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転生コウモリちゃんは吸血姫になりました~領地を広げて死者(私)の楽園を作りますね!~  作者: 十一屋 翠
第2章 領地タワーディフェンス編

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第23話 戦争の準備、生き残りは語る

 あれから両軍は壊滅的な打撃を受けてほうほうのていで逃げ帰った。

 いや、正しくは逃げ帰らせた。


「お疲れ様です、お姉様」


 日が昇る前に私達も撤退し、今は領主の館の隠し通路に潜んでいた。

 うん、アンデッド皆が詰まってるからキツキツだぁ。


「ただいま。アドルネルもアンデッド達の指揮凄かったよ」


 そうなのだ、実はこの戦いで騎士団以外のアンデッドの指揮はアドルネルが執っていたのである。

 数日前に町からの撤退を提案された私は、更に彼女が立案した作戦を聞いてアドルネルにアンデッドの指揮を任せる事にしたのだ。


「ウルちゃんズのタイミングはホント助かったよ。危うく予定の数を減らす前に逃げられるところだったもん」


「いえいえ、お姉様が騎士のアンデッドを上手く暴れさせてくれたおかげです」


 なんていうけれど、この子には他人を従える才能があると思うんだよね。

 いくら必要だからと知識を無理やり詰め込まれたからって、それを実際に活用できる人は少ないと思うんだ。

 どれだけ勉強の点数が良くても実際に社会に出たら役に立たない、いわゆる勉強のできるバカと言われる人間は少なくない。


だからこの子には学んだ事を活かすことが出来る応用力があるんだろう。

 うん、前世の私とは大違いだ。

 前世の私は人間関係の運が最悪だったけど、それと同じくらい……とは言わないまでも私自身も出来の良い人間じゃなかったからなぁ。


 いやいや、今の私は文字通り生まれ変わったんだから前世の性能はノーカン。

 人には向き不向きがあるのだ。

 私は物理的な活動が得意で、アドルネルは知的な活動が得意。

 いや違うんだよ、私が無知的って意味じゃなくて……うん、これ以上墓穴を掘るのは止めよう。

 アドルネルは凄い子! それでおっけー!


「という訳でアドルネルは凄い子だねー。えらいぞー」


「何が、という訳なんですか!? あっ、でももっとなでなでしてください」


「うりうりー」


「ほへー」


 と、アドルネルを一通り愛でた後は作戦タイムだ。


「さて、それじゃ今後の作戦だけど、どうするの?」


「はい、もうこの町がアンデッドに支配された事はバレています。ですから戦力を増やすことが急務です。その為にわざと騎士団を逃し、こちらを攻めるには十分な戦力を集めてからでないと危険だと体感させたのですから」


 そうなのだ。今回の作戦では騎士達をわざと逃す事があらかじめ決まっていた。

 目的は敵の数を減らす事と、私達の強さを相手に思い知らせること。

 これによって敵がこちらを恐れて十分な戦力を集める為に時間をかけさせるのが目的だ。

 その間に私達も戦力を増やしたり、防衛のための準備をするのである。


 とはいえ、相手が準備する戦力次第では防衛どころじゃなくなっちゃうけどね。

 まぁその場合はアドルネルとミイラ一号君を連れて空から逃げればいいだけか。

 眷属はまた増やせばいいし。


「ところで戦力ってどうやって増やすの? 流石にこの町がこんな状況じゃ旅人は来ないだろうし、そもそも領主が行かせないでしょ」


 前世の世界でも戦争が起きてるところには国が渡航制限とかしてたからね。


「はい、ですからお姉様には兵種を増やしてもらうつもりです」


「兵種?」


 何それ?


「戦争で戦うのは歩兵だけではありません。槍兵、騎兵、魔法兵、それに補給部隊や斥候といった様々な役割があります」


 なるほど、だから兵種。


「ですので、お姉様には……」


「ええ!? マジで!?」


 アドルネルの驚くべき提案に、私は驚きの声をあげてしまった。


「私は私で罠の設置や拠点の改造をしたいので、お姉様が新しい兵隊を増やす間アンデッド達の指揮を任せて頂けると助かります」


「うん、そっちは任せたよ!」


「はい!」


 という訳で私達は次の戦いの為の準備に向かうのだった。


 ◆レキサランの騎士◆


「報告を聞こうか」


 わずかな部下を引き連れて領内に戻った私は、不機嫌な顔を隠そうともしない主君の前に立っていた。


「はっ、我々は救援を要請してきたフェネシアの町に向かったのですが、そこでは既にカロマナの騎士団が到着しておりました」


「まぁ当然だな。我々が動く以上強欲なカロマナの連中が動かない理由が無い」


「我々は慌てることなく予定通り安全な陣地を整えてから救助活動を行うつもりだったのですが部下が暗闇に乗じて襲われました。それ故報復として夜襲を行いました」


「それで負けたのか? 仮にも同じ国の騎士団を相手に戦って」


 領主様の目に苛立ちが籠る。

 そしてそんな私を他の家臣達が嬉しそうに笑ってみていた。

 くっ、任務を任せられなかった無能共のくせに! 私と同じ立場に立っていたらお前達だって間違いなく敗走、いやお前達なら間違いなく全滅していたわ!


「れ、連中は我が騎士団の騎士を襲ったのです! 報復は当然のことかと! 何より連中は我々の襲撃で本性をさらけ出しました! わが軍の騎士達が突然アンデッドになって襲ってきたのです!」


「アンデッドに? どういう事だ?」


「分かりません。近くにいた騎士達が突然襲ってきたのです。最初は敵の密偵が変装していたのかと思ったのですが、中身はグールへと変貌した部下でした」


「どういう事だ? カロマナの連中と戦う前にフェネシアの町を襲ったアンデッドの群れにでも襲われたのか?」


 突然部下がアンデッドになったと聞いた領主様がもっと詳しく話せと苛立ちを込めて言う。


「いえ、アンデッドの姿はどこにもありませんでした。更に部下が攫われた時はたいまつの陣を敷いており、近づく者がいたら見張りの誰かが確認できる状態だったのです。どうやって部下を攫いどうやって周囲に仲間がいる状況で部下達をアンデッドにしたのか全く分からないまま戦う事となったのです」


 本当にアレは悪夢のような光景だった。

 現場にいた私にも何が起きたのか分からなかったのだから。


「更に連中は無数のアンデッドを呼び出して我々を襲ってきました。恐らく連中はアンデッドを操る手段を持っており、フェネシアの町を襲ったアンデッドも連中の企みに違いありません。でなければ迅速に出発した我々よりも先にカロマナの騎士団が到着している筈がありません」


 私が話し終えると、領主様は難しい顔で思索に耽る。


「ふむ、確かにカロマナが最初から糸を引いていたのなら、迅速に現場を制圧していた理由になるか」


 そうだ。カロマナの騎士団は調査の為に到着したのではなく、フェネシアの町を襲った直後からずっとあの場に駐留していたのだろう。


「アンデッドを利用して他の貴族の領地を襲う……か。放ってはおけんな」


 ◆カロマナの騎士◆


「ではレキサランがアンデッドを操っていたと?」


 俺はあの土地で起きたおぞましい戦いの一部始終を領主様に報告していた。


「はい。レキサランの騎士団と闘っていた我々の背後から、まるで連中を援護するかのようにアンデッドの群れが襲ってきました。しかもサウザンドウルフの群れまで現れ、何故かウルフ達は我々を襲うでもなく、まるで誰も逃がさない為だけに包囲したと言わんばかりのサウザンドウルフらしくない振舞いを見せたのです」


 事実、我々の知るサウザンドウルフならあの状況下で我々を襲わないという選択肢はあり得ない。

 連中は狡猾だ。

 アンデッド達を無視して傷ついた我々だけを襲った筈だ。それをしなかったということは……


「つまりアンデッド以外に魔物も操っていたという事か?」


「恐らくは。フェネシアの町を襲ったのは間違いなくレキサランの連中が操った魔物です。我々も夜明けになってアンデッド共の動きが鈍らなければ逃げる事も出来ず壊滅していた事でしょう」


 そう考えると本当に恐ろしい状況だった。

 こう言っては何だが、冒険者ギルドのギルド長が独断で冒険者達を向かわせていたのは我々にとっても幸運だった。

 あの者達の戦力が無ければもっと苦戦していた事だろうからな。

 下賤な冒険者も使いようという事か。


「ううむ、それはなんとも由々しき事態だな」


 領主様が悩ましい顔で唸る。

 それはレキサランの連中が邪悪な魔物、それもアンデッドの力などという悍ましいものを使っているからだけではない。

 領主様はこう思っている筈だ。『フェネシアの町を支配したら次は自分の領地が狙われる』と。


「戦うしかあるまい。幸いアンデッドは日中には動かせん。今のうちに周辺の領主達に使いを出し、協力の要請と我々の正当性を主張する。同時に、王都にも同様の声明を行う為に使者を出す。その役目は実際に戦いを経験したお前に任せたいと思う」


「……はっ、お任せを」


 こうして私は汚名を返上する機会を失った。

 仮にこの戦いに勝ったとしても私は戦いに負けた敗戦の将として今後の出世はあり得ないだろう。


「はぁ……」


 閉ざされた栄光に私は嘆息する。

 だが私は知ることになる。王都に逃げた方が良かったと。

 これから起こる凄惨な戦いに参加せずに良かったと幸運をかみしめる事になるとは、今はまだ知る由もなかった。

面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、「楽しい!」などの感想や評価、またはブクマなどをしてくださると作者がとても喜びやる気が出ます。

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