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魔法使い2


初めて人を殺したのは、訓練を始めて二年目の春だった。

草花が芽吹き始めたある暖かな日、師匠に連れられて行った戦場で火魔法を使うように命令された。訓練で染み付いた動き通り反射的に放った魔法は、師匠が指差した先にいた兵の一団を包み込んだ。複数の人影が炎に包まれ、もがきながら地面に崩れ落ちるのが遠目にも確認できた。自分の魔法のもたらした結果に、目を見開いて硬直した。そんな私に、師匠は静かにこう告げた。


「より強力な魔法を使えるようになれば、苦しませずに楽にしてやれる」


次の瞬間に師匠が放った魔法で、残りの兵はもがく間も無く灰になった。

私はその日から、より熱心に訓練に励むようになった。



いつの頃からか、私は一対一で師匠から魔法を教わるようになっていた。他の弟子より見込みがあるからと。


師匠は戦場で必要になる、ありとあらゆることを教えてくれた。効率的な魔法の組み立て方。展開方法。突発的な事態が起きた時の立て直し方。治癒魔法。格闘戦。狩に野宿。それから人との関わり方まで。

実戦に参加しながら。


私は師匠が好きだった。

私を戦場に連れて行き、敵を殺せと命ずるような人だったけれど。でもそれは、師匠がやりたくてやっているのではないとわかっていたから。師匠も別の人間に命令されていると知っていたから。


師匠は真面目であまり笑わない人だった。けれど子どもの私にも真摯に向き合ってくれた。私のことを気にかけてくれていた。

そんな師匠が好きだった。



けれどある日、一緒に出かけた戦場で師匠は死んでしまった。敵の魔法使いの攻撃から私を庇って。


「あなたは私の自慢の弟子です。生き延びなさい」


それが師匠の最後の言葉だった。

師匠は笑ってこと切れた。

敵の魔法使いは、師匠が相打ちで放った魔法で死んだ。

遺品とともに帰ると、貴族はそれを丁重に葬ってくれた。



師匠が死んでも、私が戦わなくてよくなる訳ではなかった。

ただしばらくは、偵察などの任務を任された。子どもの私を一人で戦わせるのはまだ早いと配慮してくれたのだろう。


偵察の基礎は師匠から教わっていたけれど、ヒヤリとすることも多かった。しかし子どもだということが幸いしてか、何とか切り抜けられた。

……もしかしたら、気づいて見逃してくれた敵兵や民間人もいたのかもしれない。まだほんの子どもだからと……



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