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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第五章 混沌を引き起こす者

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79.後始末 

「これでブラックシューズは事実上崩壊だな、誰か俺に逆らいたい奴は居るか?希望が有るなら相手になってやるぞ。今ならファントム・ゾーンの宿泊付きだ」


 レアがそう言うと、護衛達は正座をしながら「滅相もございません」と大きく首を振る。エルザは呆然とその様子を見ている。


「なんと言いますか……俺達はボスに脅されて仕方なく……本当はこんな事したくなかったんです」


 全く怪しいものである。多少の事実は有るかもしれないが、こいつらの処遇はこの国に任せるとしよう。それに3階の生命力の弱い人たちも気になるしな。


「エルザ、取り敢えずここの奴らは拘束をしてその処遇はこの国に任せよう」


 レアはそう言って亜空間ボックスから縄を取り出し、護衛達を縛り上げた。


 だが、エルザは護衛達にはそっちのけでレアの袖を引き興奮気味に食って掛かる。


「ちょっと、あの板みたいなのは何?あのボスは何処に行ったのよ。それに、惑星イメルダとかなんとか。お母さんが言っていたけど、あんた本当に異星人だったの?お母さんのほら吹きだと思っていたわよ」


 エルザは普段物怖じしない感じだが、流石にこれらに関しては驚いたらしい。


「ああ、あれはファントム・ゾーンと言って、犯罪者を閉じ込めておく牢屋みたいなものだ。俺は騎士団の指揮官として犯罪者を拘束できる権利を持っているんだ」


 パトリツィオ程の力を持った奴をこの星で拘束することはまず不可能である。レアの見解では何処に閉じ込めてもここの弱い建築物では力ずくで抜け出し、それを止められる者はこの星にはきっと居ない。ああいう奴はファントム・ゾーンで拘束するのが惑星イメルダでは一般的な方法であった。


 それを延々とレアはエルザに説明したのだが……


「うん、さっぱり言っている事が分かんないんだけど、まあ、いいわ。助けてくれてありがとっ。来てくれるって分かっていたから全然怖くはなかったよ」


 食いついて聞いてきた割にエルザはあっさりとその話に飽きてしまった様で、適当に話を切り上げ投げキッスをしながらニコリと微笑んだ。


 調子の良い事ばかり言ってやがる。先程まで、人形のように固まっていたくせに……


 レアは苦笑しながら椅子に腰を掛けたままだったエルザに手を差し出した。


「さあ、お嬢さん。お母さん(ロッシ)が心配しているから帰りますよ」


 そう言えば、ファントム・ゾーンに閉じ込める前、パトリツィオは「こんな星……」と叫んでいた。この星の原住民は他星との交流がないし、この星を出る技術も無い。そんな中、星単位で物事を考える奴は異星人と考えるのが妥当だ。


 やたら地球っぽい物が入り込んでいたのは、奴が一度地球を訪れた事が有るか、若しくは他の人間から見聞きしたことが有るものを部下に伝授したのだろう。


 少々無理やり感はあるものの、そう考えると納得がいく。まあ、ここに地球の知識があった所で対して何も変わるまい。パトリツィオがもしかして持っていたかもしれない宇宙船に関しては……まあ、いいか。どうせ大量魔物の暴走(スタンピート)の時に高文明な星に行く予定だ。それまでこの星に付き合ってやろう。


 レアがそのような事を考えていると、ふと部屋の隅でスヤスヤ眠っているファングタイガーに目が行った。


 ふふふ、警戒心ゼロだなこいつは。こいつも解放してやるか。


 レアがファングタイガーの元へ行こうとすると、それに気付いたエルザが猛ダッシュで追い越して行った。


 本来ファングタイガーは凶暴な魔物だ。こうやって眠っている間にエルザは始末してしまおうと考えているかもしれない。


「ちょ、ちょっと待て、その魔物を殺さないでくれ」


 焦ったレアはエルザに向かってそう叫んだ。


 所がエルザは「え?何であたしが殺さなきゃならないの?」とか言いながらファングタイガーの頭を撫でだしたのだ。


「可愛いわね。あなた、あたしに飼われたいでしょ?」


 相変わらず強引な奴である。そう言えば初めてエルザと会った時も「友達から始めましょう」とか好きな事を言っていたっけ。


 片目を開けたファングタイガーは少し口を歪め、一滴の汗をたらりと流した様に見えた。でも、よく見ると微妙に尻尾を振っている。


 エルザが強者と判っているのだろう、完全に服従の姿勢だ。だが、ブラックシューズに隷属させられていた時とは明らかに違う。非常に穏やかで見た感じ渋々感も少なく見える。


「その態度は了解という事よね、じゃあ、名前を付けてあげるわ。トラッキー「ダメだ、ダメだ、理由は判らんがその名前はダメな奴だ」」


「どうしてよ」


 いきなりレアから否定されたエルザは頬を膨らませた。


「なんでもだ。商標権に引っかかるかもしれんし、それにそいつの色は浅黒くて、とても虎には見えんだろうが」


「え?虎ってなによ?それに意味わかんない」


……そうだった。この星には虎は居ないのだ。


「と、兎に角他の名前にしてくれ」


「仕方がないわね。じゃあ、ブチコ」


……ブチコって……どう見ても黒一色だろうが。


「嘘よ、ベティにするわ。今日からあなたはベティよ」


 黒くて大きくて本来凶暴な魔物にベティ……そもそもメスなのか?


「何よ、何か文句あるの?ほら、こんなに尻尾を振ってベティも喜んでいるじゃないの」


 確かに魔物は嬉しそうに尻尾を振り回している。


 もはやここにはエルザに逆らえる者など一人も居ないのであった。


  ◇ ◇ ◇


 レアとエルザはベティと一緒にやはり3階に拘束されていた女性と子供を開放した。軟禁部屋の前に居た見張りの男は、僅かに抵抗の姿勢を見せたが、パトリツィオが拘束された事を伝えるとあっさり降伏した。


 他国に売られると思っていた攫われた人達は、涙ながらに喜び合った。


 本当に間に合って良かったと思う。


 エルザから連絡を受けて暫くたってから到着した城の兵士に、ブラックシューズの残党と攫われた人達を引き渡し、レアとエルザはミラージュの所へ向かう事にした。勿論ベティも一緒に。


「さあ、大量魔物の暴走(スタンピート)の対策を考えないとね。でも、その前に武術大会だね」


 武術大会の事等すっかり忘れていた。そこでロッシの武具をアピールしなければいけないのだったな。それになにやら精鋭部隊を構成するって?アリスも大変だな。


「あんたも頑張るのよ。レア」


 人任せにするつもりだったが、すっかり当てにされていた。


「ははは、じゃあ、ミラージュの所へ行こう」


「おい、笑って誤魔化すんじゃないのよ」


 コツンと突いてくるエルザにレアは苦笑した。


いつも読んで下さりありがとうございます。これで第5章の完結です。第6章開始までしばらく時間を頂きます。

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