第49話 建国しましょ葬しましょ
「わーれーらーが王のためにー」
「「「えーんやこーらー」」」
なんだか陽気な歌を歌いながら、ゴブリンが、オークが、そしてダークエルフ達が働いている。
いや、彼等だけではない。この間の戦いの後で移住してきた種族達も楽しそうに働いている。
「人間の目を気にしなくてもいいー」
「堂々と外を歩けるー」
彼等の立場が立場なだけになかなか切ない歌詞なんですけど。
「でもこれからは違うー!」
「俺達の国が出来るー!」
「「「救い主様の国が出来るーーーーっ!」」」
はい、彼らがめっちゃウッキウキなのは、もうすぐ私の国の建国式典が行われるからなのだ。
何で建国って? そりゃ皆に求められたからだよ。
アドルネル曰く、
「今のままだと私達は人間の国を奪い取った侵略者です。戦いの傷が癒えれば間違いなく我々を討伐しようと再び軍を差し向けてくるでしょう。ですので正式に国を興すことで正当性を示します」
「いや、侵略者に正当性も減ったくれもなくない?」
「それを言ったら人間同士で侵略して奪って自分のものと言い張るのですから今更では?」
それはまぁ……はい、そうですね。
「でも建国したからって戦いに負けた人間達が納得しないと思うけど」
「その通りです。建国したとしても周辺の国が我々を国家と認めなければ土地を制圧した蛮族として狙われ続けます。ですから、力で脅して国家として認めさせます。誰もが疲弊している今ならそれが可能ですので」
ビックリするくらいストレートな方法来たよ。
でも結局時間がたてば襲われると思うんだけどなー。
「国家として成立すれば、次は国交です。つまり交易ですよお姉様」
「交易?」
「はい。我々と交流を結ぶことで、他国では手に入れる事の出来ない貴重な品を得る事が出来ると理解すれば、周辺国は我々と争うよりも友好的な関係を築いた方が良いと考えるようになります」
「でもウチにそんな交易の目玉になるものってあった?」
「あります。魔物の生み出す品です」
魔物の? でもうちに居るのってオークとかゴブリンとかおよそ産業とは縁がない種族ばっかりなんだけど。ダークエルフはワンチャンあるかもだけど。
「我が国は多くの人間と敵対、もしくは関係の良くない種族が集まっています。そうした種族の中には人間よりも優れた品を作る技術を持っていたり、人間には手に負えない特定の貴重な素材となる魔物を使役する種族が居るんです」
へぇ、そんな種族が居たんだ。
「そうした人間社会では定期的な供給が難しい品を交易品として考えています」
あーなるほど、敵対的な種族が生み出す貴重品を手に入れようとしたらその種族の集落を襲って奪い取るしかないもんね。
そんなの定期的な再入荷はまず無理だし、人間の技術でなんとかならないならそりゃ売り物になるか。
「よく考えてるねぇ」
「えへへ、もっと褒めてください」
「よしよし」
私はアドルネルの頭をなでなでしてやる。
「ふへへ、そういう訳なので、十分交渉は可能だと私は思っています。既に建国式典の招待状は各国に送ってあります」
「いつの間に!?」
「建国式典の準備が軌道に乗ったあたりで、ですね」
割と早い段階から送ってたんか!?
「またダークエルフやゴブリン達から自分達と交流がある他種族も式典に誘いたいという申し出があったので許可を出しました」
そんなことまで!?
「人間の数の多さに手を焼いている種族は多いですからね。そこに人間の連合軍相手に大勝利をして見せたお姉様が国を興すとなれば、なんとしてでも勝ち馬に乗りたいと思うでしょう。我が国が正式に国として認られれば、我が国は人間と敵対する種族主導の国家として、異種族の中心的立場になりますからね。絶対参加して今後の交渉の伝手を得ようとするでしょう」
ほえー、色々考えてるんだなぁ。
私そんなこと全然考えてなかったわ。
アンデッドで数に任せて襲えば町を制圧できるでしょくらいの気軽な気持ちでやっただけだからなぁ。
それがこんなに優秀な子をゲットできるとは、世の中何が幸いするか分かんないねぇ。
「ま、人間から仕返しされないで済むならその方が良いよね」
「はい。この建国の最大の目的は人間達を欲望としがらみで雁字搦めにして手を出させなくすることですから」
そう、人間の欲深さを強調するアドルネル。
「ふふふ、楽しみですね。人間にとって敵である吸血鬼が人間の国のど真ん中で国家を誕生させるなんて」
いや、それを求めたのは君達なんだけどね。
まぁ私としても人間達の動きを抑制できて、更に部下が増えるのは歓迎だからいいんだけどね。
「そうそう、お姉様の式典用のドレスも凄いのを作ってるんですよ! 期待しててくださいね!」
「あ、うん」
正直それはあんまり期待したくないかなぁ。
なんか衣装を作ってる種族達の世間話をチラ聞きしたら、なんか紅白歌合戦みたいなの作ってるような会話が聞こえてきたし……
「頼むから普通のドレスであってくれよー」
何となく、本当に何となくだけど、私の希望は叶わない気がしたのだった。




