第24話 気が付けば大事
「うわぁ、何これぇ……」
前回の戦いから二か月、私達は囲まれていた。
いや、正しくは国を二分する軍勢のど真ん中に挟まれていたと言うべきか。
何でこんなことになっているかと言うと、全てはカロマナとレキサランの確執が原因だった。
私達の暗躍でぶつかりあった両軍は、急ぎ次の戦いに備えて戦力を集める事にしたらしい。
けれど大打撃を受けた上に相手はアンデッド軍団を従えている(と思い込んでいる)為、自前の戦力だけは戦力が足りないと判断した双方の領主は近隣の領主達にも協力を仰いだんだって。
「相手は邪悪なアンデッドを使役して同胞を襲った卑劣な悪党、次に狙われるのは自分達だ!!」と熱弁して。
そこまでならまだ地方領主同士の小さな争いで済んだのだけれど、その後に行った行為が事態を予想以上に大きくすることになる。
いかに相手に非があろうとも領主同士で大々的に戦争を行えば、それを管理する国のメンツは丸つぶれだ。何より国力が大きく低下する。
そうなるとたとえ勝ったとしても、最悪国に処罰されてしまう恐れがある。
だから双方の領主は王都に使者を立てた。
正義は我にありと。
で、その使者が同じ日に王城にやって来て、全く同じ内容を口走ったのだからさぁ大変。
互いが互いを嘘つき呼ばわりし、今にも取っ組み合いの大喧嘩をしかねない状況。
その場にいた城の官僚達もどっちが本当の事を言っているのかと判断しかねて困り果てるも、アンデッドに襲われた事は間違いのない事実。
更にアンデッドは襲い掛かる敵を選ぶなど明らかに知性ある振る舞いをしていた事から到底自然発生のアンデッドとは考えられないと判断された為、絵空事ともいえない状況だった。
さらに面倒な事に、この話を聞きつけた有力な貴族がレキサラン側に協力を申し出たのだ。
目的は宙ぶらりんとなったフェネシア領の統治権とそこから発生する利権を求めて。
すると今度はその貴族と敵対する有力貴族が出てきてカロマナに協力を打診する。
そしたらその貴族達が所属する派閥の大貴族達までアイツ等にうまい汁をすわせてたまるものかと首を突っ込んできた。
子供の喧嘩に大人どころか祖父が乗り込んできたようなものである。
こうして一地方の領主達の争いは、国を巻き込んだ大騒動に発展していったのであった。
と、フェネシアの町を包囲していた事情通の騎士達が話しているのをこっそり聞いたわけです。
「いやホント凄い事になっちゃったよ」
「二か月も双方が動かなかったのは、そんな大事になっていたからだったんですね」
これにはさすがのアドルネルもびっくりだ。
「人間の欲深さとはこれほどだったんですね。紙と授業からではわからない事があるんですね」
そんな事情もあって、既にフェネシアの町はただの障害物扱い。
敵は完全にお互いの軍勢にロックオンされていてアンデッドへの危機感はどこにいったのやら。
「まぁそもそも話題のアンデッドが何処にも見つからない時点で、標的は人間同士になるんだけどね」
と、現場を確認した私達は新しく作ったアジトに戻る。
「まさか事件の発端になったアンデッドが、町の地下に潜んでいるとは誰も思わないよねぇ」
そう、私達は地下に潜んでいた。
けれどそれは領主の館から町の外に伸びていた隠し通路ではなく、新たに作ったアンデッド達の日中の避難場所だ。
この地下空間を作るよう指揮したのはアドルネルだ。
彼女はアンデッド達が人間に見つからないよう、日中の隠れ場所を町の地下に作るべきだと提案してきたんだ。
幸いアンデッドはどれだけ働いても疲れないから、昼夜を問わず町の地下を開発し続けた。
もうとっくに死んでいるから、工事中に崩落が起きても掘り起こせばなんとかなるしね。
その結果、町の地下には地下5階のダンジョンとでもいうべき広大な地下空間が出来上がったのである!
これで私も一国一城ならぬ一国一ダンジョンの主だよ!
「けど思った以上に頑丈でびっくりだよ」
だって私もアドルネルも建築に関しては素人だからね。
「その辺りは屋敷の書庫に建築に関わる本がありましたので、それらを参考にさせてもらいました」
貰いましたって、この子多才過ぎない?
そしてそんな子を虐げて閉じ込めていた領主は無能すぎでしょ。
「このまま人間同士で戦ってもらい、私達は夜に美味しい所を攫っていきましょう。あの数となるとまずは人間同士で十分に減らしあって貰わないと」
「そうだね。新しい眷属を増やしたけど、さすがに国中の戦力が集まってる状況で第三勢力として出てもあっという間に潰されちゃうよ」
「実際には領地の守りや諸外国を威嚇する為の必要最低限の戦力を残していますから全戦力ではありませんけどね。それでも国内の争いとしては相当の戦力ですが」
ホント、一体何万人の人がここに集まってるんだろうね。
もしかしたら何十万人?
「ここまで大事になると王家の威信などあったものではありませんね。国王陛下も頭が痛い事でしょう。ああでも、ここまで制御不能な大事になったのなら、当然王家の血を引く方々も参加していますか。王家を無視されたのではなく、王家も関わっていたとメンツを保つために」
なんか王家も大変そうだね。
そんな風に話をしていると、天井からズズズと強い振動が響いてくる。
「戦いが始まったようですね」
おお、遂に始まったかー。
「戦いに大きな変化が起きた時には各所に設置した覗き穴に待機しているアンデッド達から報告があるでしょうから、私達は今のうちにしっかり休んでおきましょう」
「そうだね」
「では今日も一緒に寝ましょうねお姉様」
と、アドルネルがウッキウキで寝間着に着替え始める。
「それはいいんだけど、棺桶の中って息苦しかったりしない?」
アドルネルは人間だから普通にベッドで寝た方が良いと思うんだけど。
「いいえ、お姉様を身近に感じられる方がぐっすり眠れますので!」
はぁ、そうですか。
「んじゃ後のことはよろしくねミイラ一号君」
「グッ」
寝ている間の護衛と対応をミイラ一号君に任せると、彼は任せろとばかりに親指を立ててサムズアップを見せる。
「じゃ、おやすみー」
「おやすみなさいお姉様」
さぁ、夜になったら戦況はどうなってることやら。
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