70.救出へ
「なんだ?一体何が起こった?」
ミラージュの屋敷に居るレアは、西の方角で起こった大きな魔力の振幅を感じその方向へ顔を向けた。
「どうしたんだ?レア」
魔力の感知能力のないマイクがキョトンとレアの顔を見つめるが、レアは気にも留めずじっと考え込んでいた。
この星の人間でこれ程までに大きな魔力を出せる奴は、俺の知っている限りではロッシかエルザ位だ。ミラージュも出せそうだが、彼はここに居るし後考えられるのはロバーツだが、奴は既に死んでいる。
あの二人が公の場で強大な魔力を放つとはあまり思えないが、そうせざる得ない程の何かがあったのか……何やら一抹の不安を感じる。
「おい、何やら大きな魔力を感じたが、お前は何か気付いたか?」
奥で血液分析をしていたミラージュが真顔で飛び出してきた。彼も魔力の振幅を感じ取ったのだ。
「ああ、根拠はないが何か嫌な予感がする。これから様子を見に行ってみようと思う」
レアがそう言うと、マイクもスカルサーベルを握りしめて「俺も一緒に……」と言い出した。
だが、今感じた魔力の大きさから考えて今のマイクは明らかに力不足だ。悪いが邪魔にしかならない。
「悪いが、お前はもっとここで力をつけてくれ。すまないが足手纏いだ」
レアの言葉でマイクは言葉を失い、シュンと項垂れた。
辛辣だろうが何だろうが、本音なので仕方がない。それに今の俺の言葉で奮起してくれればなお良いのだがね。
「まあ、気にするな。レアの言っていたように今回の魔力は普通の奴では全く手に負えるものでは無い。まあ、お前さんも既に普通以上だし、まだまだ強くなってきているから心配するな。ここはレアを信じてそのまま精進していろ」
ミラージュはマイクの肩をポンポンと叩いた。マイクは何も言わず自分の弱さをかみしめていたが、ほんの少しだけコクンと頷いた。
さあ、何が起こっている?西の方向へ向かうとしよう。レアは魔力のあった方向へと浮空術を使って飛び出した。
「うわあ、レアが飛んだぞ。非行少年になっちまった」
「おいマイク、そんな低品質でセンスの欠片も無く、品性が疑われるような事を言うんじゃない。益々馬鹿にされるぞ」
「益々って何ですか?そもそも馬鹿になんかされていませんよ!」
憤慨するマイクにミラージュは憐れみの目で見つめていた。そんなこんなと二人が訳の分からない事を言い合っていたが、レアは同類にされたくないので全く聞こえないフリをしてそそくさとその場を去って行った。
◇ ◇ ◇
レアが魔力の振幅を感じた場所に飛んでいくと、海辺の海岸に行きついた。大体あの辺りだったなと目安をつけ上空からその海岸を見下ろしていると一人の女性らしき人物が呆然と突っ立っていた。
こんな誰も居ない様な海岸に独りで何をしている?魔力の出所はあいつか?
まあ、自画自賛なところはあるがどんな相手にでも負けた事のないレアは、この星に居る奴らなんかに警戒する必要など全くない。よって、下手な小細工などせずにストレートにその女性の元へと向かう。
って……え?あいつアリスじゃないか。
「おいアリス。こんな所で、ひとりで何をしているんだ?」
砂浜で呆然と立ちすくみ、涙を流すアリスはレアの声を聞き振り向いたと同時に抱きついてきた。
「え、え、エルザさんが……うっうっ……」
事情がさっぱり分からないレアはアリスの肩をそっと抱いた。
泣きじゃくるアリス。必死になって何かを言おうとするが、言葉にならない。一体どうしたというのだ、エルザがどうした?
「少し落ち着け、エルザがどうしたのだ」
泣きながらもアリスはかくかくしかじかと、事の経緯を俺に話した。
「わかった。ブラックシューズの奴らがエルザを連れて行ったという訳だな。あのエルザを攫うとは相当な腕の持ち主だな」
そう言いながらレアは空間認識魔法を発動させた。勿論エルザの居所を探る為だ。
……居た!生命力18200の人物、エルザに違いない。ここから東に10キロメートルほど行った森の中にあるデカい建物の中にエルザが居る。……なんであんな森に建物なんか有るんだ?
だが、エルザを攫ったというブラックシューズの誰かの生命力は判定でき無い。仮にも彼女を攫ったほどの奴ならエルザよりも高い生命力を示しても良いはずなのに。
レアは頭をひねった。
もしかすると俺と同じで生命力をコントロールできる奴かもしれぬ。
レアは自身よりも高い生命力の奴に会ったことは無いので、過剰な警戒は考えてはいないが、場合によっては彼女を人質に取られかねない状況には有るのは間違いない。
策を講じた方が良さそうだ。
「ねえ、どうなの?エルザさんの居場所は判ったの?生きているの?」
アリスはレアの服を引っ張りながら、必死になって訪ねて来る。レアが横目でその顔をチラッと見ると、真剣な表情にも愛らしさが滲み出る。そんな顔を見てしまうとついうっかり師弟関係を忘れそうになるが……
おっと、いかんいかん、今はそんな不敬な事を考えている場合じゃない。気を取り直して
「ああ、見つけた。今の所無事だ。(生命力が感知できたからな)これから助けに行ってくる」
「私も行く!」
そうくると思った。
「いや、ダメだ。悪いが足手纏いだ。いくらお前が強くなったとしてもエルザを攫う程の奴らだ。そういう奴らが複数人いた場合、お前たち二人ともが人質にされてしまう可能性もある。それよりもこの事をロッシに知らせてくれ。彼女程の魔術師なら、遠隔で何かサポートをしてくれるだろう」
アリスは思いっきり不服そうな目でレアを見つめていたが、状況を理解したのか黙って頷いた。
「レアも気を付けて、ミイラ取りがミイラにならない様に」
なんでそんなコトワザを知っているんだ?ここは地球でもあるまいし……
レアはその事に疑問に感じたがそこには触れず、浮空術で東の森へと向かった。
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