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転生コウモリちゃんは吸血姫になりました~領地を広げて死者(私)の楽園を作りますね!~  作者: 十一屋 翠
第3章 暗黒都市開発編

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第42話 切り替わり続ける攻め手と受け手

 太陽が沈み、遂に私達のターンがやって来た。

 地下に身を潜めていたアンデッド達が地面を掘り起こして地上に現れる。

 前から、そして連合軍の背後に埋まっていた者達も姿を現し、挟み込む形になる。


「ふふふ、死を恐れぬ感情も命もない死者の群れ相手にどこまで戦える……ってめっちゃ負けてるじゃん」


 はい、アンデッド軍団めっちゃ押されてます。

 騎士達にバッタバッタと切り倒されているんですけど!?


「アンデッドの恐ろしい所は死んでいる事による恐怖の感情の無さとタフさ、それを利用した数での圧殺ですが、今回は相手の方が数が多いですからね。それに下位のアンデッドは動きが鈍いので弓兵や魔法使いの大部隊の格好の的とも言えます」


 めっちゃ相性最悪ですやん。

 大きな槍を持った騎兵隊が突っ込んでいったらパッカーンとボーリングのピンみたいに吹っ飛んでるし。


「馬ごと身体強化魔法を使った突撃戦術ですね。あれを発動すると防御魔法を使った大盾兵でもないと耐えるのは難しいかと」


 うわぁ、異世界人ってあんなバトル漫画みたいな戦い方出来るの!?

 今まで見て来た人間って、魔法をはぁー!って撃つくらいしか見たことなかったから、全身に魔法を纏って突撃とか初めて見たよ。

 あんなん本当に漫画じゃん。

 

 うぬぬ、こっちも全軍出せて戦いが楽になると思ったんだけど、そううまくはいかないみたい。

 しかも挟み撃ちする為に出した兵達は、どうせ前に出て速攻勝負を決めるからと最低限の迎撃だけで実質放置。


「それに残った兵は大貴族が擁する練度の高い専業の兵士達です。質の上でも向こうが上ですね」


 あかんやん。質も量も負けてんじゃん。


「残った周辺国の軍を撤退させるのは?」


「大貴族の領地は大きいだけあって留守役の兵も強いと思います。ですから撤退を期待するのは難しいかと。やるにしても長期的に量を削ってゆかないと」


つまり大貴族達に自主的に撤退して貰うのも無理かぁ。


「それじゃあ弱小貴族を狙ったのは無駄だった?」


「いえ、数が減るのは事実ですし、国内に増えたアンデッドの脅威度が増せば、中級貴族も撤退を真剣に考えないといけなくなるでしょう。そうして上手く犠牲者の数を増やしていけば、上級貴族といえども無視できなくなりますよ。まぁ流石にそれは希望的観測が過ぎますが」


 敵も抵抗するだろうから、そう都合よくはいかないか。


「となるとこっちの戦況が問題だよねぇ」


 連合軍は各国ごとの連携は全然取れていないけど、それでも国家単位で統制が取れているからこっちにとっては誤差でしかい。


 さらに不味いのが教会の聖騎士達だ。


「光よ! 呪われし死者達に救いの光を!」


 無数のめっちゃ眩しい光が夜を埋め尽くすと、アンデッド達が力を失って地面に崩れ落ちピクリとも動かなくなる。


「神聖魔法って厄介だなぁ。めっちゃ眩しいし」


 私達アンデッドにとって神聖魔法が特効なのも厄介なんだよね。

 お陰でアンデッド達がなすすべもなくやられてゆく。


「毒蛇戦術も地下からの攻撃も前回の戦いで見破られてるので効果が薄いですね。戦場の端に居る一般兵には多少効きますが、本陣付近は司祭達が神聖魔法による結界を展開してアンデッドが近寄れなくなっています」


 確かに後方にうっすらと白く輝く半透明のドームが見える。

 あれが結界なんだろう。


「っていうかアレ、動いてない?」


 うん、なんかこっちに近づいて来てる気がする。


「術の維持が必要なので遅いですが、交代で結界を発動させて移動を繰り返しているんでしょう」


 ああ成る程、半分の人数で一度結界を張った後、残った半分が結界の端まで移動し、そこで結界を張り直す。

 するとそこを基点に結界半分の距離移動した事になるのか。


「結界を維持している間は動けませんが、ああする事で結界を疑似的に動かしているのでしょうね」


「しかもあの結界、他の場所にも出来てるんだけど」


 ちょうど町を囲むようにいくつかの結界が生まれ、こちらに近づいてくる。


「恐らく結界による包囲を狭めながら移動する事で、この町を結界で包んで制圧するつもりなんでしょう。空を飛べるお姉様は逃げる事が出来ますがその場合アンデッド達は地下に逃げざるをえません。あとは地下に閉じ込めたアンデッド達を神聖魔法で浄化していけば、この町の奪還は完了になります」


 むむむ、せっかく奪い取った町なのに、このままだと放棄するしかないのか?

 更に厄介なのは包囲だけじゃない。少数で動く聖騎士達も厄介だった。

 アイツ等はアンデッド達の中でも強い個体を見つけては、馬で駆けてアンデッド達を浄化してゆく。

 更に敵の後方を取ったアンデッド達は結界に触れられないので近づく事も出来ない。


「折角眷属にしたのにー!」


「はい、ですから次の作戦に入りましょう。飛行アンデッド部隊の出撃です」


 アドルネルの指示を受け、新たなアンデッド部隊が出撃する。


「「「いくでちゅー!」」」


 私の眷属である吸血コウモリ達、そしてアンデッド達に襲わせて眷属とした鳥アンデッド達だ。


「上空、まずは結界を張る司祭達から殲滅します。瓦礫弾一斉投下」


 号令と共に、空から一斉に細いものが降り注ぐ。

 夜の闇に紛れて降り注ぐそれを、目の前の敵との戦いに夢中な人間達は気付かない。

 そして、それは司祭達の体を頭から貫いた。


「っ!?」


 何が起きたか考える事も出来ず、司祭達が頭から血を流して崩れ落ちてゆく。


「結界が!? 一体何があっ……なっ!?」


 結界が消えた事に驚いた騎士達が振り返ると、そこには血の海に沈む司祭達の姿。


「な、何故……!?」


「第二部隊出撃。第一部隊は瓦礫の補充を急いで」


 後続の鳥アンデッド達が飛んで行くのと入れ替わりに、攻撃を終えた鳥アンデッド達が戻って来る。

 そして彼等は近くに積み上げられた瓦礫の山から、尖った石材や木材を掴むと、再び空へと戻って行った。

 そう、あの瓦礫が司祭達を襲った攻撃の正体だ。

 町の復興の際、小さく壊れて再利用できなくなった瓦礫を見て、アドルネルはこれを再利用する事を考えた。


「破片なら力の弱い鳥のアンデッドでも運べます。上空髙くから落とせば、金属の兜を纏っていないか限り当たれば一撃ですから」


 そんな訳で攻撃は大成功だった。

 更に金属鎧を身に纏っていない兵士や、音を立てずに活動する特殊部隊の兵達も高々度からスピードを乗せて落下する瓦礫によって大打撃を受ける。


「神聖魔法による対アンデッド結界も瓦礫には無意味ですからね」


「ご主人ちゃま、後方の部隊も大変なことになっているみたいでちゅよ」


「後方の部隊?」


 偵察をしていたソルフィから、僧侶だけでなく後方の部隊も甚大な被害を被っていると報告が入る。


「ああ成る程、直接戦闘しない資材の管理役ですね。食料や物資の輸送と管理、そして配給を担当する部隊です、彼等が戦闘不能になると配給に影響が出て、最悪味方同士で物資の奪い合に発展しかねません」


 マジかよ、そこまで大変なことになるの?


「これは思った以上に効果的でしたね。さぁ、このチャンスを生かしますよ。次は本陣と戦場の騎士達の真上から毒蛇アンデッドの投下です。結界が張り直される前に毒で戦闘不能にするのです!」


 バラバラと毒蛇アンデッドが投下されそこかしこで悲鳴が上がる。


「でも毒なら治療すればいいんじゃない?」


「戦術として想定していても、毒消しの在庫と魔力は有限です。速いうちに薬の在庫を減らしておけば、またやられるかもしれないと警戒することでしょう」


 うーん悪辣。


「さて、このペースならお互い夜明けまでに勝敗はつきそうにありませんね」


「耐えろ! 夜明けまで耐えるんだ!」


 こうなると今度は向こうが夜明けまで耐えようと守りに入りだす。

 だからこちらも攻め手を強めるものの、なかなか押しきれない。


「もうすぐだ!」


 そして、空が明るみだし、遂に太陽の光が姿を表した。


「「「「おおっ!!」」」」


 耐えきった、と人間達が歓声を上げる。


「はい、予定通りです」


 けれど、アドルネルが穏やかな笑みで残酷な言葉を発した。


「崩落、開始」


 その瞬間、彼等の足場が一斉に崩れた。

 時間に追われ、進軍を強行した全ての兵士の足元が暗闇に飲み込まれてゆく。


「日中急いで勝負を付けようと、前に出過ぎましたね」


 後方の部隊が慌てて逃げようとするものの、結界に阻まれていたアンデッド達が立ちはだかる事で足を止めざるを得なくなる。

 その結果、立ちはだかったアンデッド諸共、彼等は地面に生まれた穴へと落下していったのだった。

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