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転生コウモリちゃんは吸血姫になりました~領地を広げて死者(私)の楽園を作りますね!~  作者: 十一屋 翠
第3章 暗黒都市開発編

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第47話 暗躍する者達

◆聖教会教皇◆


 帰還した吸血鬼討伐隊から私達は驚くべき報告を受けていた。

 連合軍と討伐隊の壊滅、異常な強さのグール。だが何より驚くことになったのは……


「吸血鬼が雷を操っただと!?」


絶対にあり得ない筈の報告に、大聖堂が騒然となる。


「なんと不敬な! 吸血鬼などに神の力が扱える訳がないだろう! この不心得者め!」


 当然司祭達が彼等の発言に対して激怒する。

 だが報告は始まったばかり、ここで有耶無耶にしては皆を呼んだ意味がない。

例え誤報だったとしても、いかにして偽りの雷を産み出したのかを確認しなければならない。


「静まれ!」


私の言葉に司祭達が渋々口を閉じる。


「確認するぞ。その吸血鬼は本当に雷を操ったのか?」


「っ! は、はい。何十もの雷が、明らかに意図に従って天より落ちました。それも吸血鬼ではなく我等に向けて落ちてきました」


「雷に見せかけた魔法ではないのか?」


 かつて、雷を再現しようと多くの魔法使い達が研究した。

 だが、他の自然現象を再現する事は出来ても雷だけは再現が出来なかったのだ。

 それ故、雷の魔法といえば本物とは似ても似つかない者ばかりだった。


「い、あれは間違いなく雷です。あの凄まじい光と音、なによりとても目で追う事の出来ない速さ。あれは雷以外の何物でもありません。現にわずかな時間視界から消えただけで聖騎士達が黒焦げになっていました」


「それは炎の魔法で焼かれただけではないか?」


「だとしてもあの雷より感じられた力は本物です。雷が落ちた場所の地面は吹き飛んでおり、聖騎士を炎で焼き殺しながら同時に地面を吹き飛ばす程の魔法を連続して放てるのであれば、それはそれで異常なことに代わりありません」


 確かにな。真偽はともかく件の吸血鬼の実力は間違いないということか。

 その後他の生き残り達の報告を聞くも、やはり全員があれは本物の雷だったと断言した。


「……件の吸血鬼に関しては雷を操った事の真偽が発覚するまで関与せぬこととする」


「なにを仰るのです! ここで引けば吸血鬼が雷を操ったと認めることになるのですぞ!」


「それだ、それこそが問題なのだ」


 同意を示した私に対し、司祭がならば何故と困惑の表情を浮かべる。


「新たな討伐隊を送るにせよ、件の吸血鬼と戦えばかなりの犠牲が出るだろう」


「しかし今回の討伐に参加したのは血の気の追い若手ばかりです。対アンデッドに特化した熟練の司祭達は参加していません」


「そうだな。確かに神聖魔法の使い手としては優れている。だが、連合軍が全滅した事実を忘れるな。我等が討伐隊を差し向けるにしても数の上では圧倒的不利になるぞ」


「っ! ですが、神聖魔法で纏めて浄化すればなんとでもなります!」


 司祭が食い下がるが、やはり分かっていない。


「敵にはダークエルフといったアンデッド以外の敵もいる。それに、例の雷の魔法、アレを遠距離から放たれれば神聖魔法が届く前にこちらが全滅する危険もある」


「教皇は吸血鬼が本当に雷を操ると思っているのですか!!」


「間違えるな。威力は本物なのだ。数で劣り、威力も本物ならば我等が敗走する危険は大きい。そうなった場合、生き残った者達はこう思うだろう。やはりあの吸血鬼は雷を自在に操るのだと。図らずも我々が真偽を保証してしまうことになる。少なくとも我等の敗北を知った者達はそう思うだろう」


「それは……」


 そうなのだ。既に件の吸血鬼が雷を操ると言う噂は流れてしまっている。

 戦場でわずかに生き残った兵士、そして錯乱状態で逃げて来た討伐部隊の生き残り達が吸血鬼が雷を操った事を公言してしまっていた。


 それ故、件の吸血鬼は雷を操る事から白雷公女という二つ名で呼ばれるようになっていた。

 ここで我々が口を紡ぐように言えば、逆に噂に信憑性を持たせてしまう。


「討伐部隊を出すにしても、件の吸血鬼の魔法の真相を暴くのが先だ。決して早まるでないぞ」


「……はっ」


 ああ、これは我慢がきかんな。

 やれやれ、神に仕える者だと言うのに、何故こうも権力を求める者が多いのか。


「私の在任中にこのような大事件が起きるとは、これも神の試練か……」


 ああ、神の試練はどうしてこう厄介で面倒なのか。

 いっそ愚痴でも言いたくなるが、立場故にそれも出来ん。


「早く優秀な後継者に後を任せたいものだ」


 だが、私に課せられた試練はこれだけではなかった。


「教皇様、火急の報告です!」


 会議中の大聖堂に若き司祭が飛び込んできたのだ。


「無礼な! 今は会議中ぞ!」


「よい。報告をせよ」


 間違いなく厄介事だろうが、今の陰鬱とした気分を変えたい。

 私は若い司祭に報告を促す。


「は、はい! 東部に居を構える吸血鬼の真祖、災厄女皇カミラエール・ヴォルドの領地で動きがあったとの事です!」


「…………な、何だとっっっ!?」


 神よ、もう少し手加減をお願いします。


◆ヴォイラード・クロムシェル◆


「ふっ……」


 最近の私は自分で言うのもなんだが気分が良かった。

 それと言うのも眷属の吸血鬼が我が宿敵を偶然とはいえ打ち倒し、あの魔剣を献上してきたのだ。

 そのような大戦果をあげれば、褒美として我が子へと進化させてやるのも当然と言うもの。

 更に我が子となったメルリルは教会を含めた人間達の連合軍を相手に快勝を果たし、己の領地を手に入れた。


「まだまだ小さな領地だが、すぐに大きくなるだろう」


 流石は私の娘と褒めてやりたいものだ。


「あの子は他のコウモリ達と違って賢かったからな」


 惜しむらくはあの子が居なくなったことでコウモリ達の情報の精度が下がった事だが、まぁそれは以前に戻ったと思えば惜しくはない。

 寧ろそれ以上のものをあの子がもたらしてくれたのだからな。


「やぁやぁ、ご機嫌だね」


 しかし、そんな気分の良い時間も、一人の闖入者によって台無しになる。


「何の用だカミラエール」


 私の前に現れたのは、一見すると可憐な少女。

 しかし、その正体は私と同じ吸血鬼の王の一角、七天の真祖が一柱カミラエール・ヴォルド。

 決して見た目通りの愛らしい存在などではない。

 あまりにも邪悪な振る舞いが目立つ為、人間達から災厄女皇などと呼ばれ恐れられているほどだ。


「ははは、少しぐらい歓迎してくれてもいいじゃないか。ヴォル。それに僕の事はカミィと呼んでおくれよ」


「お前に愛称で呼ばれる筋合いはない。さっさと用件を言え」


「おー、こわ」


 あからさまにおどけるカミラエール。その振る舞いが私の神経を逆なでる。


「分かった分かった。だからそんなに殺気を飛ばさないでよ。君の部下達も怯えているよ」


 誰のせいだと思っている。


「なぁに、ちょっとした確認に来たんだよ」


「確認?」


「そう。君、最近面白い玩具を手に入れたそうじゃないか」


「……」


 玩具、それは私が手に入れた魔剣か、それとも……


「でね、僕も玩具を手に入れたから是非とも一緒に遊ばせてあげたいんだよね」


 狙いはメルリルか。


「……好きにしろ」


「いいのかい!」


 子供のように顔を明るくするカミラエール。

 白々しい、どうせ私が許可を出さなくとも勝手に行動するだろうに。

 こいつはメルリルが私の娘だと知っていてあえて確認を取りに来たのだ。


「我等真祖は互いに不干渉の盟約を結んでいる。ならばお前の遊びに手を出すつもりはない」


「まぁねー。でもあの玩具は君のでしょ。だからうっかり壊しても怒られないように、先に許可を貰っておこうと思ってさ」


 一瞬、だが明らかに私に分かる様に嗜虐的な目の輝きを見せつけてくるカミラエール。


「はっ、舐めるなよ。私の娘だ。貴様の玩具の方が壊れるぞ」


「っ!? ははっ! 良いじゃないか! 君がそこまで言うなんてね! いいよ、面白くなってきた! 今度のゲームは中々に刺激的になりそうじゃないか!」


 ケラケラと癇に障る笑い声をあげるカミラエール。


「ふぅ、それじゃあボクは帰るよ。玩具もすぐに遊びに行きたくてウズウズしているからさ。それじゃまたねー!」


「二度と来るな」


 漸く騒がしいのが去り、部屋に静寂が戻る。

 同時に慌てた様子でドアをノックする音が聞こえて来た。


「ご主人様、大丈夫ですか!?」


「問題ない。仕事に戻れ」


 ふぅ、部下も修行が足りんな.

 なかなか我等の足元に至れるものは現れん。

 しかし、あの娘なら、あるいは。


「ああ、そう考えるとこれは良い機会かもしれん。あの子の鍛錬には丁度いいだろう」


 私は気を取り直す。

 上手くすればあの子の成長を促すだけでなく、奴にほえ面をかかせることも出来るだろう。


「頑張るのだぞ、我が娘よ。厄介な奴に目を付けられたようだが、我が血にかけて必ず勝つのだ」

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