最後に笑うのは 【月夜譚No.332】
掲載日:2025/01/12
寮の中は暖かかった。暖炉の中で炎が躍り、室内を暖色に染める。窓の外に顔を向けると、夜空から降ってくる白が地面に積もっていくのが見える。
暖かい場所にいると安心する。硬くなっていた関節が解れて、筋肉が緩む。
しかしながら、彼の心はそれだけ外に放り出されたみたいに震えていた。
このコミュニケーションスペースにいるのは、彼を含めて七人。今現在寮に滞在している全員だ。
本当は、もう一人いた。しかし先刻、大浴場で変わり果てた姿になって発見された。
それは明らかに他殺で、誰かが寮に出入りした形跡もない。つまり、この中に犯人がいるということだ。
皆疑心暗鬼になって、同じ空間にいるのにそれぞれが壁を作って空気が張りつめる。
この寮は山間部に位置しており、昨日から降り続く雪で外部と繋がる道は遮断されてしまった。通報はしたものの、警察が到着するには時間がかかるようである。
とにかく警察が来るまでは一人にならないように集まったは良いが、これでは息が詰まる。
夜はこれから。助けが来るまでに一体何人が残っているのだろうか。
ゲームを始める前のように、彼の口元が僅かに緩む。震える心は楽しみに満ちて、やがて狂気に笑うのだ。




