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転生コウモリちゃんは吸血姫になりました~領地を広げて死者(私)の楽園を作りますね!~  作者: 十一屋 翠
第2章 領地タワーディフェンス編

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第18話 救いを求める声(二重の意味で)

◆冒険者ギルド・カロマナ支部(数日前)◆


フィィィィィィン、フィィィィィン

 突然、真っ暗な部屋に不気味な音が鳴り響く。


「うぉっ!? な、なんだ!?」


 突然の異音にカロマナの町の冒険者ギルド支部長アイエンは飛び起きた。


「何の音だこりゃ!?」


 すぐさま灯のマジックアイテムを起動させると、アイエンは音が隣の部屋、ギルド長室からなっていると気づいた。


「おいおい、コイツが鳴ってたのかよ」


 アイエンは音の正体に驚愕する。

 それは本来起動するはずのない物、いや起動してほしくない物だったからだ。


「緊急通信用のマジックアイテム、何かヤバい事が起きたって事かよ」


 このマジックアイテムはかなり遠い距離とも連絡が取れる便利なものだが、使用するには大量の魔力をチャージしておく必要がある為、めったなことでは使う事を許されていない。

 くだらない要件で使った事が発覚したらそれこそ罰則モノだからだ。

 それゆえ、これが使われたということは支部が壊滅的な危機を受けているときということになる。


 アイエンは嫌な予感を確定したものと覚悟して操作する。


『こちらフェネシア支部! 緊急事態だ! 町がアンデッドに襲われている! 救援を頼む! 誰か答えてくれ! 誰か!』


「こちらカロマナ支部。何が起きた? 敵の規模は? どのくらい耐えられる?」


『アイエンかっ!? 分からん! 突然街中にアンデッドが現れたんだ! アンデッドはどんどん増えていって手が付けられん!』


「街中に!? 壁を破られたのか!?」


 壁を破られたなら最悪だ。敵には分厚い壁を破壊できる程強力な攻撃手段があるという事なのだから。

 そして穴が開いたのなら、そこから敵が次々に侵入してくる。

 他の町からの増援が到着する頃には壊滅している可能性が高い。


『違う! 壁は破られていない! 突然町の中に現れたんだ!』


「なんだと!?」


(壁を破壊せずに出現した? 下水道? いやフェネシアの町に王都のような下水道施設はない。ならどこから現れた?)


『頼む! すぐに救援を!』


「っ! 分かった! すぐに救援を送る! とにかくお前もどこかに立てこもって生き延びろ!」


 切実な叫びにすぐに我に返ったアイエンは、装置越しの相手に励ましの言葉を送る。

 どれだけ持つか分からないが、助けを送らないという選択肢はない。その為の緊急通信用のマジックアイテムなのだから。


「わ、分かった、何とかう、うわぁぁぁぁぁっ!!」


 通信装置からバキン、ガタンという何かを壊す音、そして大勢の足音が響き悲鳴が消えてゆく。


「おい! おい! どうした!?」


 どうしたもこうしたもない。敵に襲われ命を失ったのだ。

 ただ、その事実を認めたくなかっただけだ。


「くっ!」


 やるせなさに唇を噛みながらアイエンはすぐに部屋を出る。


「緊急事態だ! すぐに冒険者を集めろ!」


 深夜でも冒険者ギルドに人は居る。

 今回の様な緊急事態の時にすぐに人を集めることが出来るように夜番が待機しているのだ。


 部下に指示を出したアイエンはすぐに領主の館に向かう。

 事が事だけに領主にも報告の義務があるからだ。


「あの領主のことだ、フェネシアの領主に貸しを作ろうと騎士団の出立を遅らせるだろうな。最悪俺達の動きを妨害しかねん」


 寧ろ確実にやってくるだろうという確信があって、アイエンは自分が戻って来る前に連絡の取れた冒険者達をすぐさま先遣隊として個別に出発させるよう指示を出していた。


 だがそこまでやってもアイエンの心は晴れなかった。

 この町からフェネシアの町まではどんなに早くても二日はかかる。

 更に十分な数の戦力を集めようとすればさらに時間がかかる。


「頼むから無事でいてくれよ……」


 アイエンは胸の内に広がる嫌な予感を振り払おうと同胞の無事を願う。

 だが、無情にもその願いが叶うことはなかったのだった。


 ◆


 町を支配した私は一人で領主の館を見て回っていた。

 というのもいつもそばに居たがるアドルネルは頑張って夜に起きようとしてくれていたんだけれど、元々規則正しい生活をしていた影響もあって我慢できずに眠ってしまったのだ。


 まぁこれはこれで楽しい。

 隠し棚に不正の証拠である二重帳簿が隠されていたり、不自然に物で隠された地下室に飾られたお宝など、ちょっとした宝探し気分だったからね。

 でも私にはなんとなくそういう場所が理解できたのだ。

 なんていうんだろうね、そこにモヤモヤとした何か淀んだものを感じ取ったからだ。

 吸血鬼は物理的な肉体よりも魔力が体の構成要素を占めているらしいから、何か目以外の感覚で隠されたものを感じ取っているのかもしれない。


「おっ、書庫発見」


 今度は結構な広さの書庫を見つけた私はさっそく本を物色してみる。


「歴史の本が多いなぁ。あとは戦争関連の本、あっ、魔法や魔物に関する本もある」


 本は新しいものもあれば古いものもあり、長い時間をかけて集められた事が分かる。


「歴代の領主達が集めたのかな?」


 戦争や武術に関する本は扱いが悪かったのかボロボロな本が多く、逆に歴史や文化に関して書かれた本は綺麗だけど何度も読み込まれた痕跡があった。

 きっとその時代によって領主が好む本の種類が違ったんだろうね。


「でもボロボロの本にもホッコリした感じがするから、これはこれで持ち主のお気に入りだったのかもね」


 本が好きな人から見たら絶許案件な感じのボロボロ具合だけど。


「あっ、絵本もある」


 書庫の入り口付近にある棚の下段には、子供の為に用意したであろう絵本が置いてあった。

 子供が読んでいただけあって、本は結構傷んでいるね。

 きっと元気な子供達が親やメイドさんに読んで貰うためにブンブン振り回して持ち歩いたんだろうな。


「でもきっとアドルネルはこの本を一度も読んで貰った事が無いんだろうね」


 それどころかあの子の境遇を考えれば、こんな本がある事すら知らなかったんじゃないかな。


「……他の本を見よっと」


 私は魔物について書かれた本を手に取る。

 そこには私が知らない魔物がたくさん書かれていて、どんな生態をしているのか、どれくらい強いのか、弱点はどこかなどが事細かに書かれていた。

 おおこれは便利だね。今後の役に立ちそう。


「あっ、お父様の本だ」


 そんな中に、大呪海の吸血大公と書かれた一冊があった。


「どれどれ」


 本を開くと、人間達がお父様とどんな戦いが繰り広げられてきたのかが描かれていた。


――ある時森の奥地に城を見つけたという者が現れた――

――人々はそれをなにかの見間違いと笑ったが、何度も目撃の報告が上がった事で調査を行う事になった――

――かくして森の奥の城は発見され、同時にそこに住む恐ろしい吸血鬼の存在も世に知られる事となった――

――吸血鬼はこの世に6体しかいないとされる頂点、最強の吸血鬼『真祖』。名をヴォイラード・クロムシェル――

――国は恐るべき吸血鬼を討伐すべく騎士団を派遣したが、誰一人として帰る事は無かった――

――国は国威をかけて吸血鬼討伐を決意し、近隣国、そして教会の力も借りて吸血鬼討伐に挑んだ――

――結果は人間側の全滅だった――

――その晩、国は滅んだ。吸血鬼の報復によって――

――その後何度も新しい国が興っては領土拡大と森の豊富な資源を狙って吸血鬼に挑むも、一度たりとも吸血鬼を退ける事は出来ずに滅んでいった――

――いつしか吸血鬼の住む森は大呪海と呼ばれるようになり、吸血鬼は名で呼ばれる事すら畏れられ吸血大公の二つ名で知られるようになった――


本に書かれていたのはだいたいこんな内容だった。


「っていうか、私のお父様強すぎ!」


 何これ、この本に書かれている事が本当なら、お父様って国を何個も滅ぼしてるって事!? 強すぎない? しかも複数の国が連合を組んで襲った事もあるって書いてあるし。

 それを退けたってヤバ過ぎでしょ。だって大雑把に見積もっても数十万対数百の超大差だよ。

 普通に考えて勝てるとは思えない圧倒的な数の暴力だ。


「それに勝つって、真祖ってどんだけ強いの?」


 今更ながらに自分の父親の強さにビックリしてしまう。


「人間の本に負けたって書かれてるって事は、見栄を張って数字を盛ったとかもないだろうし、本当に起きた事だろうしねぇ」


 うーん、とんでもない事実を知ってしまった。


「私も修行を積めばここまでとは言わないまでも、一国を相手に真っ向から戦って勝てるようになるのかな?」


 うーむ、吸血鬼の道は険しいなぁ。


「他に面白い本はないかな~、お?」


 タイトルを流し見しながら書庫を歩いていた私は、ふと本棚の中に違和感を発見する。


「なんだろコレ?」


 棚に納められた本の奥に、隠し棚を感じ取った時と同じように何かが隠されているのを感じたのだ。


「これは、本? タイトルは……呪いと災厄?」


 いかにも不吉そうなタイトルの本が隠されていた事に興味を持った私は本を開く。


「なんでわざわざ隠されていたんだろう?」


 本の内容はタイトルの通り、呪いやそれによる被害について書かれたものだったが、あるページを開いた事で私はこの本が何故隠されていたのかを察する。


「呪紫眼……」


 そこには呪紫眼についてかかれた項目があった。


「呪紫眼、それは呪われた者に発現する紫の瞳。この眼を持つ者の周りではよくない事が起こると言われており忌み嫌われている。また呪紫眼の人間には凶悪な犯罪を行う者が多く、それも忌避される原因とされている」


 成程ねぇ。良くない事が起こるから皆に嫌われていると。


「でも凶悪な犯罪? アドルネルはそんなことする子には見えなかったけど」


 そもそも本当に凶悪犯罪を行うような人間ばかりなら、とっくの昔に自分を虐げる父親をぶっ殺して逃げ出していたんじゃないかな?


「それによくない事っていうのもなんかあいまいだなぁ。何か特別こういう事が起きたとか書いてないし、本当に呪紫眼が関係してるか怪しいぞ」


 呪紫眼って本当に不吉なの?

 私はページをめくって呪紫眼に関する内容を確認してゆく。


「水不足、不作、魔物の発生、嵐、大雪……普通に自然現象じゃん。魔物の発生も単純に食べ物が不足して人里に現れただけだろうし……呪いとかそういうの全然ないな」


 寧ろこれを読んだら領主も所詮は噂って切り捨てるもんじゃないの?


「分からん、何でアドルネルが虐げられたんだろう?」


 可能性としては彼女の血の信じられない美味しさだけど、それも吸血鬼にとってのメリットしかない訳で。血を狙って吸血鬼が攻めて来るとかなら立地的に恐れても分かるけど、そんな事書かれてないしなぁ。


「んー、やっぱただの迷信かな?」


 結局他に情報もなかったので、私は本を元の場所に戻す。

 アドルネルに見つかって嫌な気分になるだけだしね。


「さーて、それじゃ町の方を見に行こうかな。生き残りは居ないと思うけど万が一もあるし」


 などと気楽に町の散策を楽しんでいた私だったけれど、町の端まで行ってとある大ポカをやらかしていた事に気付いてしまった。


「あっ、町の門開けっぱなしだった」


 そう、町を攻めた時に開けられた門をそのままにしてしまっていたのだ。


「ええと……もしかして、町の中、見られた……?」


 生きている人間が誰も居ない無人の町を、そこら中が血まみれの町を見られた?


「い、いやいや、アンデッドは日中暗いところに隠れてただろうし、見たのは誰も居ない街だからってそれでもヤバイよね!」


 くっ、あの日の夜は危うく焼け死にそうになってたからすっかり門を閉める事を忘れていたよ!


「で、でも街道沿いの人間は町を攻める戦力にする為に全員襲ったから、多分まだ誰も町には来てないよね! きっと大丈夫だよね!」


 言うまでもないが、この大ポカが予想外の大騒動に繋がるのだった……

面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、「楽しい!」などの感想や評価、またはブクマなどをしてくださると作者がとても喜びやる気が出ます。

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