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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第三章 手がかり

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38.討伐へ

 翌朝、アリスは何食わぬ顔をして平気で俺の横で着替えをしている。俺がまだベットの中に居るとはいえ、寝ているか起きているかも分からないのに一向に気にする事も無い。いったい昨日の態度は何だったんだ。あのなぁ、俺達は男女の特別な関係でもなく、単なる師匠と弟子の関係だ。お前は、もう少し恥じらいってものをだな……


「レア何しているの?早くにギルドへ行くのでしょ?とっとと起きなきゃ」


 ロッシに貰った防具を身に着けて、バンダナまで綺麗に巻き終えたアリスは俺の布団をまくり上げた。昨日も見たが、防具とは思えぬほどお洒落でよく似合っている。


「あ、ああ……」


 布団から出るついでに 改めてロッシの作った防具を鑑定すると、編み込まれた糸に防御魔法も練り込まれている。ただでさえ強度のあるビッグモスの繭の糸に、ロッシの強力な物理と魔法の防御魔法を練り込んでいるのだ。そりゃあ、防御力が高い訳だ。


 それにしても昨夜は俺からかなり距離を取り、それも細剣レイピアを握って寝ていたくせに、本当に女性という奴はよく分からぬ。


◇ ◇ ◇


 軽く朝飯を平らげた後、俺たちは早速ギルドに向かう事にした。例の魔物ヒドラの情報を得る為だ。


 驚いた事に、昨夜あれほど賑やかだったフロントには、数名の普通の宿泊客が居るだけで、冒険者ワーカーは一人も居なかった。なんて皆行動が早いのだ。


 ギルドに到着しても同様で、受付前には殆ど冒険者ワーカーはいない。ここにいるのはきっと俺と同じランクのノービスばかりだろう。仮にパーティを組んでいても「足で纏いだ」とか言われて連れて行ってもらえなかったと考えられるな。だってほら、ブツブツ文句を言っている奴ばかりじゃないか。ただ、文句は言えても自分達だけで行く勇気はない。まあ、それじゃあなかなかランクアップは無理だろうな。


 そういう奴らを横目で見ながら受付の近くまで到着すると、俺達が居るのを見つけて、ヤックが大きく手を振っている。だが、顔が少し笑っているぞ、今更来てどうするのって言いたそうだな。


「あらあら、まあまあ、お二人さんともお早いおこしで。まだ早すぎて誰も居ないわよ」


 ヤックがニヤニヤ笑いながら俺にそう言ってくる。勿論、それが嫌味である事は十分わかっている。しからば。


「ああ、ここの冒険者ワーカーは皆ゆっくりなのだな。まさか俺達が早い部類だとは夢にも思わなかったぞ」


 後ろからアリスにペシッと肩をはたかれる。こいつめ、師匠をはたくとはだんだん遠慮が無くなってきてはいないか?


「まったく、そんなわけないでしょ。ゆっくり過ぎるのは私達よ」


「きゃははは、レアもアリスに形無しだね。もうすっかり三枚目のようじゃん」


 ヤックはケラケラ笑っている。三枚目なんて言っても、アリスには通じないぞ。って、そんな事はどうでもいい、俺の聞きたい事は例の魔物の事だ。


「そんな事よりも、ヒドラが出たって聞いたのだが」


「そうよ、それで皆我さきへと討伐に向かったわ。いくらヒドラとは言え、多勢に無勢で寄ってたかって倒しちゃうんじゃないの?」


 ヤックは呑気に答えるが、普段の行動範囲を超えてきた奴だぞ。そんなので大丈夫なのか?


 俺の心配を他所に「あら、アリスちゃん。とってもいい防具を身に着けてるのね?どうしたの?」と呑気そうに既に話題は別の方向になっている。


 アリスも呑気に「ロッシさんに作って貰ったの、えへへ良いでしょう」「ええ、あの幻と言われている巨匠の武具師に!」と二人で盛り上がっていたのだが、事態は急展開となる。ほらな。


 けたたましくギルドの扉が開き、全身汗まみれで息を切らした一人の冒険者ワーカーが駆け込んできたのだ。


「た、助けてくれ、直ぐに城の兵を呼んでくれ、ヒドラが五体も出たんだ。ハアハア……それも今までの奴らより強く再生も早い。何とかDランカー達が食い止めてはいるが、やられるのも時間の問題だ。街に来られると大惨事になるぞ。ハアハア……頼む、直ぐに応援を。冒険者ワーカークラスでどうにかできるものでは無い」


「場所は何処だ」


「ば、場所はリンゲの森の入口付近だ。ハアハア……もうすぐそこまでヒドラは来ている」


 余程必死で走ってきたのだろう。それだけ言ってその冒険者ワーカーは倒れ込んでしまった。


 ヤックはすぐさまその冒険者ワーカーに駆け寄り、『回復ヒール』をかける。ほほう、ヤックはそんなことまで出来るのか。


 集まってきた冒険者ワーカー達はオロオロして、誰一人救出に向かうものはいない。全く役立たずだ。ノービスが舐められている意味が分かった気がするぞ。


 リンゲの森の森と言えば、俺達がサーベルウルフを狩っていた森だ。あそこの入口ならここから20分もあれば行ける、間に合えばいいのだが。


「アリス、行くぞ」


「ええ」


「ちょっちょ、ちょっと待って。危ないわ、城の兵を呼ぶからあなた達は待機して、Gランクが行っても危険なだけだわ」


「何を言っている。俺たちはサーベルウルフを100体以上狩った冒険者ワーカーだぞ?俺達が行かないでどうするんだ」


 ヤックは必死に引き止めようとするが、ヒドラが五体も居るなんて、こんなおいしい話参加しないわけにはいかないだろう。ほら、アリスもバンダナを巻きなおして気合十分ではないか。


「そうよ、一刻を争う事態よ。私は兎も角、レアが居たら兵が来るまでの時間稼ぎ位できるわ」


 いや、時間稼ぎだなんて……倒す気満々なんだがね。


「時間がもったいない。行くぞ」


 俺とアリスはヤックを振り切って、ギルドを飛び出した。


 それはそうと、ヤックは俺の事をGランクと呼んでいなかったか?上がっているなら早く教えておくれよ。


◇ ◇ ◇


 リンゲの森の入った直ぐの所に有る雑木林、比較的見通しの良い広い場所で冒険者ワーカー達は戦っていた。街のすぐ傍じゃないか、こんな所までヒドラは来ていたのか。


 初めて見るヒドラ。体長は5メートル以上はあり、濁った黄色い体には鱗が張り付いている。基本蛇だ。それと長い首に長い尻尾を9本ずつ持ち、鋭い目つきで冒険者ワーカー達を見ら見つけながら大きな牙をむき出しにしている。あれに噛まれればひとたまりもないだろう。尻尾の攻撃もなかなかパワーがありそうだ。


 既に怪我を負っている冒険者ワーカーも居て、瀕死の状態の奴もいる。噛まれたようだが、よく死ななかったな。冒険者ワーカー同士で必死になって回復をしている。何とか生命を維持するのがやっとの様だが、幸いにも死ぬ気配は無さそうだ。生死に関わらないなら今は自分達で何とかしておいてくれ。


 前線の戦いはというと、いちヒドラに対して十人近くの冒険者ワーカーが、戦っている……というより、防御魔法を使ってこれ以上前進させない様に踏ん張っているだけだな。それも魔力が尽きれば一気にやられるだろう状態で、汗をびっしょり掻きながら何とか堪えている。が、これも時間の問題だな。その状態維持が三体か。


 後の二体はというと、お、ソロで頑張っている強者が居るではないか。マイクか。流石だ。だが、善戦はしているが再生が早く倒し切れていないな。もう一体と戦っているのは、まあまあ強めのランカー達だな。防御だけでなく、攻撃も加えている。だが、これも再生が早すぎて倒すのは難しそうだ。


「アリス、お前はマイクをサポートしろ」


「え?ええええ?ま、マイク様のサポートですと!?む、む、無理ぃ」


「馬鹿たれ、そんな事を言っている場合か、マイクが死んじまうぞ。俺が三倍の身体強化魔法をかけてやる。それなら二人でなら十分に倒せるはずだ、行け」


 アリスの生命力を考えると、三倍にすればマイクと同等。二人なら一気に首を刈り取れるはずだ。アリスは真っ赤な顔をして、目をクルクル回しながら挙動不審な動きでマイクの方へ向かった。


 ……おいおい、大丈夫かよ、ロボットかお前は。心配にはなるが、今はアリスに構っている場合ではない。それにああ見えてもあいつ(アリス)ならなんとかしてくれるだろう。


 さて、俺はというと、今にもつぶれそうな防御魔法をかけているチームを助けに行く。もう少しの辛抱だ。踏ん張ってくれよ。

いつも読んで下さりありがとうございます。

ヒドラとの闘いが始まります。

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