第59話 敵に戦い方を習う
「いいか、俺達高位吸血鬼は体の大半が魔力で出来てる。つまり俺たち自身が魔法みたいなもんだ」
建国式の最中に突然襲ってきた謎の吸血鬼コンゴウルだったが、色々あって彼から吸血鬼の戦い方を学ぶことになった私。いやホント訳分らん流れだな。
「うん」
「うんじゃねぇ、はいだ」
「はい」
意外と礼儀に厳しいっぽいコンゴウル。
「って事はだ。俺達は人間達のように儀式や呪文を使わず魔法を使うことが出来る」
うん、それはお城で吸血鬼の先生にも習った内容だね。
「俺達の戦いは人間達が思う以上に自由なんだよ。思いつくことならなんでも魔法で再現できる。万能なんだ。さっきみたいな腕を生やすことだってできる。つまり吸血鬼の戦いはいかに相手を超える想像で戦うかだ」
「相手を超える想像……」
「そうだ。人間のイメージだとそうだな。こんな感じか」
と、以前戦った人間達が使った魔法の矢を無詠唱で生み出す。
「で、人間が凄い魔法を生み出そうとすると」
ボンポンと大きさの違う魔法の矢や大量の魔法の矢が生み出される。
「これが一般的な人間の限界だ。魔力の限界や魔法の制御が足りないせいだな。けど俺達には魔法の制御なんて必要ないし、魔力も並の人間数千人分は優に超える。上位の吸血鬼になるほど魔力の上限は上がってくし、大量かつ良質の血を蓄えれば猶更強くなる」
「ほえー、私達ってそんなに魔力があったんだ」
「そのくらいは理解しとけよ」
「一応魔物や人間と戦って自分の強さは理解してたつもりだったんだけどね」
「雑魚相手に測っても自分の枠を狭めるだけだぞ。自分の限界を知りたいなら格上と戦え」
「でもそれで死んだらおしまいじゃん」
「バッカ、俺達は吸血鬼だぞ。バラバラにされたって太陽光に灰にされなきゃなんとでもなんだよ。どうしても勝てない相手なら死んだふりして後で体をつなげるとか、転移魔法でトンで逃げるとかいろいろあんだろ」
「転移魔法!? そんなのあるの!?」
マジで!? テレポートとかどこにでもな扉みたいなの使えるの私!?
「あー、空間転移系は迂闊にやるなよ。変なところに飛ばされて最悪二度と戻って来れなくなるからな。もしやるならすぐ近くの目に見える範囲で練習しろ。っつーかお前の場合はそれ以前の問題で力をしっかり使いこなせるようになってからだ」
「はーい」
「はいだ。伸ばすな」
「はい」
やっぱ礼儀に厳しいなコイツ。
見た目は怪物みたいなのに、妙に面倒見がいいというか、凄く先輩メンタル。
「つー感じだ。あとはひたすら戦って試して相手を上回るイメージを瞬時に作り上げるように訓練しろ。いいか、俺達吸血鬼の戦いはイメージの強い方が勝つ。相手を超えるイメージを形にしろ!!」
「分かりました先生!」
「うむ」
なるほど、どうやら私達吸血鬼の能力は思っていた以上に万能なようだ。
でもよくよく考えると体を霧にしたりコウモリにしたり空飛んだり物凄いパワーがあったりとそもそもの吸血鬼のイメージ自体がかなり盛り盛りの無法状態だったわ。
「んじゃ戦うか」
「え?」
「え?」
待って待って、なんでこの空気で戦おうなんて言うの?
「ここは「今日はもう戦う空気じゃねぇし帰るか」ってなるところでは?」
「何でそうなんだよ。俺ぁ戦う為にお前に力の使い方を教えたんだぞ」
なんという事だ。まさかここまで私達の間に認識のズレがあったなんて!
「師匠は弟子を可愛がるものでは!?」
「弟子は師匠を超える為に挑んでくるもんだろうが」
なんてバイオレンス!
「私はダラダラのんびり領地に籠って暮らしたいんだけど」
「いやお前あんだけハデに人間相手に大立ち回りしておきながらそれはねぇだろ。滅茶苦茶注目されてんぞ」
「……マジで?」
「マジだよ」
いや、うん。それはまぁ私も思わないでもなかった。
僻地の町を侵略しただけのつもりが気が付いたら国中を巻き込む騒動になって、しかもそれがいくつもの国を巻き込む大騒動に発展しちゃったんだよねぇ。
「いや、あれはこれ幸いと欲に駆られた人間達が悪いんだよ! 権力欲よくない!」
「そういう人間共の欲を刺激しちまったからだろ。静かに暮らしたいならもっとおとなしく僻地の村とかを支配して時間をかけて勢力を整えろよ。普通町をいきなり制圧するなんて戦争する気満々にしか思えねーよ」
「そ、そうかなぁ……?」
「お前、残念な奴だったんだな」
やめろ! そんな可哀そうな生き物を見るような目で私を見るな!
「まぁそういう訳だ。こんだけ派手に吸血鬼デビューしたんだ。この先も生き残りたいなら俺くらい退けられねーとな!」
やめろー! 私を中学デビュー失敗した痛い子みたいに言うなー!
「くっ! やってやる! やってやるよ! その口力づくで塞いでやる!」
「はっはー! そうこなくっちゃ! やっと楽しくなってきたぜ!」
これ以上私のメンタルをボコボコにされる前にコイツを力づくで黙らせる!
弟子は師匠を力づくでぶちのめして倒せるものだって本人も言ってたんだし文句は言わせないからね!
「行くぞおらぁーっ!」
「こいやどらぁーっ!
後に、大陸割りし雷火の災いと呼ばれる吸血鬼同士の大決戦がここに幕を開けたのだった。




