第32話 初めまして眷属ちゃん
改めて章分けをしました。
現在第3章となります。
「はじめまちて、ごちゅじんさま!」
突然目の前に現れた卵から生まれたコウモリは、私の姿を見た瞬間そんなことを言いだした。
「私がご主人様?」
「はいでちゅ! ごちゅじんさまでちゅ!」
何で?
何で突然卵からコウモリが現れて私のことをご主人様って呼んでくるの? これが異世界のスタンダードなん?
「あの、お姉様の事をご主人様と呼ぶということは、貴方はお姉様の眷属のコウモリという事なのかしら?」
「だれでちかあなたは?」
アドルネルが尋ねると、コウモリはアドルネルに警戒のまなざしを来る。
「私はお姉様の食料をしておりますアドルネル=フェネシアです」
とアドルネルはスカートをつまんで優雅に挨拶をする。
いや、挨拶の内容がそれでええんか? なんか妙にドヤってるし。
「ごちゅじんさまのごはんでしたか。よろちくでちゅ」
そして受け入れるコウモリ。
「わたちはごちゅじんさまのけんぞくのきゅうけつコウモリでちゅ」
そしてああ、本当に眷属だったんだこの子。
「ええと、つまり私から生まれたって事でオーケー?」
「そのとおりでちゅ! ごちゅじんさまのまりょくからうまれまちた!」
ふむ? この吸血コウモリの発言からして、どうやら吸血鬼は自分の魔力から眷属を生み出せるっポイ。
あの腹痛はその兆候だったって事? それってマジで陣痛だったってこと!?
ああいやでも本物の陣痛の話はもっと凄い痛みらしいし、そう考えると吸血鬼の場合はかなり楽をしてるのかな?
「ということはやはりお姉様の子供という事ですか!? お相手はいったい誰なんです!?」
「その話はもういいから!」
魔力から生まれたって言うなら、アドルネルの濃密な血が原因じゃないかって思うけど、それを言うと変なルートに入りそうなので言わないでおこう。
でもどっちかと言うと、私が生んだってより、血を粘土状にしてコネコネした結果出来上がったのがこの吸血コウモリって考えた方が納得するんだよね。
なんかそんな気がするんだ。
「あー、そう考えると沢山血を吸ってお腹いっぱいなのにもっと入りそうだったのって、こうやって眷属用に魔力を凝縮してたからなのかもだね」
自分の体ながら不思議だなぁ。
そしてお城で先生に吸血鬼の能力について教わっていた事を思いだす。
「あの時はいまいちピンとこなかったけど、実際に体験してみるとああこういう事かって納得するなぁ」
いや完全に納得は出来てないんだけど、その辺は生まれつきの吸血鬼と吸血コウモリから進化した者の差なんだろう。
「そうなるとこの子も進化するのかな?」
ちらりと見ると、生まれたばかりの吸血コウモリがクリクリのおめめで私を見つめてくる。
うーん、こうやってみると意外に可愛い……か?
「それでお姉様、この子の名前はなんと言うのですか?」
「え? 名前?」
「「……っ!?」」
突然名前を問われ、困惑してしまう。
「はい、お姉様の眷属なのですから、名前が無いと不便でしょう?」
「うーん、まぁそうだね」
名前かぁ。まぁウルちゃんズと違って1匹だけだし、この子にも名前を付けてあげた方が良いよね。
「なまえ! つけてもらえるんでちゅか!?」
名前をつけて貰えると聞いて、吸血コウモリが嬉しそうに羽をパタパタさせる。
「そうだねぇ、名前、名前……」
吸血コウモリらしい良い名前……
「「ソワソワ、アワアワ……」」
ところでそこのミイラ一号君とウルちゃんズは何でそんなソワソワしてるの?
「よし、決めた!」
私は吸血コウモリにつける名前を決定する。
「わくわくでちゅ」
吸血コウモリ、君につける名前はこれだっ!
「君の名前は……モリリン3号だ!」
うむ、完璧なネーミングだね!
「「……え?」」
おや? よく聞こえなかったのかな?
「モリリン3号だよ。コウモリらしさを残しつつ、私の3番目の身近な眷属として3号!」
「「(あちゃーというジェスチャー)」」
ふふん、我ながら会心のネーミングだよ。
「……ダサいでちゅ」
「え?」
おや? 今何か空耳が聞こえたような気が。
「ダサいでちゅっ!!」
「なんだと!?」
は? ダサいと!? この私のネーミングが、ダサい、だと!?
「ダサダサでちゅ! べちゅのなまえをようきゅうするでちゅ!」
馬鹿な! この私の類まれなるネーミングセンスをダサいだと!?
前世で町の特産品由来のマスコットの命名コンテストで市長のおじさんから大うけして特別賞を貰った私のネーミングセンスがダサいだと!?
「だんこきょひでちゅ! ほかのなまえがいいでちゅ!」
「くっ、これが幼い子供特有のワガママって奴か! 小さい頃からそんなだと大人になったときに懐かしのゲームを発掘して久しぶりに遊んでみたら厨二全開のネーミングつけられた主人公を思い出してのたうち回る事になるんだぞ!」
「内容は全くわからないですけど、凄く具体的な例ですね。もしかして実体験ですか?」
……何のことかな? 一般論ですよ一般論。
「とにかくべちゅのなまえがいいでちゅー!」
むー、しょうがないなぁ。
「でもほかの名前ねぇ。キューコ3式とか?」
「そもそもなまえにすうじをいれるのがおかちいんでちゅ!」
「「ウンウン」」
なんでそこで実感たっぷりに頷いてるのかな君達?
「じゃあチューモリン!」
「ダサさのほうこうせいがかわっただけでちゅ!」
「辛辣ぅ!」
くっ、なんてわがままさんなんだ! あと生まれたてにしては語彙が豊富すぎない!?
「そんな事言うけど、ミイラ一号君やウルちゃんズはこの名前で喜んでくれたよ!」
「ブンブンブン(そんな事ありませんというジェスチャー)」
「もっとレディーらしいなまえをちょもうちゅるでちゅ!」
ぬぬぬ、レディだと? ならば……
「あの、それならソルフィというのはどうですか?」
「「ソルフィ?」」
おずおずと手を挙げたアドルネルの名前に私達は首をかしげる。
「夜の女神に仕える眷属の乙女を描いた恋物語の主人公の名前なんです。お姉様は真っ白で月の様な美しさを持つ吸血鬼ですし、眷属もそれに合わせた名前など似合うのではと思って」
「へぇ」
夜の女神なんているんだこの世界。
でも成程、神話や物語から名前を貰うってのはよくある話かもだね。
「い、いいでちゅ! それすっごくいいでちゅ!」
バササーッ! と飛び上がった吸血コウモリが大興奮で羽を羽ばたかせながら叫ぶ。
「わたちのなまえはソルフィでちゅ! ソルフィで決まりでちゅ!」
大喜びの勢いによって、この吸血コウモリの名前はソルフィに決まったのだった。
いやそれにしたって喜びすぎでは?
「モリリン3号も良い名前だと思うんだけどなぁ……」
「「パタパタ(それはないというジェスチャー)」」
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