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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第四章 魔物を喰らう魔物

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45.森の調査へ

 ヒドラが他の魔物を食たかどうかは兎も角、第四層に奴らが現れた事は周知の事実。オリバーは「むしろこちらからお願いしたい」と調査を依頼してきた。報酬は3万ピネル、悪くない額だ。


「依頼内容は第四層に於ける魔物の種類の確認だ。分布図に書かれているもの以外の魔物が居れば教えて欲しい。それだけでいい」


 オリバーは契約書を作成しながらそう言った。その契約書を掲示板に張り出せば「確認だけで良いなら、俺達が行くぜ」という冒険者ワーカー達が殺到するだろう。第四層をうろつくだけなら1週間もあれば可能で、1週間で3万ピネルは冒険者ワーカーにとっては破格の報酬だ。


 その半額でも良いという奴も居るかもしれないが、それでもオリバーは俺達に依頼した。つまり、第四層にヒドラ級の魔物が生息している可能性があり、冒険者ワーカー達を危険な目にあわせるわけにはいかない。確認が必要であるなら、それを倒せる俺達にしか依頼できないと考えているのだ。


「第四層だけで良いのか?」


「ああ、取り敢えずはノービスとGランクの冒険者ワーカーを守る事が優先だ。それ以上のランカーなら余程の敵でない限り、逃げることが出来るだろうしな」


 という訳で第四層のみを調査することに決まった。第三層の状態も気になる所だが、それは第四層の状態を見て判断するという事なのだろう。


 ギルドの対応は早く、既に森への立ち入りを一時禁止にしていた。それを早く解放しなければ冒険者ワーカー達はおまんまの食い上げだ。それに魔石の回収がとどこおれば、動力源を魔石に頼っているこの街の生活にも支障が出てくる。


 能力を隠している場合ではないな。


「俺は空間認識魔法を使うことが出来る」


 その場で空間認識魔法は発動させた俺は、先ほどメモをした第四層の森の見取り図を広げ、そこに居る魔物の種類とおおよその数をサラサラと書き込んだ。


「そ、その魔物の分布は信用できるのか?」


 蟀谷こめかみから汗を垂らしたオリバーが、メモを手に取り凝視しながら俺に尋ねた。それに対してアリスは何食わぬ顔で「ええ。かなり正確だよ。だってね……」とサーベルウルフを100体以上発見し、討伐をした時の事を話す。


 オリバーはヤックに「本当なのか?その話は」と問うと、次いでヤックも「本当だよ。でもね、空間認識魔法を使えることは知らなかったわ。どうりでね、だからシルバールピナスを100株もあっさり取って来ることが出来たのね」と納得顔で頷いた。


「なんと、大量にシルバールピナスを入荷してくれたのは君だったのか」


 ふんふんと口髭を触りながらヤックと同じような納得顔を浮かべたオリバーは、バサリと俺の書いたメモをテーブルの上に置いた。


「そこでレア君、君の空間認識魔法で書かれた分布に何か気になる事はあるかね?」


 殴り書きの様に書かれた俺のメモを、オリバーは読むことが出来なかったらしい。明らかに気になる箇所があるのに俺にそう聞いてきたのだ。


「まあ、この辺りが気になるが……」


「それ、なんて書いてあるのよ。全く意味が分かんないんだけど?」


「ええ、ごめんなさい。私にもよく分からないわ」


 ヤックとアリスも難しい顔をして首を傾げている。……そんなに読めないものか?字が汚いと言われている様で、少しだけ悔しさが滲む。


「……えっと、これはベヒモスって書いてあるのだが……」


「!!!!!!」


「何ですって!ベヒモスっていえば第二層の終わりに居る魔物よ?それがどうしてそんな所に居るのよ!」


「俺にそう言われても分からんが、その生命力からして相当危険であることは理解できる、どうやらこいつも他の魔物を食っているのかもしれないな、そいつの周囲に魔物の気配がない」


「き、緊急事態だ。それが本当なら倒すのにはCランククラスの冒険者ワーカーが5人は必要だぞ。そ、その君の空間認識魔法でその辺りに冒険者ワーカーが居るかどうかは判らないか?」


 オリバーは血相を変えて俺の肩を掴んだ。現在、森への立ち入りは禁止されてはいるが、禁止の御触れ以前に森へ出かけている冒険者ワーカーが居るのだ。ざっと見てベヒモスの生命力は、1万は優に超えている。付近にいる冒険者ワーカー達は……居た。三人居る、ノービスかGランカーだろうな、生命力は300程度だ。こいつらがベヒモスと出くわせばひとたまりもあるまい。


「ああ、まだ距離はあるが半刻程で出くわす可能性は十分にある」


「や、ヤック!直ぐに城へ連絡を、森にベヒモスが出現と伝えてくれ、俺は直ぐに冒険者ワーカー達を迎えに行く」


 オリバーは席を立ち、直ぐに出て行こうとするが俺は慌ててそれを引き止めた。


「ギルドのボスであるあんたが行って、他に何かがあれば一体どうするんだ。心配するな、俺とアリスが彼らの救出に向かう。俺達なら楽勝だ、それに俺には空間認識魔法があるからな、冒険者ワーカー達の居場所も分かる」


 オリバーは悔しそうに、且つ、申し訳なさそうに頭を下げた。ギルドのマスターとして自らが動きたかったのだろう。だが、もし同様の危険な魔物が多発して街まで来ようものなら、統制を取る人物が必要だ。だからこそ、俺達が「楽勝だ」と言った事を信じるしかなかった。仮にそれが虚勢であっても、最低限ベヒモスを倒せるくらいのランカーを揃えるまでの間だけでも繋いでもらうしかないのである。


「……すまない。命だけは大切にしてくれ」


 まあ、ここの冒険者ワーカーの平均的な生命力を考えれば、そのセリフはごもっともである。彼も俺が強いという事は認識しているものの、せいぜいマイクと同程度位だと思っているのだろう。まあ、彼には申し訳ないが、マイクと一緒位の生命力なら確かにやばい、仮にオリバー自身が行ったとしても犬死になってしまうぞ。


「ああ、吉報を待っていてくれ。心配するな、礼はたんまり受け取るからな」


 俺は自分の胸をダンと叩き、笑みを浮かべた。


 フロアに戻ると、そこは冒険者ワーカー達であふれかえっていた。受付に多くの冒険者ワーカーが押し寄せ興奮状態で、受付嬢はてんやわんやになっている。理由は森が閉鎖されているためだ。


「森が閉鎖とは一体どういう訳だ?」


「生活の保障はギルドがしてくれるのか?」


「この受けている依頼が失敗したら、その賠償はギルドが支払ってくれるのだろうな!」


 いきり立つ一部の冒険者ワーカー達、当然そうくるよな。基本的に魔物を狩って生計を立てようという奴らは血の気が多いのだ。可愛そうに受付嬢が責められて涙目になっているではないか。おい、オリバーは何をしているんだ?こういう時こそマスターの出番だろう。


いつも読んで下さりありがとうございます。

森へ行ってきます。

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