第31話 吸血鬼もお腹が痛くなる?
ギュルル......
「うう......」
お腹から派手な音を鳴らして私は棺桶に埋もれていた。
というのもずっとお腹が痛いからだ。
「うーんうーん」
どうやらお腹が痛いと思ったのはメンタル的な意味での胃が痛いではなくガチだったようで。
お腹が痛い、なのに何故か出るものが出ない。
「なんで血しか飲んでないのに便秘になるのさぁ」
うう、吸血鬼になったらこういう人間らしい悩みとは無縁になると思ったのにぃ......
「ああ、なんとお労しい。私が替われるものなら替わって差し上げたいです」
私のお腹を優しくさすりながら、アドルネルが労しそうに慰めてくれる。
うう、そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。
「それにしても吸血鬼がお腹をこわすことってあるんですね」
それはホントにそう。
ギュルルルルルルルルッ!
「ううっ!」
一際大きいお腹の痛みに、私は少しでも痛みを堪えようと身を丸める。
痛みはどんどん我慢できなくなり、しかしどこにも放出できないまま体の中に溜まってゆく。
そうして、お腹が破裂するかと思ったその時、
ポコン
それは転がり落ちた。
「「えっ?」」
床に転がったそれは......
「卵?」
そう、卵だった。
いったい何故? どこから卵が?
「これは……お姉様の卵⁉︎」
「そんな訳ないでしょ!」
私は人間、あいや今は吸血鬼か。でも吸血鬼も卵は産まないよ⁉︎
その前は血吸コウモリだったけどコウモリも卵......じゃないよね確か?
「お姉様」
と、アドルネルが真剣な表情で私を見つめてくる。
「一体誰の子なんですか⁉︎」
「誰の子でもないよ!」
「それじゃあ無精卵なんですか⁉︎」
「だから何で私が産んだ前提なのさ!」
「他に誰が産んだというのです! お腹が痛かったのもいわゆるその......じ、陣痛というものだったのでは?」
顔を赤らめながらアドルネルがとんでもないことを言い出す。
どこでそんな事覚えて来たの⁉︎
え? 書庫? ああそう。あとであそこの本の中身検分しておいた方がいいな。
アドルネルの教育に悪いものが多そうだ。
「ですが実際お腹の具合はいかがなのですか?」
「え? んー......」
言われて私はお腹に手を当てる。
「痛くなくなってる」
不思議なことに、お腹の痛みは綺麗さっぱり無くなっていた。
「やっぱりお姉様が産んだんじゃないですか!」
「だから違うって!」
「白状してください! 私を差し置いていったい誰の子を......」
と、その時だった。
パキリ、パキリという音が聞こえて来たのだ。
「え? 何の音?」
慌てて周囲を見回すも何も異常はない。けれど......
カタ、カタという音に下を見れば、なんと卵が揺れているではないか⁉︎
「え? 動いてる⁉︎」
卵の動きは激しくなっていき、更にパキパキという音はビキッ、パリッという音を伴って表面に亀裂が入ってゆく。
「も、もしかして産まれるんですか⁉︎」
「いやいやいや早すぎでしょ⁉︎ 産んだばかりだよ⁉︎」
「やっぱり産んだんじゃないですか!」
「違う! 今のは言葉の綾だから!」
なんて言い合っている間にも卵の亀裂がどんどん広がってゆく。
そしてついにバキリという音と共に卵が大きく割れた。
「キィー!」
そこから現れたのは一匹の小さなコウモリだった。
「コウ......モリ?」
どういう事?何でコウモリが?
「ええと、吸血鬼って子供の頃は蝙蝠の姿で生まれてくるんですか?」
「そ、そんな事はないと思うけど......」
いやまぁ私自身吸血コウモリから吸血鬼になったけど、それはあくまで進化したからだし。
そもそも吸血鬼って血を吸って仲間を増やす生き物だったはず。
お城で先生に色々教わっていた時にもそう言われた覚えがあるし。
でも、だったらこの子は一体......?
私達が困惑していると、卵から出て来たコウモリは頭に被ったままだった殻を振り落とすとキョロキョロと周囲を見回しだす。
そうして上を向いた瞬間、喜びの感情が伝わって来た。
「はじめまちて、ごちゅじんさま!」
これが私の人生を揺るがす第3の出会いの瞬間だった。
いや意外と多いな私の人生を揺るがす瞬間。
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