。

 だからこそアゼリーには、慎重に動いてもらわなくてはならない。


「お母様。その必要はありません」

「……どうして?」

「功績もなく高い地位を与えれば、民衆からの反発を買うからですわ」


 予知夢で見た未来で、高い地位についていたのはアゼリーやイレーヌに気に入られた貴族たちばかりだった。

 能力は低く、国民のことなんて微塵も考えていないような連中だ。


 だからこそ国民は政治に不満を抱き、志がある者は王家に不信感を抱いた。

 オリヴィエを夫にしたいからといって、正当な理由もなく高い地位につけては、同じことになってしまう。


「ですから彼にはこれから、女王の夫として相応しい実力があることを証明してもらいますわ」


 相変わらず、ティーグル王国は多くの問題を抱えている。

 上層部が腐っていることはもちろんだが、地方でも不正がはびこっているとセシリアから聞いた。


 処刑を回避し、国民から慕われるためには、その問題を一つ一つ解決していく必要がある。


「わたくし、オリヴィエと共に、この国をよりよくしていきたいと思っておりますの!」


 オリヴィエほど信頼できる相手はいない。つまりイレーヌが、最も安心して仕事を任せられる相手がオリヴィエなのだ。


 これから、オリヴィエには忙しく働いてもらうことになるわ。そうすれば、オリヴィエだってたくさんの功績を作れるはず……!


「そして、国民全員に祝福される結婚をオリヴィエとしたいと思っているのです、お母様!」


 全国民から老衰を惜しまれる、だけじゃ満足できない。

 全国民からオリヴィエとの結婚を祝福され、名君と称えられ、歴史に名を残す。

 欲張りな自覚はある。だがそもそも、欲張りでワガママなのがイレーヌなのだ。


 本当に欲しいものは我慢しない。その代わり、労力だって惜しまない。

 わたくしは、そういう生き方をしてみせるわ!

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