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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第五章 混沌を引き起こす者

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71.さて、どうするかな

 浮空術を遣えば10キロメートル等あっという間。ほんの10分ほどで目的とする建物が見えてきた。実に違和感がある、森の真ん中に6階建ての大きなビルディングだ。隠そうとしているのかそうでないかもよく分からない。


 成程、組織のアジトだけあってデカいな、こんな森の中にビルとはどんな趣味をしているのだ一体。


 趣味の悪さに呆れながらレアは空間認識魔法の精度を上げた。


 ざっと見た所建物の中には人間は50人程、エルザを攫ったやつは別にしてだいたい生命力は600位の奴らが揃っている。生命力がこのくらい有るなら、この星の人間にとっては確かに厄介な相手達かもしれない。冒険者ワーカーでさえ手に余る、民間人ならなおの事、従わざるを得ない訳だ。


 その中でも飛びぬけて生命量の高い奴も2,3人居るが、まあ、たいしたことは無い。俺にとっては雑魚だ。


 して、エルザはと……丁度建物の5階にいるな。


 さて、問題はどうやってエルザを救出するかだが……


 レアは空中で趣味の悪いビルディングを眺めながら頭をひねる。


 例えば、来客を装い門番に挨拶をして入れて貰う……疑われて入れてくれないだろうから戦闘になり、きっと警戒した奴らにエルザを人質にされる。うん、却下だ。


 門番に言って組織に入れてくれと懇願する……うーん、中でゲルダに出会えば俺を敵とみなすだろうからそこでも戦闘になるな。却下だ。


 道に迷ったふりをして門番に話しかけるのはどうだ。帰り道を教えてくれるかどうかも分からないが、仮に教えて貰ったとしてもそれで終わりになりそうだな。却下。


 いっその事、用心棒として雇えと進言してみるってのはどうだ。それならゲルダに出会っても鞍替えだとか言って誤魔化せるかもしれない。


 ……何かと面倒だな。


 もういっその事建物を破壊して救出してしまうか。


 とかなんとか考えながらレアはアジトの入口近くへ降り立った。ビルなので門や塀などはなく大きなスライド式扉だ。予想外に門番っぽい奴も居ない。……と思いきや、入口の前に立っていると二人のガラの悪そうな男がレアの前にやって来た。


 ガラは悪そうだがショボいな、生命力はたったの500程度だ。


「この建物に何か用なのか?」


 サングラスをかけた男がドスの利いた声でレアに凄んでくる。もう一人の片眼が隠れる様にフェドーラハットを被るもう一人の男は直ぐにレアの後ろに回る。


「いやあ、こんな所にこんな大きな建物がっていたとは、大変驚いていたんだ」


 二人の男たちはどう見ても怪しげなやからではあるが、そんな事は全く気付かないふりをしながらレアは大層驚くような演技をした。男は物怖じしないレアにまるで異端児を見る様な不快感を示し、チッと舌打ちをした後軽く俺の胸を押した。


「ここはお前のような奴が来る場所じゃねえ、痛い目に会わされたくなければとっとと失せろ」


 後ろから悪党が使うお決まりのセリフを吐くフェドーラハットの男。背後を取っているのでいつでも殺せるアピールなのだろう。何とか揉め事を起こさない様に潜入できる方法はと……


「ちょっと待ってくれ、俺はここがどのような建物かを知らないんだ。道に迷った上にトイレにも行きたくなっただけだ。すまないがトイレを貸してくれないか。これは少ないがチップだ」


 レアがそう言って目の前のサングラスの男に1,000ピネル銀貨を差し出すと、二人の男はレアの身体をポンポンとまさぐった。そして、何もない事を確認するとサングラスの男はクイっと首を傾け「こっちだ」と言って入口の方を示した。


 しめた。どうやら入れてくれるようだ。


 武器を持っていないか確認をしたのだろうが、ククク……まさか亜空間ボックスを持っているとは夢にも思わないだろう。


 レアは思わず出そうになる笑いを押し殺した。


 高いトイレ代になったが、第一関門は突破だな。ふふふ、金にものを言わすとはこういう事を言うのだろうか。


 中に入ると、いかつい奴らがぞろぞろ居るのかと思ったが、以外に人は居ない。その代わりにあちこちに防犯カメラらしきものが設置されている。仮にこの建物に侵入したとしても、死角に入るのは難しそうだ。完全にそれに頼り切っている感じだ。という事は、見つかっている事を前提に行動をしろという事か。


 男たちに気付かれない様、辺りを観察しながらレアは示されたトイレに向かった。


 きっと、モニターの前に居る奴らにとっては、既にチップを渡して入り込んだ俺に気付いているだろうし、サングラスの男がチップを受け取った事も分かっているはずだ。そのうえで誰も俺の所へやってこないのは然程警戒されていないという事だ。身体チェックをしている所も見られていたのだろう。


 逆に言うと、それらの機能を停止させてしまえば、一気にセキュリティが弱くなるという事だ。


 監視カメラの動力は魔石から供給されている。あれほどまで細かく設置されているカメラ一つ一つに魔石が入っているとは思えない。中央にそれらに魔力が供給されているのだろう。つまり、その大本に何らかの障害を加えれば……


 トイレに入ったレアは便座に座りながら魔素感知を試みた。監視カメラに供給されている魔力を逆にたどっていくと、予想通り、二階の中央にある部屋が供給源になっている。


 あれを破壊できればいいわけだが……


 辺りを見渡したが、役に立ちそうなものはない。魔法で動力源を攻撃して破壊してもいいのだが、二階まで届かせて破壊するような魔法となると、かなり派手になってしまう。おまけに建物そのものまで破壊しかねないので、それは却下だ。


 レアはある方法を思い出した。何か物を飛ばして物質を破壊する、まあいわゆる投石で、それはこの星に着いた時にサーベルウルフを狩った方法だ。この星の物は脆い。自然にある岩や木もそうだが、作られたものも脆い、俺がその気になって突くだけで簡単に穴が開くほどなのだ。


 この星に散らばっている石を使っても目的に届く前に砕け散ってしまうだろうが、幸いレアの亜空間ボックスには小石大位のミスリル鉱石が幾らか入っている。ただし、トイレの中まで監視できるカメラが天井には備え付けられている。絶対に亜空間ボックスから物を取り出すところを見られるわけにはいかない。


 レアは先ず弱い電気魔法を扇風機の様に首を振っている目の前の監視カメラに放った。


 監視カメラは一瞬スパークを発生させて、その動きを止めた。


いつも読んで下さりありがとうございます。

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