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転生コウモリちゃんは吸血姫になりました~領地を広げて死者(私)の楽園を作りますね!~  作者: 十一屋 翠
第3章 暗黒都市開発編

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第40話 敵が多いなら帰らせればいいじゃない

 ◆領主の息子◆


「村がアンデッドに襲われただって!?」


 家臣からの報告を聞いた俺は信じられない内容に椅子からずり落ちそうになった。


「アンデッドって、それは父上が討伐に向かったって言う同盟軍のヤツか!?」


 まさか父上達に攻撃された事で怒ってウチを攻撃してきたのか!? それじゃあ父上は負けたのか!?


「いえ、それはないでしょう」


 否定したのは家令のバスチアンだった。


「何故わかる?」


「旦那様が旅立ってからさほど日が経っておりません。今の時点では隣国に入ったか入っていないかといったところでしょう。そこから戦闘を開始するには参戦する国家同士での入念な打ち合わせを行う必要がありますから、実際に攻めるのはまだ日数がかかるかと」


 確かにバスチアンの言う通りだ。

 噂の吸血鬼が襲ってくるにしても、まだ攻撃してもいないのだから報復に来るわけがない。

 そう言う意味では伝説の吸血鬼の血族に襲われた訳ではない事に安堵する。


「では例の吸血鬼とは関係ない全くの偶然という事か?」


「恐らくはそうでしょう。確認できたのは最下級のグールのみ。それに襲うにしてももっと隣国から近く有益な土地を狙うでしょうし」


「ちっ、まぁな」


 気に入らない話だが実際その通りだ。

 我が領地は大した特産品も無ければ主要街道からも遠い。

 はっきり言って何の旨味もない田舎領地だ。

 そんなところをわざわざ狙ったところで、何の意味もない。

 ああ、自分で言っていて悲しくなってきた。


「せめて俺も戦争に参加出来たらなぁ。アンデッド共をバンバン倒して武勲を示せたのに」


 父上は実戦を経験した事のない俺にはまだ早いと、従軍を許可してくれなかった。

 代わりに任されたのは退屈な領主代理の仕事だ。

 次期領主の相手が魔物どころかくだらない書類仕事とは情けなくなる。


「しかたありますまい。若様は次期領主。旦那様としても危険の高い吸血鬼の相手をさせるのは忍びないと思ったのでしょう。それにここで領主代理として立派に働かれる事の方が将来の為ですぞ。それで、このアンデッド達はどう処理いたしますか?」


 結局それらしいことを言ってごまかされてしまった。

 だがいい、丁度良いストレスのはけ口が見つかったんだからな。


「無論殲滅だ。小さな村といえど大切な我が領地。アンデッド共を駆逐する為の群を編成しろ」


「かしこまりました。では指揮官はタシバに……」


「いや、俺が出る」


「……は?」


 珍しくバスチアンが目を丸くして聞き返してきた。


「俺が指揮官として出ると言ったんだ」


「お、お待ちください若。若には領主代理として」


「そうだ。領主代理として領地を襲う不遜な死体共を駆逐しなければなるまい。すぐに行くぞ! アンデッド討伐は日中に迅速に殲滅するのが常套手段だろう? でないと被害者がどんどん増えて手を付けられなくなるからな」


 俺は有無を言わさず執務室を出ると、我が領地の数少ない専業兵士達に声をかける。


「お前達、アンデッド退治だ! 日中に一気にけりをつけるぞ!」


「アンデッド? お館様が倒しに行った例の奴ですか?」


「いいや、別件だ。だがアンデッドには変わりない。サクッと倒して俺達を連れて行かなかった事が間違いだったと父上達に思い知らせてやるぞ!」


「「「「おおっ!!」」」」


 ここに居る兵の大半は父上のアンデッド討伐に連れて行ってもらえなかった者達だ。

 理由は俺と一緒で未熟だからの一言。


「へへっ、腕が鳴るぜ!」


「ああ、アンデッドなんざ昼間に攻めりゃただのカモだからな!」


 部下達の士気は高い。

 当然だ、皆置いて行かれて鬱屈した思いでいたからな。

 それにコイツ等は俺の幼馴染達だ。

 ここらで活躍させてアイツ等の父親達に一人前と認めさせてやれば、俺が領地を継ぐときにコイツ等もスムーズに幹部の座を引き継ぐことが出来るだろう。


「はー、しかたありませんな。ですがタシバ達の指示をよく聞いて戦うのですよ」


 俺が意見を曲げないと諦めたのか、代わりにバスチアンは領内に残った熟練兵達に従えと言う。


 ふん、年寄りや口うるさい癖に怪我で置いて行かれた連中など無視すればいい。

 俺の士気でアイツ等以上に効率よく倒してやる!


 ◆


「ひ、ひぃ!」


 楽勝の筈だった。


「うぎゃあぁぁぁぁ!」


 ただの雑魚アンデッド狩りの筈だった。


「い、痛ぇ! 痛ぇよ!」


 なのに何故……


「何故アンデッド以外の魔物が居るんだ!?」


 アンデッドを狩る為に最低限の準備を終えて村へとやって来た。

 夜になる前に襲撃をする必要があったからだ。

 入念な準備とやらは後から来る徒歩の熟練兵の老人共にやらせておけばいい。


「よし、アンデッド討伐開始だ! 間違っても飛び出してきたアンデッドに襲われるなよ!」


「ははは、そんな間抜けいませんぜ若様」


「「「ははははっ!」」」」


 主に対する口の利き方はなっていないが田舎の兵なのでそこは仕方がない。寧ろ頼もしいと言うべきだろう。


兵達は二人一組になって家の中などの暗がりに潜むアンデッドを捜索し始める。

 連中が隠れる事の出来る場所はそんなところか後は森の中の暗がりくらいだからな。

 だから日の光の当たる場所はアンデッドに襲われる心配がなくて楽なものだった。

 その筈だった。


「ぎゃあっ!」


 人気のない無音の村に悲鳴があがる。


「どうした!?」


 何事かと声のした方向を見れば、そこには体に矢の突き刺さった部下の姿があった。


「矢? まさか賊か!?」


 いや、武器を持った武装兵のアンデッドの可能性もある。


「気を付けろ! 武器を持っているアンデッドかもしれん!」


 俺は部下の気を引き締めて捜索を再開させる。

 その矢がどの方向から放たれたのかを調べ忘れるという大失敗に気付かず。


「ぎゃあ!」


「あぎっ!」


 間髪おかず部下達が矢に襲われる。


「馬鹿者! 気を付けろと言っただろう!」


「あっ、あ、ち、違うんです」


「や、矢が横から……」


「横から?」


 だがアイツ等の横は森や畑があるだけだ。

 という事は……


「森の中に潜んでいるアンデッドが居る! 家の扉を外して盾にして捜索しろ! 矢を撃ち尽くさせるんだ!」


 グール程度の知能なら、相手が盾を使って防いでいても本能で攻撃してくる為防ぐのは容易だ。

 そうして矢を撃ち尽くしたら殲滅すれば良い。

 アイツ等に装備を補充するなんて知恵もないからな。


「他の者達は屋内の捜索を続行!」


「はっ!」


 そうして俺達はアンデッドの捜索を行ったのだが……


「駄目です。家の中にはいませんね」


「という事は森の中か」


「その森に向かった連中が戻ってきません」


 そう言えばそうだ。アンデッドに逃げられて追いかけているのか? 流石に負けたとは思えんが。


「仕方ない。村に居ないのなら森の中を捜索する気を付けろ!」


「「「「はっ!!」」」」


 部下達が森の中を捜索に向かう。

 しかしここで問題が起きた。


「「「「ヒヒーンッ!!」」」」


 突如村の外に待機させていた馬の嘶きが聞こえて来たのだ。

 嫌な予感がして馬の下に向かった俺達が見たのは、無残にも殺された馬番達の死体だった。


「なっ!? アンデッドは外に出てこれない筈なのに!?」


 まさか魔物か!?


「だとしたら油断し過ぎだ!」


 それにしてもマズい。この襲撃で馬が一頭も居なくなってしまった。


「若、これじゃあ夜になった時に逃げきれませんよ。撤退してタシバのオッサン達と合流しましょう!」


「馬鹿を言うな! そんな事になったらあの連中にやっぱり俺達は未熟だなと笑われるだけだぞ! それに森に捜索に出た兵達もいる! アイツ等が戻ってくればアンデッドなどいくらいようが問題ない! 寧ろ報告を聞いた限りアンデッドの数はそこまで多くない。日中であることを考えれば今頃全滅させているかもしれんぞ!」


「そ、そうですよね」


 だが俺は気付いていなかった。

襲われた村人達の死体が何処にも見当たらないことに。


 ◆


「まだ戻ってこないのか!」


 森に捜索に出た連中はいつまでたっても戻ってこなかった。

 既に日は落ちかけていて、このままだと夜になってしまう。


「若、やはり撤退しましょう」


「……分かった」


 さすがにこの時間になっても部下達が戻ってこないのでは残った者達が不安になるからな。決して俺が不安になっている訳じゃないぞ!


「よし、一旦撤退だ!」


 俺達は部下の撤収を待たずに村を出ると、後続として向かってきている筈のタシバ達との合流を目指す。いや、目指そうとした。


「うぎゃあ!」


 だが、そんな俺の足に激痛が走った。


「な、なんだこれは!?」


 激痛の正体は矢だった。

 俺の足に矢が刺さっていたのだ。

 まさかアンデッドが潜んでいたのか!?


 俺は周囲を見回す。

 アンデッドはどこだ!?

 近くの藪がガサリと音を立て何かが姿を現す。


「……ゴブリン?」


 現れたのはただのゴブリンだった。

 なんだ、驚かせやがって。

 という事は俺を攻撃したのはこのゴブリ……


 ザシュッ! ビシュ!


「ぎゃあ!」


「ぐあっ!」


 部下達の悲鳴が上がる。

 俺と同じように矢に射抜かれたのだ。

 このゴブリンじゃないのか!?


 ガサリと音が聞こえると、別の藪からいくつもの姿が現れる。


「オーク? それにエルフ?」


 現れたのはオークと、何故かエルフだった。


「何故エルフが?」


「ふん、我々をあのような軟弱者どもと一緒にするな」


 だが何故かエルフは俺の言葉に不快そうな様子を見せる。

 どういう事だ? 何故ゴブリンとオークとエルフが一緒にいるんだ?

 そもそも何でアンデッドじゃないんだ!?


「この村を襲ったのはアンデッドじゃなかったのか?」


「アンデッドさ。ただし、アンデッド以外も襲ったがね」


「え?」


 このエルフ、今何と言った?


「お喋りはここまでだ。お前も、お前の部下のお仲間にしてやろう」


 そう言うと、オークが俺の体を持ち上げて藪の中に放り投げる。


「ぐぁっ!」


 投げられた先で俺は見た。

 そこに居たのは森に捜索に出た俺の部下達の姿を。


「お、お前達無事だったのか……」


 だが、部下達は誰一人として言葉を返さない。

 代わりに向けてくるのは虚ろなどこを見ているのかと怪しくなるような視線。


 そんな中、見知らぬ人間が俺に近づいてくる。

 血まみれの口を開けて……


「お、おい、まさか……やめ、やめろ!」


 俺は必死でもがきながら藪の中から抜け出そうとする。

 だが部下達が俺の体に覆いかぶさって身動きできなくなる。


「お、お前達、どけ! どけ、どけぇぇぇぇぇ!」


 ◆


「おー、慌てて帰ってく」


 私の討伐に参加した国の貴族達が慌てふためいて戦線から離脱してゆく。

 というのも事前の仕込みのお陰だ。

 吸血コウモリ達による偵察が可能になった事でこの国が周辺国に協力を仰いでいる事が分かった私達は、妨害工作を行う事にした。


 具体的には周辺国にアンデッドを送り込んで襲撃させる事だ。

 と言っても普通に襲っては簡単に討伐されてしまう。

 そこでダークエルフやオーク、それにゴブリンも作戦に参加して貰った。


 基本的にはこの国でやって来た事と同じで、街道沿いで野営をしている人間達をアンデッドに襲わせて戦力を増やす。

 そしたら次はなるべく僻地の弱小領地の村を襲わせたのだ。勿論襲われた事を知らせる為に何人かは見逃して。


 すると領地を守っている留守番役の領主の息子やこれまた実力不足で置いて行かれた兵士達は慌てふためき村の奪回に向かった事だろう。

 それが自分達の最初で最期の戦いになるとも知らずに。


 で、討伐は失敗。戦力も激減して討伐どころじゃなくなる。


「すると残った人間は慌てて近隣の力を持った貴族に助けを仰ぎに行くでしょう。ですがその時には他の弱小貴族達も助けを求めて殺到していますから、あっという間に助けを求められた貴族のキャパシティはパンクしてしまいます」


 とアドルネルは語る。


「そうなると助けを求められた貴族は自分達の派閥の別の貴族に助けを求めますが、他の貴族も同様の状態。そこで派閥を束ねる上役の貴族に助けを求める事になるのですが、1領地辺りに出せる戦力は激減するでしょうね。周りがそんな事態になっているとすれば、自領を守る為の兵力を確保しないといけませんから」


 結果各領地に小規模な軍勢を援軍として差し向ける程度になってしまい、村と弱小領地の兵を丸ごと飲み込んで数を増やしたアンデッドと、それを指揮してゲリラ戦術を繰り広げるダークエルフ達に翻弄されてあっという間に援軍も全滅。


「しかも攻める方はダークエルフ達日中に動ける戦力の事を知らないから、猶更不利と」


「ええ」


 そうなると領地の留守を任されている者達は戦場に向かった主力を呼びもどすしかない。結果自分達の領地が危機的な状況である事を知った領主達は慌てて故郷を守りに向かったのだった。


「敵前逃亡は重罪ですが、貴族にとって自分達の領地を守る事は最優先です。しかも援軍を要請しても勝てなかったとあっては領地を見捨ててでも戦いに参戦しろとは言えません。そんな事を言ったら人望を失って軍の統率が滅茶苦茶になってしまいますから」


「離脱するのは大した兵も居ない弱小領地だからまぁいいかって?」


「はい。ですがそれも数が増えれば無視できない数字になります。更に現地のアンデッド達が合流すれば町も襲えるようになりますから、すぐに中級貴族達も撤退することになるでしょう」


 そうなれば最終的に連合軍に参加した国家は撤退する未来しかない。


「けれど現地の部隊は適当なところで撤退するように命令してあるので、戻って来た連合の兵達には戦う相手がおらず戻り損。ですが留守中の襲撃を恐れて再度の参戦に足踏みする様になるのです。また襲われては堪らないと」


「そうして私達は新たに増えた戦力と合流して、残されたこの国の戦力と総決戦って訳だね」


 うーん酷い作戦。

 犠牲者を戦力に出来るアンデッドってホント狡いよね。

 まぁ最大限利用させてもらうんですけど。


 そうして邪魔者が殆ど居なくなった私達は、本命の敵との総力戦に挑むのだった。

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