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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第二章 アリス

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19.アリスの生命力

第二章開始します。

 アリスが岩山を切り出してから3日が経過した。俺達は亜空間ボックスから出した簡易シェルターで寝泊まりをしている。汗だくで寝るのは嫌だとアリスが言うので、ご丁寧にシャワー室まで出してやった。


 食事の時と寝る時以外、アリスはずっと穴を掘り続け、俺は森に入り食用の魔物と果物などを仕入る。


 この辺りの森では一番強い魔物がサーベルウルフだ。ただ、奴の肉は臭くてとても食えぬ。料理法が有るのかもしれないが、俺は知らないし魔物とは言え、肉食魔物の肉は何処の星の魔物であっても全般的に臭いのだ。


 旨く食える猪や、牛の様なデカい奴はもっと奥に行かないと居ないわけで、それらを勝手に狩りに行くとギルドからのペナルティをくう。よって、残念ながら森の奥へ行くわけにはいかない。この辺りで食えるものとしては、角の生えた兎タイプのトーンラビット位だ。肉としてはショボいが、まあ、食えなくはない。難と言えば、奴のすばしっこさだが、最強の俺にとっては芋虫程度の速さだから問題にならない。


 魔物を食材にする方法だが、魔物に一定以上のダメージが加わると、その肉体が魔石に吸収される。よって、肉を確保しようとするときには、吸収される前に身体にある魔石を砕けばいいだけの話だ。そんな訳で冒険者ワーカー達は魔物を倒した後、急いで解体して魔石を取り出し砕いてしまわねばならぬのだが、そんな事をすれば身体は魔物の体液でべとべとになる。俺は汚れるのが嫌いだ。それに今着ている服は安物だが、一張羅いっちょうらだしな。俺としてはもっとスマートに行きたいわけなのだ。


 そこで魔法だ。魔法で魔物の中の魔石の位置を把握してそこをめがけて一刀両断するわけだ。すると、俺の身体は汚れずに肉を手に入れられるって訳さ。


 おっと、話がそれてしまった。そういう訳で、数キログラムのトーンラビットの肉を確保した俺は山を歩き回り、果物や野菜を仕入れた。この山は食い物が豊富なので本当にありがたい。俺はそれらを調理してアリスに振舞った。男の手料理って奴だ。初めて扱う食材ばかりだが、俺の頭の中には百科事典が入っているので、何をどの様に使えばどの様な料理になるのかはすべて理解している。


 アリスはシェルターを見ただけでも十分驚いていたが、俺の料理の腕前を知って更に目を丸くしていた。とても料理をする男には見えなかったのだろう。実は俺の亜空間ボックスには色々な星の調味料が大量に保管されているので、味付けは自由自在。その中でもどんな料理に使っても美味しくなるスパイス等もあるので、正直に言うと反則技ではある。料理の出来栄えは良かったのは彼女の3杯お代わりが全てを語っていた。こんなにも美味しそうに食べてくれるのなら、今度はここの星の調味料だけで料理の腕を振るってみたいものだ。


 そうやって3日間過ごしていたわけだが、残念な事にいまだに掘れた距離は1メートル程、オリハルコンの原石は10メートル程奥にあるので、まだまだ先は長い。これはひと月ほどかかるかもしれないな。どうしたものか……食材も限られているし、いい加減この生活も飽きてきた。それに、ここでひと月も過ごしていたら、折角のホテル暮らしがパアになってしまう。住まないのに家賃と食事代だけを払っているようなものだ。


 4,5日もあれば掘れると思ったのだが、こいつは予想外だったな。ところでアリスは強くなってはいるのか?どれ……


 俺はアリスの生命力を覗いた。確かアリスの生命力は125だったはずだが……おお、315にまで上がっている。凄い成長ではないか。という事はだ、これで重力魔法を解除すれば今の倍以上の速度で掘り進めるわけではあるが……そいつは惜しい。そうだ……


「アリス、ちょっと戻ってこい」


 洞窟になりつつある岩山をガンガン叩いていたアリスが手を止め、汗をダラダラ垂らしながら俺の方へと向き直った。なかなか汗を流す女性の姿も美しい。


「何?やっと調子が出てきたのよ、コツがわかってきたわ」


 うむアリスよ、それはきっとコツがわかったというよりも生命力が上がった為であるぞ。だが、俺は敢えてそのような事は口にしない。自分で思うコツとやらを、頭を使って考える事も大事なのだ。だからここは褒める。


「そうか、よくやったなアリス。確実に太刀筋が良くなっているぞ。ここからはもう一段階訓練レベルを上げようと思う」


 褒められて喜ぶかと思いきや、アリスの表情が歪んだ。もしかしてきつかったのか?


「え、あの……今言ったよね?ようやくコツがつかめてきたのよ?それなのに、訓練変えちゃうの?正直、今の身体の重さもギリギリなんだけど……」


「ああ、お前は強くなってきている。少々きついがお前なら大丈夫だ、2倍の重力魔法をかける」


「ちょ、ちょっと待っ……うぅ、お、重い……」


 10パーセント増から2倍にしたのはやりすぎたか。でもな、アリス。お前の為なんだ乗り切ってくれ。


 いきなり増えた重力に負けて、アリスは膝から崩れ落ちた。まあ、仕方が無いか。40キログラムそこそこのアリスの体重はその倍の重さになっているのと同じなのだからな。


「少々きついかもしれないが、徐々に慣れて来る。そもそも、情けは人の為ならずって言うしな」


「はぁ……はぁ……そ、それはちょっと意味が違うのでは……」


 なんだと?ここは地球ではないのにアリスは何故このことわざの本来の意味を知っているのだ。うぬぬ、なかなか侮れぬ奴だな。


「まあ、言葉の意味は……今はそんな事にこだわっている場合ではないぞ。立て、立つんだアリス」


 アリスはジト目をしながら歯を食いしばり、何とか立ち上がった。そして再び細剣レイピアを構えると「あぁ……細剣レイピアも重くなっているわ……」


 アリスが触るものすべてに2倍の重力がかかるのだから、当然剣の重さも増えるのである。辛そうな表情を浮かべ、更に汗が滴り落ちている。うーむ、少し可哀そうになってきた、はっきり言っておくが、俺はサディストではないからな……「『回復ヒール』」


「はぁ……はぁ……有難う、少し楽になったわ」


 こんな状況にされてもお礼を言ってくれるのか。いい奴だな。


 肩で息をしていたアリスは、徐々に通常の呼吸を取り戻し、なんとさっそうと細剣レイピアを構えた。そして何事もなかった様に、拳を何度か握り直した後、何かを感じたのか再び近くの岩を切り付けた。2倍の重力をかけているとは思えない程勢い良く振り下ろされた細剣レイピアは、岩に深い切り傷を付けた。


 なに?どういう事だ?体力を回復させたが、身体強化はしていない。何故こんなに早くに2倍の重力に適応しているのだ?


 俺は再度アリスの生命力を確認した。なんと生命力が515になっている。あまりにも上がり方が極端だ。


「ねえレア?私に身体強化魔法か何かかけてくれたの?身体が軽くなって力が増えた気がするの」


 その場で自分の身体の軽さをアピールするようにアリスは軽く飛び跳ね、俺に笑顔を見せたのだ。


 なんと、こいつは楽しみな逸材だ。


いつも読んで下さりありがとうございます。

アリスは頑張ります。

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