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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第四章 魔物を喰らう魔物

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48.アリス覚醒

(つらぬけぇ!」


 アリスは一直線に急降下をして、ベヒモスの頭に電流の纏った細剣レイピアを突き刺そうとしたわけだが、アリスの行動に気付いたベヒモスに直前でけられた。それでも筋肉の盛り上がった肩に刀身の先が食い込んだわけだが、硬い筋肉を貫くことは出来なかった。だが、僅か10センチメートル程度に食い込んだ刀身ではあったが、ベヒモスの身体が大きく震わせた。電流がベヒモスの身体の中を駆け抜けたのだ。


「くっ、何て固いの」


 ベヒモスの身体に足を掛け、突き刺さった細剣レイピアを抜いてクルクルっと回転させながら ベヒモスの後方へ降りたアリスは再び細剣レイピアを構えた。


 後方に危険を感じたベヒモスは後方に向こうとしたが、動きがかなりぎこちない。傷そのものは浅かったのだが確実に電流が奴の身体を一時的に麻痺させていた。


「切れなかったけど、電撃が少しは効いているみたい」


 ベヒモスは背中側に居るアリスに向き直ろうと、痺れた身体を何とか動かし右腕に持った大きなゆっくりと振り上げた。思う様に動かぬ身体で怒りに満ちたベヒモスには、奴の正面から迫りくるマイクの姿が全く目に入ってはいなかった。


 正面、いや、既に背面になっているベヒモスの右腕にマイクは大きく振りかぶった剣で斬りつけた。


『パキン!』


 マイクの剣が折れた。ベヒモスの硬い皮膚と筋肉の一部は切れたのだが、マイクの剣の強度では骨までは切れなかったのだ。


「け、剣が折れた……なんて硬さだ」


 折れた剣を驚いた顔で見つめるマイク。ベヒモスはぎこちない動きで斬られた右腕を押さえながら大きな唸り声をあげ、鋭い目つきでマイクを睨みつけた。もし奴が痺れの無い状態だったのなら、マイクはあの長い鼻と大きな左腕の攻撃を受け致命的なダメージを受けていたかもしれない。


 折れた剣を投げ捨て懐から短剣を取り出したマイクだったが、そんなものでベヒモスが倒せるとは到底思えない。苦肉の策だったのだろう、その僅かの間にベヒモスは切られた腕の傷に鼻から吹き出す水を掛け、再生し始めたのだ。それに徐々に痺れも取れてきている。こいつもヒドラと同じで素早く倒さねば回復するタイプの魔物だったのだ。


「くそう、ベヒモスが自己再生するなんて聞いたことが無い。ヒドラと言いこいつと言い一体どうなっているんだ」


 マイクは短剣を構え、攻撃というよりむしろ防御態勢に入ろうとするが迫りくるのはベヒモスが振りかぶった大きな棍棒、とても受け止められるものではない。大きく背後に飛ぼうと屈みこんだ時、再びベヒモスの身体が揺れた。アリスが電流を纏わせた刀身をベヒモスの背中に突き刺したのだ。


「くそう、か、硬いわね本当に……」


 不意を突いたものの、付きささったのはまたもや僅か10センチメートル程、動きを鈍らせることは出来たが、致命傷には程遠い。流石にオリハルコンで作られた細剣レイピアなので、折れたりはしなかったが、ベヒモスが背中に力を込めたので細剣レイピアが抜けなくなってしまったのだ。


 必死になって引っこ抜こうとするアリスだが、それに気を取られているとベヒモスの裏拳が飛んできたのだ。


「うぐっ……」


 かろうじて、腕で防御をしたがとてつもなく重い一撃、アリスの身体が宙に舞い、大木にぶち当たった。ロッシの作ってくれた防具が無ければ確実に即死だったろう。だが、その重い一撃のお陰で細剣レイピアも一緒に飛ばされたのは幸いだった。これでまだ戦える。


 ただ、防御をした右腕と肋骨の何本かは確実に折れた。起きようとすると口から血も吹出した。どうやら折れた肋骨が肺に突き刺さり肺損傷も起こしている。息が苦しい……


 このままでは共倒れになる……そう考えたアリスは、痛みを堪えながら無事だった左手を使い細剣レイピアをマイクに放り投げた。この剣とマイクのパワーならベヒモスを切れるはず……


 今は片腕しか使えないとしても、生命力の高いアリスにとってマイクまで細剣レイピアを放り投げる事は何とか可能だった。だが、無理に力入れた為に再び口から血が吹き出る。


「ゴホッゴホッ……」


 細剣レイピアを受け取ったマイクはアリスの方をチラッと見た後、彼女に向かうレアの姿を見て安心したように果敢にベヒモスへ向かって行く。チャンスは奴の動きの鈍い今しかない。


 アリスは自分の胸に手を当て、満身創痍になりながらも急いで回復魔法をかけ始めた。治癒が早い、これなら全回復できるのも時間の問題だ。


 細剣レイピアを手に取ったとはいえ、マイクにとっても危険な状態である事は変わりない。アリスは一刻も早く傷を治してマイクの援護に入りたいのだろう。懸命に回復魔法を自身にかけた。


 生命力が上がっているお陰で回復魔法の効果は高い。口の周りは血だらけだが徐々に呼吸も整って行く、肺の損傷部分が塞がって行っているのだ。


 呼吸が整った後、大きく深呼吸をしたアリスは、骨折しているだろうヶ所に回復魔法をかけ出した。回復していくアリスを見て俺も討伐に参加すべくベヒモスの元へ向かおうとしたが、その時、治療を終えたアリスに服の裾を引っ張られた。


「も、もう少し私達だけで頑張らせて」


 壮烈な表情を浮かべたアリス。だが、細剣レイピアが無い状態でお前はどうやって戦うのだ?


 そう思った時にアリスはスペルサーベルを取り出した。そしていかずちに似た刀身を作り出したのだ。そして俺が何かを言おうとする前に「これならあいつを切れるでしょ」と言って飛び出して行ったのだ。


 前回ヒドラを倒したお陰かアリスの生命力は圧倒的に増えている。加えて、今死にかけて回復したお陰で更に生命力がアップし、遂に自在に刀身を出せるほどまで成長したのだ。覚醒したって感じだ。


 マイクはというと、果敢にベヒモスの腕に切りかかってはいるが硬い骨に阻まれ切断するまでには至っていない。オリハルコンの細剣レイピアなので折れることは無いが、まだまだ苦戦しそうな状況である。


「くそう……俺の力が足りない……」


 深い切り傷を作っても直ぐに再生されてしまう為、マイクが眉間に皺をよせ悔しそうな表情をしたその時、あれほど切れなかったベヒモスの腕が切断され宙に舞ったのだ。


「マイクさん大丈夫!」


 ベヒモスが痛みでいなないたその後ろで、見た事も無いバチバチ音を立てて、金色に光る刀身を構えているアリスがマイクの目に入った。


「な、なんだ……その剣は……」


 あ、そうか。マイクは俺がヒドラと戦っている時には見てなかったから、スペルサーベルの事を知らないんだな。


いつも読んで下さりありがとうございます。

アリスが強くなりました。対ベヒモス次回決着です。

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