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ワガママ王女、死に戻って全人類から愛されます!~今度の死因は絶対、老衰ですわ!~  作者: 八星 こはく


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第36話(オリヴィエ視点)まだ

「君はやっぱり、イレーヌ様のことが好きなの?」


 イレーヌの部屋を出るなり、フェデリコは微笑みながらオリヴィエにそう尋ねた。余裕たっぷりの表情に腹が立つが、他国の王子に対して無礼な態度はとれない。


 そんなことをすれば、殿下に迷惑がかかってしまうからな。


「護衛騎士として、殿下に仕えているだけです」

「やけに過保護に見えたけど?」

「あらゆる危険を排除するのが、護衛騎士としての務めですから」

「へえ。僕もその危険っていうやつに含まれるんだ?」


 話しにくい奴だ。飄々としていて軽薄なのは間違いないだろうが、とにかく隙がない。

 決闘を挑んできたのも、自信があるからだろう。


 もしイレーヌもフェデリコを好ましく思っているのなら、二人の恋を邪魔するつもりはなかった。

 もちろんこんな軽薄な男はイレーヌに相応しくないし、個人的な感情を言えば絶対に認めたくはなかったが。


 しかしどうやら、イレーヌはフェデリコに好意を抱いているわけではないらしい。

 イレーヌの様子を見ていれば、そんなことは簡単に分かった。それどころかなぜか、イレーヌはフェデリコに怯えている。


『そんなことをしたら、オリヴィエが……っ!』


 焦った表情のイレーヌが頭に浮かび、オリヴィエは内心で舌打ちした。自分の身を案じてくれたことは嬉しいが、こんな男に負けると思われたのかと思うと、腹が立って仕方ない。


 俺は殿下のために、訓練を重ねてきた。どんな危険からも殿下をお守りする覚悟はできている。

 なのに殿下は、俺を疑っていらっしゃるのか。


「どうかした? ずいぶん、怖い顔をしてるね」

「……なんでもありません」

「そう? でも、ここまででいいよ。男に部屋まで送ってもらう趣味はないから」


 立ち止まると、フェデリコは軽く息を吐いた。正面からオリヴィエを見つめ、明日の決闘だけど……と話を続ける。


「この国では、貴族の子弟たちが模造刀で決闘する催しがあると聞いた。でも、僕の国にはそんな文化はない。遊びで決闘をする文化はないんだよ」


 ティーグル王国と比べ、パンテーラ王国の情勢は安定していないと聞く。

 だからこそ王子であるフェデリコも、軍人として研鑽を重ねているのだろう。


「決闘は真剣で行うもの。もちろん、死ぬような怪我を負わせることはないけどね。……君が怖くないのなら、真剣での勝負を提案したい。どう?」


 薄ら笑いを浮かべ、フェデリコがじっとオリヴィエを見つめる。

 イレーヌの前でこの提案を行わなかったのは、イレーヌが絶対に許可しないと思ったからだろう。

 そしておそらく、その認識は正しい。


「安心して。断っても、臆病者だと君をイレーヌ様に告げ口するつもりはないから」

「……フェデリコ様は、殿下をどう思っていらっしゃるのですか」

「愛らしい方だと思っているよ。国に戻ったら、王を通じて正式に婚約を申し込もうともね」


 イレーヌの婚約者について、現在はいろいろな推測が飛び交っている。しかしどれも噂だ。

 だが他国から正式な申し入れがあれば、状況は一変するだろう。


「でも僕としても、嫌がる女性を無理に妻にしたいわけじゃない。その前に、イレーヌ様にちゃんとアピールをしておきたいんだ。君を倒して、ね」


 イレーヌはいつか、誰かを夫として迎えるだろう。この国の後継者として、子作りは必須だ。

 分かりきった事実なのに、そんな未来を想像すると心が騒ぐ。


「……明日の勝負、真剣で行いましょう。騎士として、俺は逃げません」

「へえ」

「殿下の騎士として、俺は誰にも負けるつもりはありませんから」


 殿下が誰と結ばれたとしても、誰を選んだとしても、一番近くで殿下をお守りするのは俺だ。

 誰にだろうと負けるわけにはいかない。負ける、なんて殿下に思われるわけにもいかない。


「楽しみにしてるよ。それじゃあ、おやすみ。いい夢を見なよ。明日の夜は眠れないだろうから」


 ひらりと手を振って、フェデリコが去っていく。その背中が見えなくなるのを見届けてから、イレーヌの部屋へと戻った。





「オリヴィエ!」


 部屋に戻るなり、イレーヌが飛びつくような勢いで近寄ってきた。上目遣いでオリヴィエを見つめる瞳には涙がたまっている。


「わたくし……!」

「殿下」


 イレーヌの頬に手を伸ばそうとしてやめる。しかしイレーヌがぎゅっとオリヴィエの手を掴んだ。


「……俺は必ず勝ちます。俺を応援してくれますか、殿下」


 明日のパーティー、イレーヌは勝った方にエスコートされる。

 もしオリヴィエが負ければ、明日、イレーヌはフェデリコの手を取るのだ。


 分かっている。殿下がずっと、俺の手をとり続けてくれるなんてことはあり得ない。

 それでもまだ、殿下をエスコートするのは俺の役目だ。


「当たり前じゃない。だってわたくしは……!」


 イレーヌが黙り込んでしまったから、続く言葉がなんだったのかは分からない。

 抱き締めたくなる衝動を必死に抑え、オリヴィエはそっとイレーヌの手を握り返した。

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