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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第六章 新たな課題

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91.村か?ここ

 村に着いた途端、小竜はリンクから離れて何処かへ行ってしまった。だが、リンクはその事を全く気にかけてはいない。


「逃げちゃったよ?いいの?」


 アリスが心配そうに俺に尋ねてくる。


「そうだな、でも俺に聞かれてもな……」


 アリスは俺が何でも知っているとでも思っているようだ。


 リンクは俺達の会話を聞きながら軽く笑いを浮かべこう言った。


「ああ、小竜は自分たちの住処すみかがあって必要な時に呼べば来るのだよ」


「へえ、よく馴れているのね」


 去り行く小竜を目で追いながら、アリスは頷きながら腕を組みなおした。


「ヴィーラは小竜を助け、また小竜もヴィーラを助ける。慣れているというより持ちつ持たれつの関係だな」


 リンクは満足げに答える。そして、改めて村を見るとその活気ある姿が目に飛び込んでくる。


 並んだ石造りの建物や、舗装された道路。洒落た服を着て買い物やデートを楽しむヴィーラ達。


「すごいねここ、サンプールの街と変わらないわ」


 こんな隠された土地にヴィーラ族の村民たちは、全く普通に生活をしているのだ。


 小竜との関係性もさることながら、これだけの村を誰にも判らない様に隠蔽することが出来るヴィーラの魔法に俺は大いに感心した。


「見事なものだな、これは隠蔽魔法か?こんな所に村があるとは誰にも分かるまい」


「ああ、我が一族ヴィーラが最も得意とするのが隠蔽魔法だからな……と言いたい所だがこれは隠蔽魔法ではない」


 リンクの発言に俺達は「ん?」と首を傾げる。隠蔽魔法ではないとすればここは何処だ?そう思った時、俺達は何処からともなく飛び出してきたヴィーラの男たちに取り囲まれた。


 それらは戦士風で表情も険しくそれぞれが剣を握りしめていて、どう見ても俺達を歓迎している様には見えない。


「●♯!ぁwせdr◑♪◈♨*☆」


 取り囲んだヴィーラの一人が、俺達が理解のできない言葉をリンクに向けた。


「◈♨*☆△zワ〇…vぺけ×!」


 リンクが同様な言語を発する。


「あの人達、なんて言っているのレア……」


 アリスは震える声で俺に問いかける。俺の腕にしがみついた手にはジワリと汗がにじむ。


 リンクも同じような言語で対応している。どうやらヴィーラ独特の言語らしい。


 リンクと戦士風の男の一人とのやり取りはしばらく続き、その間も他の戦士風の男たちは警戒を緩めない。


(リンクは俺達と同じ言葉で話をしていた。俺達には会話を聞かれたくないって事か)


 だが俺は自動翻訳を発動させており、途中からの会話の内容はなんとなく理解できている。どうやら俺達は相当警戒されている。


「大丈夫なのかな?私達捕まったりはしない?人族と関わらないって言っていたし……」


 戦士風の男の険しい表情を見て不安そうにアリスは尋ねて来るが、どうやら彼らは俺達を追い出そうとはしているものの、捕まえようとする気配はない。


「ああ、リンクが説明をしてくれているので大丈夫だろう」


 暫くすると状況を理解したのかリンクの言葉にヴィーラ達の険しい表情は和らぎ、すぐさまあちこちへ散っていった。周りに居るヴィーラの村民たちも立ち止まってはその様子を見ていたが、戦士風のヴィーラ達が去った事で何事も無かったかのように通常運行へと戻った。


「すまない。よそ者は警戒されるのだ」


 リンクは申し訳なさそうに頭を下げるが、見知らぬものが村に入ってきたのだ、警戒するのは当たり前の話である。


「心配するな、他人を警戒するのは当然の事だと思うぞ。それよりもここは良い村だな。設備も充実し、人には活気がある。良い村の象徴だ」


 俺のその言葉にリンクはホッとしたのか、笑みがこぼれる。


 緊張から解放され、再び周囲を見る余裕ができた俺達はゆっくりと歩き出した。


 俺とアリスは村の雰囲気をじっくり味わいながら周りに目を凝らしていると、所狭しと女性と子供が群がっている。


 そこにあるのは真っ赤な屋根の洒落た小さなお店だった。


 俺がその店をじっと見つめていると、「なになに?」とアリスもそちらへ目を向ける。


「あっ、お花かと思ったら全部飴ちゃんだよ。あれ、お菓子屋さんだね。ねえ、私も買ってきていい?」


 道路を挟んだ向かい側にあるお店を見てアリスは目を輝かす。ここからでもわかるくらい店頭に溢れんばかりの色々な棒付き飴が立ち並び、まるで花畑の様な雰囲気を醸し出している。


「行っておいで、と言いたい所だがここの通貨と俺達のものは違うんじゃないか?」


 アリスの表情が突如として曇り、首が落ちそうなほどにガクッと項垂れる。


「確かにそうだわ。ここって、サンプールに似ているけど全く違う村なのよね……」


 アリスが黙ってトボトボと歩き出すと、リンクは腰に付けた小さな袋からコインを取り出した。


「これで好きなものを買ってくればいい」


 それを見てアリスは思わず両手を握りしめ、胸の前で小さく跳ねた。


「ほんと?これ、使ってもいいの?」


 声が一段高く、弾んで響いた。コインを受け取ったアリスはすぐさま髪をなびかせながらお店の方へ走って行った。


「ふふふ、まるで子供の様だな。ところでリンク、言葉は通じるのか?」


 俺は先程のリンク達の会話を思い出した。あの言葉で話されたらさぞかしアリスは困るだろう。


「ああ大丈夫だ、最初に会った警備の者は君たちに通じない様、旧語で話をしたのだ」


 リンクはアリスを目で追いながらそう答える。そして、アリスは俺の心配を他所に飴を三本手に持って半ばスキップと言えるような足取りで帰ってきた。


「はい、買えたよ。有難うリンクさん、一緒に食べましょう」


 嬉しそうにアリスは手に持つ飴を一本ずつ俺達の前に差し出した。


 飴を受け取ったリンクの口元が緩み、自然に笑みがこぼれる。そして俺達の目を見てこう語った。


「ここに来て貰ったのは村を見てもらう為だけではないのだ。実はあって頂きたい人が居る。どうかこの村のおさに会っては貰えないか」

いつも読んで下さりありがとうございます。

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