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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第三章 手がかり

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41.誰が仲間だって?

後三話で第三章完結となります。二日ごとの投稿になります。

 そもそも、なんでそんな怪我をしたのだ?もし、ヒドラに噛まれたのならその猛毒で既に命はないはずだが……


 そう疑問を持った時、俺の後ろでひとりの冒険者ワーカーが「あいつ、草陰に隠れていてサーベルウルフに噛まれたんだ。そんで、慌ててこけて足を折ったんだぜ」と教えてくれた。


 なんてみっともない、皆生死をかけて戦っていたというのに……


 アリスが両掌を広げ、ドナルドの負傷した足へと持っていく。


「ちょっと待てよ、杖は?杖はどうしたんだ。杖も無いのに治療なんてできるわけないだろう」


 痛がっているドナルドの足に触れられると大変な事になる。慌てたグリフはアリスを止めに入るが、それをアリスは一喝


うるさい。ちょっと黙っていてくれる?」


 想像を超える威圧感に怯むグリフ。過去にいいように利用していた時のアリスとはまるで別人だ。根本的に臆病者のグリフは少し相手に強く出られると逆らえなくなってしまう。この時点で既に彼はアリスに負けていた。


 その様子を見ていたドナルドは、足の痛いのも一時的に忘れこれから自身に起こる事に対して恐怖を覚えた。かつて自分がいい様に使ったアリスだ。口説けなかった時に逆恨みとして重い荷物を持たせたり、授業料だと言って依頼料を天引きしたりしていたわけなので、何らかの恨みを持たれていてもおかしくはない。挙句の果てに追放したわけだからな。


 この動けない状況で、足をじられでもしたら……不安は募っていく。


 「あ、アリス。もういい。後は別の僧侶プリーストに頼むから……て、手間を取らせて悪かった」


 この状態では何かされたとしても太刀打ちできない。ドナルドは痛みをこらえ、怯えた表情で少しずつ後ずさりをする。


「動かないで!(回復ヒール)」


 威圧ともとれるほどの声でドナルドを制止し、両掌から淡い緑色の光が放たれた。アリスは杖も無しに無詠唱で回復魔法を放ったのだ。


 すると、ドナルドの欠損していた足の組織は盛り上がり、あらぬ方向を向いていた関節もすっかり元通りになったのだ。


「む、無詠唱で杖も無しに……な、なんでそんなことが出来るんだ?」


 治療済みの足を動かし、痛みのない事を確認しながらドナルドは驚愕の表情を浮かべる。グリフも目を丸くして開いた口が塞がっていない。まあ、分からなくはない。なんせ、ここの星の奴らの魔法は杖を持ち詠唱を行う事でできるものなのだからな。


 それにしても、おいお前ら、先ずはお礼だろ?全く、どうしようもない奴らだな。


 それはそうと、治療を終えたアリスは、自身の掌を眺めながら笑みを浮かべている。俺も師匠として鼻が高いぞ。


「アリス、無詠唱で杖も無しに回復を行うことが出来たんだな(三倍の身体強化魔法をかけてはいるけど……)」


「うん、レア、出来たよ。なんだかレアの言っていた事が分かった気がする」


 地味に笑顔を浮かべた俺とアリスが、お互いの掌をパンッと叩いた。勝利のタッチだ。すると、後ろから大喝采を浴びる。ギャラリーが居たのにもアリスは気付いていなかったらしく、ビクッと身体を振わせた後、目を丸くして辺りをキョロキョロ見渡し、何かを言いたげに俺の方へ視線を向けたのだが……


「お嬢ちゃんすげえな。あんなに強ええのに回復もできるのかよ?」


 ひげ面の如何にも冒険者ワーカーって感じの男が笑みを浮かべながらアリスにそう言ってくる。


「ねえ、ねえ、是非うちの集団クランに入ってくださらない?いきなり幹部候補だわよ?」


 こちらは女性の冒険者ワーカーだ。全て女性だけで構成されているらしい。やたらと女性だけなので安全な集団クランだと強調してくるが、師匠の俺が入れないのならここは却下だな。


「う、う、うちのボスになってください。い、一緒に集団クランを立ち上げましょう」


 また、こいつは冒険者ワーカーらしからぬ痩せた男だな。オタクっぽいし、そもそもお前の職業は一体なんだ?なんかアリスが変な衣装を着せらされそうだぞ。……誰も仲間はいないようだが、とてもソロで魔物を倒せるとは思えない……何故こんな所に来たんだ?


 とまあ、アリスは大人気だ。中にはサインをねだる奴まで、アイドル並みじゃないか。おいおい、お前たち何か勘違いしていないか?


 俺はソロでヒドラを倒したっていうのに、集まってくるのは年寄の冒険者ワーカーばかりだ。若い女性冒険者ワーカーは相変わらず皆マイクを取り巻いたまま、少し残念な気分になる。


 俺達が対応に追われていると、そーっとその場からいなくなろうとするやつらが二人。その前に例のあの人が立ちはだかる。


「おいおい、お前たち、命の恩人に礼も言わずに何処へ行くつもりなんだ?逃げようとしていたのかな?」


 逃げようとした男たちとは、そう、勿論ドナルドとグリフだ。急に声を掛けられた二人はビックリしてその場で飛び跳ねた。


 目の前に立たれたのはあのマイクなので、二人は強気に出くこともできず、オロオロしながら辺りを見渡している。それにしてもマイクはいつ、女性陣の集団から抜け出たんだ?


「すまないな、マイク。まだアリスはそいつらから治療費を貰っていなかったんだよ。さて、アリス、いくら請求する?」


「うーん、そうだねえ」と逃げようとしていた二人を冷然れいぜんな視線を浴びせながら、アリスは顎に手をやり、首を傾げる。


 すると、行く手を阻まれたドナルドは、ここぞとばかりに図々しい事言いだしたのだ。


「に、逃げようとだなんてとんでもねえ、俺は仲間のアリスが偉業を成し遂げたってギルドに報告しに行くつもりだったんだよ。な、なあグリフ」


「そ、そうだよ。その通りさ、俺たちは仲間じゃないか。あの時『他でパーティを探せ』だなんて、冗談に決まっているじゃないか。ハハハ」


 流れ出る冷や汗を拭いながら、グリフもドナルドに合わせて適当な事を言い出す始末だ。偉業がどうとかって、お前たちアリスがヒドラと戦っている所を全く見てはいなかったくせに。それに「他のパーティを探せ」とか、誰も知らない事をしゃべるなんて……愚かな、皆それを聞いているぞ?。それが、自分の首を絞めているとは全く思わないのか。それに、誰がどう見ても逃げようとしていたようにしか見えないのに……


「ハハハ?ハハハとは?」


 アリスの笑顔が真顔に変わり、辺りに冷たい空気が降り注ぐ。今まで賑やかだった雰囲気が一瞬で沈黙へと変わった。完全に生唾ものだ。


「お、おい、そんなに怖い顔をするなよ。俺達仲間じゃないか……」


「仲間とはいかなるものでしょうか?説明を頂けますか?」


 本気で怒っておられる。アリス怖し……

いつも読んで下さりありがとうございます。

アリスを怒らせるは考えた方がいいなと、レアは思いましたとさ。

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