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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第四章 魔物を喰らう魔物

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44.マスターオリバー

第四章開始です。また、暫くお付き合いをしてください。更新は概ね二日に一回となります。

 ヤックに回復薬を渡すが、液体を見ただけで嘔吐えずきだす。何度も吐いていたようなので胃の中には何も入っていないのだろうが、回復薬を飲ませた直後に吐かれても困る。


 アリスが「どうしよう……」と困っていたので、俺はアリスから回復薬を取り上げヤックにぶっかけてやった。


「ひぃ!」


 1メートル近くは飛び上がったかな?びしょびしょになったヤックは大急ぎでプライベートルームへ駆け出して行った。


「さすが獣人、走るのが早いな。あれだけ走れるという事はよくなったという事だな」


「ちょっと、いくら何でもレディーに対して酷いでしょ」


 アリスにこっぴどく怒られた。それに今まで以上に俺達は冒険者ワーカー達から注目されているので行動に注意するようにとも。


 そう言われても、回復薬は飲んでもかけてもよく効くのだ。二日酔いの為に高価な回復薬は勿体ないと思うだろうが、今かけたやつは純度の低い安物だ。この星にも売っているかどうかは知らないが、高性能な奴に比べれば治癒力は三割程度。だが、二日酔い位ならこの程度の物で十分なのである。


 待つことおよそ10分間、石鹸の匂いをプンプンさせ、毛並みをしっとりさせたヤックが戻ってきた。コスチュームは同じだが、パリッとしているので新たに着替えた事が分かる。


「よくもやってくれたわね。乙女に薬をぶっかけるだなんて、行為としては最低だわよ。……まあ、お陰様で吐き気も頭痛も収まったわ。仕方がないのでチャラにしてあげるわよ」


 おい、治してやったのにチャラかよ。


「良かったね、チャラにしてくれるって。許してもらえなかったら打ち首だったわよ」


 おい、アリスお前もか。しかも、チャラにならなければ打ち首って、この街はどういう法律で成り立っているのだ。


「で、何か話があってきたんでしょ?忙しいのよ。手短に言ってくれる?」


 なんだか冷たいな。さっきまでおえおえして、ろくに仕事をしていなかったくせに、元気になった途端忙しいとはなんだよ。……口元がニヤ付いてやがる。俺が『酒』を連発したから仕返しのつもりだな。


「そうだよ、ヤックさんも忙しいし、早く用事を済ませないと。だらだら喋らないでよね」


 二人して意地悪そうに笑みを浮かべている。厄介な女同盟結成である。


 二人とも……完全にマウントを取った気になって遊んでやがる。イラっとするわけではないが、ものすごく面倒臭くなってきた。


「なんだ?元気になったら途端に偉そうになったな。こんな事ならもう少し薄い回復薬を使ってほどほどに二日酔いを残すべきだったぜ」


 フッと俺が笑顔を浮かべると、二人とも女子力を目一杯活用した笑顔を振りまいた。


 そんな顔をされれば怒れないではないか。ほんと、女子って難しいぜ……


◇ ◇ ◇


 さあ、ヤックもそろそろ気が落ち着いたかな?


 ようやく俺は本題に入る。本題というのは、ヒドラが他の魔物を食っていたという事実だ。


 俺が事の経緯を掻い摘んで話すと、ヤックは耳をピンと立て驚いた様子を見せた。


「そんな話聞いたことが無いわ。強い魔物は自分のテリトリーに弱い魔物が入って来るのを嫌がるから、威嚇したり時には攻撃はするけれど食べるだなんて、どの冒険者ワーカーからも聞いたことが無い……本当にそうなら、それってかなりやばい話だね」


 直ぐにギルドマスターに話して調査依頼を出さなきゃ、と離席をしようとした時、俺はヤックを引き止めた。


「ヤック、魔物の分布図が書かれてある地図が欲しい」


 ギルドが把握している魔物の分布図に俺の空間認識魔法を重ね合わせれば、その地図から能力の逸脱している魔物を確認することが出来る。それがその魔物の行動範囲外のエリアなら、あのヒドラの様に他の魔物を食って魔素を上げている奴かもしれぬのだ。


「……うーん、機密書類だから見せられないかも。でも、ヒドラを倒してくれたしマスターに話してみるよ」


 そう言って奥の事務所に入って行ったヤックは、5分ほどたった後、見た目40歳くらいのスキンヘッドで口周りに髭を生やしたいかついおっさんと一緒に戻ってきた。おっさんはこの星の人間の中では相当強そうに見える。生命力を見ると7,000。ほほう、流石、マスターを名乗るだけはある。マイクより強いではないか。


「やあ、君がレア君と、アリス君だね?私はこのサンプールギルドでマスターをしているオリバー・D・ケリソンだ、オリバーと呼んでくれ。君たちの活躍は多くの冒険者ワーカー達から聞いているよ。この度はヒドラを倒してくれて助かった。そこで先程ヤックから聞いた魔物を食う魔物の話だが……」


 俺がオリバーに当時の様子を話すと、彼もそんな話は聞いたことが無いと頭を抱えていた。そして、別部屋へ連れていかれた後、俺達にギルドの機密書類である魔物の分布図を見せてくれたのである。


 その分布図には詳しい森の地図上に魔物の細かな特徴や、ギルドの出張所、監視装置や罠の場所まで書かれているので機密書類に値するのだが、事が事だけに俺達には公開してくれたのだ。


 あくまでも公開だけで書類は貸してはくれなかったが、俺の魔法『記録メモリー』でその書類に書かれてあることを全て記憶できるのだ。だが、それを悟られるのは拙いので、敢えて用紙に余計な起債はせずに、大まかな地図と魔物の分布のメモを取った。オリバーの見ている前でそれをやったのだから、彼も安心しているだろう。


 事実としては偽っているのかもしれないが、俺はその情報を他人に言うつもりもないし、ギルドの……というかこの街の役に立とうとしているのだから、まあ、勘弁してくれ。


 で、書類を通してオリバーから説明を受け分かった事は、ギルドの見解によると広大な森は四層で区分されていた。そこに書かれている区分では、ヒドラは第三層目の入口辺りにしか生息しない事になっていた。


 その見解が正しければ、由々しき問題だな。一体何が起こっているのだ?


いつも読んで下さりありがとうございます。

次回投稿は11/26火曜日の予定です。

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