第54話 吸血鬼と格付け
「私達、これでアンデッドになったんですか?」
私が血を吸いつくした奴隷達は、何故かグールにならずに流暢に喋っていた。
「あっれー?」
どういう事? もしかしてアンデッド化失敗? いやそれなら普通に死ぬか。
「なんか思いっきり自我があるみたいだけどどういう事?」
「えっと、私に言われましても……」
奴隷達をじっと見つめてみると……うん、この子達は私の眷属になってる。
なんというかグール達やミイラ一号君と同じ物を感じるんだ。
だからこの子達は間違いなくアンデッドになっているし、私の眷属として紐づいている。
「あ、あの、じっと見つめられると恥ずかしいです」
「あっ、ゴメン」
私にガン見された事が恥ずかしかったのか、奴隷の子が頬を赤らめてモジモジする。
「お姉様! 見つめるなら私を見つめてください!」
アドルネルはちょっと黙ってようねー。
「にしても何で喋るんだろう?」
今まで私が血を吸って眷属にした者達は全員が自我を失い物言わぬグールになっていた。
唯一の例外はソルフィ達吸血コウモリだけど、あの子達は私が直接産み出した眷属なのでノーカンだと思う。
「お姉様、もしかしてこの子達は吸血鬼になったのではないですか?」
「吸血鬼?」
その言葉にハッとなった私は、奴隷達の口を調べる。
「犬歯が伸びて牙になってる、肌もアドルネルに比べると白いし、目が赤くなってる」
言われてようやく気付いた。この子達吸血になってるよ!
「でも何で吸血鬼になったんだろう? 今までずっとグールだったのに」
「お姉様が吸血鬼として成長したからでしょうか?」
「成長、成長なのかなぁ?」
正直戦いとかでレベルがあがった感じもしないんだよね。
でもまぁ、長期間土地を占拠すると大地が瘴気を発するようになったし、もしかしたら何か私の知らない条件があるのかもしれない。
「うん、まぁなったものはしょうがないよね! それにグールよりも吸血鬼の方が強いだろうし!」
分からない事は分からないので、考えるのはやめやめ。
起きた事を素直に受け取ろう!
「私達、吸血鬼になったんですか?」
自分達が吸血鬼になったと言われ、奴隷達が困惑している。
「んー、みたい。まぁグールよりも強いからラッキーだったんじゃない?」
「は、はぁ……そうなんですね」
まぁそんな事言われてもリアクションに困るか。
でもグールよりも強い吸血鬼に生まれ変わったって事は、この子達にはグール達を指揮する幹部としての役割を期待できるかもしれない。
強くて自分の意志で動けるアンデッドの誕生は私としてもありがたいのでこの子達には頑張ってほしいものだ。
「でも忘れちゃ困るでちゅ! ご主人ちゃまの眷属の先輩はこのソルフィでちゅ!」
と、そこにソルフィが割って入る。
「は、はい、分かりました。ソルフィ先輩」
ソルフィの勢いに気圧されて腰が低くなる奴隷達。
「先輩、ああ良い響きでちゅ……」
うっとりとした声で先輩と言う立場を噛みしめるソルフィ。
しかしそんな彼女の肩、ならぬ翼をポンポンとつつく影が。
「……」
ミイラ一号君だ。
「……」
ミイラ一号君は先輩は自分だとばかりに自らに親指をクイックィッと向ける。
「……はっ、ソルフィはご主人ちゃまに直接産み出された純ご主人ちゃま産の眷属でちゅ。眷属ランク的にトップと言えるのでちゅよ」
なんだ純ご主人ちゃま産って。眷属に国産とかあるんか?
「あら、それはお姉様の眷属ですらない私への宣戦布告かしら?」
「ぶぎゅっ!」
そこに参戦するアドルネル。ソルフィはアドルネルに鷲掴みにされると、そのまま上下にシェイクされる。
「でじゅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「ほほほほほっ」
何気に一人だけ私の眷属じゃない事が地雷だったのか、アドルネルは容赦なくソルフィをシェイクし続ける。
「……クイックイッ」
「あ、はい。よろしくお願いします一号先輩」
「コクリ」
そんな地獄絵図とは裏腹に、ミイラ一号君と奴隷達の間で穏やかな交流が行われる。
まぁアレを見たら上下関係とかに拘るのも不毛だって思うよね。
ともあれ、そんな感じで奴隷達は吸血鬼として新たな戦力となったのだった。
◆
「たぁー!」
奴隷達は魔物と戦っていた。
というのも、眷属となったあの子達がどれだけ強いかが良く分からなかったからだ。
私に近い強さなのか、それとも凄く弱いのか、どれくらいの戦力か分からないと役割を決めれないとアドルネルに言われ彼女達の強さを測る事にしたのである。
ドゴォン、バガァンと地面が割れ、岩が砕ける。
「パワーはあるねー」
「そうですね。あとは当たればいう事ないのですが」
奴隷達の力は強かった。更に動きも早い。身体能力は文句なしの即戦力だ。ただ……
「へっぴり腰なんだよなぁ」
うん、そうなんだ。彼女達は魔物相手にめっちゃ腰が引けていて、攻撃をしてもあっさり回避されて空振りばっかり。
「まぁ彼女達の素性を聞く限り、戦闘訓練など受けていないみたいですから」
アドルネルが彼女達の素性を確認してくれたんだけど、基本的に彼女達は一般人だった。
奴隷になった理由は親の借金のカタに連れていかれたり、誘拐されたりと色々だったけど、私のご飯に選ばれたチョイスもあって、基本的に女の子や若い子ばかりなんだよね。
だから戦闘訓練を受けていないのも仕方がないといえば仕方がなかった。
でも吸血鬼になった事で身体能力は確実に上がっており、鍛えれば戦力になるのは間違いない。
現に魔物達も彼女達のパワーを警戒して迂闊に攻め込めないでいた。
「うーん、ダークエルフに頼んで鍛えて貰おうかな? でも彼等にも結構仕事振ってるしなぁ」
ダークエルフ達は高位の冒険者ともやり合えるくらい能力が高く、また頭も良いので現場での指導者として忙しいんだよね。
生身の彼等にこれ以上仕事を与えるのもなぁ。
「ポンポン」
と、そんな私の肩を叩いてくるミイラ一号君。
「何?」
「スチャ」
すると剣を抜いて素振りをした後奴隷達を指差すミイラ一号。
「ええと、自分が鍛えるって?」
「コクコク」
ミイラ一号君が教師……喋れないのに大丈夫かな?
「ん~、でもまぁ良いか」
ミイラ一号君の剣の腕は凄いし、あれを学ぶことが出来れば彼女達もかなりのレベルアップが見込めるだろうしね。
「おっけー。それじゃあよろしくね」
「コクコク!」
元気よく頷くとミイラ一号君は奴隷達の下へと駆けて行き、彼女達が苦戦していた魔物達をあっさり瞬殺する。
「……スチャ!」
「わ、分かりました! よろしくお願いします教官!」
なんか言いたい事が伝わったのか、奴隷達がミイラ一号君に深々と頭を下げて教えを乞う姿勢を見せる。
うん、彼が自我のない下級アンデッドだからって侮らずに素直に教えを請えるあたり、素直な良い子達だね。
「……あれ? でもこれってつまり格付け完了って事?」
「ニヤリ」
やっぱりあのミイラ、自我があるんじゃないの?




