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転生コウモリちゃんは吸血姫になりました~領地を広げて死者(私)の楽園を作りますね!~  作者: 十一屋 翠
第4章 吸血鬼大戦編

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第56話 月光の降臨

 ◆ダークエルフ族長◆


 日が沈み世界が闇に包まれた夜、遂に建国式典が始まった。

 式典会場へと各国の使者がやって来る。


「こ、これは!?」


到着した各国の使者達は、まず会場の光景に驚く事になる。


「真っ白な会場だと!?」


 会場は全てが白で塗り尽くされており、それ以外の色が無かったのだ。

 更に灯りの魔法を使って可能な限り影が出来ない様にされているのも自分達でやっておきながら手が込んでいると言わざるを得ない。


 なお全てが同じ色で揃えられているという訳ではなく、微妙に色合いの違う白が使われている。

 これは多くの種族が協力して作り上げた努力の結晶であり、完成した時には我等でもこれだけの荘厳な建築物が作れるのだなと感動したものだ。


 更に我等従者達も全身を白い装束で包んでおり、目以外のほとんどが隠れている。

 これは式典会場の色の調和を崩さない為だ。


「これが吸血鬼の住処だというのか……?」


 吸血鬼と言えば血の赤、もしくは闇夜の黒というイメージがあるからか、彼等はまるで神聖な場所の如き純白の会場に驚きを隠せないでいた。

 寧ろシミひとつない純白の世界に対し、多彩な色を纏った自分達の方が世界を汚すシミであるかのような戸惑いの感情を見せる。


 ふふ、気圧されているな。

 アドルネル嬢から全てを白に染めて式典を行うと聞いた時は何故そんな奇妙な真似をと困惑したものだが、使者達の戸惑い様を見て納得する。

 確かにこれなら相手の使者を動揺させ、こちらのペースに引きずり込む事が出来る。

 気圧された使者達は我々の指示に素直に従って指定された場所へと連れていかれ、落ち着きを取り戻したところでふと自分達の居場所の違和感に気付く。


「まて、何だこの序列は?」


 彼等が戸惑うのも無理はない。

 式典に於いて有力な者から前列に案内される。

 だが、一部の大国の者達は明らかに下位の国家が配置されるような場所に案内されていたのだ。


「これはどういう事だ? それに何故ケンタウロスや小人族が我々よりも前に居るのだ!?」


 しかも自分達よりも序列が低い筈の国や種族が前に居る事に不満よりも困惑を覚える使者達。

 彼等が困惑するのも無理はない。ある程度近しい力関係の国家なら多少おかしくてもまだ理解できるだろうが、格下の国家ですらない単一種族の部族が自分達よりも前に居るのだからな。

 だがその疑問に答える者は誰もいないし、我々も答える気はない。


「静粛に、我等が主が参られます」


 アドルネル殿の声と共に、式典会場の光が全て落ち、白一色だった世界が漆黒に包まれる。


「「「「っっっっ!?」」」」


動揺する使者達を置き去りに、夜空に光が生まれた。


「アレは何だ!?」


 光は地上へとゆっくり降りてくる。


 ああ、なんという神々しい光か。

 人間の信仰する神の教えなど信仰する気にもなれぬ。

我等にとってあの光こそ真に神が遣わした救い主、真の神の代行者なのだから。


 そうして人の目でも確認できる距離まで降りてきたことで、ようやくその光が翼をもった人である事に使者達が気付く。


 我等ダークエルフの、いや我等人に追われし種族達の救い主。


「我が名はメルリル・クロムシェル。白夜王国の女王である」


「「「「……っっ!!」」」」


 純白、その一言でしか語れぬ主の姿と強大な圧力に使者達が圧倒される。

 本来ならば大国の王が相手でも平静さを保つ使者達だったが、会場の異様な空気と、吸血鬼とは真逆の存在にすら見える主の神秘的な姿には冷静さを保つことが出来ないでいた。


我等は身に纏っていた白い装束を脱ぎ捨てると、一斉に跪く。


「「「「っ!?」」」」


 その光景にようやく我に返った使者達が慌てて臣下の礼を取り跪く。


「「「「っ!?」」」」


 そして自分達が何故か臣下の礼を取ってしまった事に騒然となる。

 そんな光景を何事もなかったかのように流すと、主はゆったりとした動作で会場に設置された玉座に座った。


「さぁ、式典を始めようか」


 国を挙げて行う式典の開始の言葉とは思えないような軽い発言、しかし我が主が口にすれば、このようなものただの暇つぶしでしかないと言っているようにすら聞こえる。


「「「「……」」」」


 始まりを告げる主の声に、使者達の表情が変わる。まるでこれから戦争が始まるかのような雰囲気だ。

 実際、国の威信を背負ってやって来た彼等からすれば、この式典こそ自分達の戦場なのだろう。

 だが、主の降臨によって出鼻をくじかれた彼等は、自国の利益を引き出す交渉をすることなど出来る筈もないのだった。

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