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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第一章 飛ばされた最強の魔法騎士

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番外1.ブラックシューズ

ちょっとした番外です

「おい、市長の孫娘を森に誘い込むって話はどうなっているんだ」


 ここはブラックシューズのアジト。アジトはサンプール市から西の外れにあった。そこでブラックシューズのボス、パトリツィオはアジト内に響き渡る程の大声で魔物使いのアレッシオを怒鳴りつけた。


 自室のさも高級そうな椅子に、机へ足を投げ出しながら浅く腰を掛け、アレッシオを鋭い目つきで睨みつけるパトリツィオ。


「へい、それがその……使役しているデスバードが居なくなりまして、どうやら何処かの冒険者ワーカーに狩られたみたいなんです。娘の髪飾りを奪った所までは確認していたのですが……」


 パトリツィオの部下であるアレッシオは、汗を拭きながらしどろもどろにそう答えた。ボスのパトリツィオは人には厳しく自分には甘い性格で、短気で気性も激しい。刃を人に向ける事にも躊躇いはない。森に迷い込んだ市長の孫娘を助けて、市長に恩を売るという計画が進んでいない事に対してイラついていたのだ。


 パトリツィオの計画は欲望の少ないこの街に、カジノなどの賭博場を建設し、その運営を牛耳る事だ。この街の住民は賭博場を作る事に反対している。そして、その反対の先頭に立っているのが市長である。


「多くの奴らは市長が反対しているから合わせているだけだ。賭博場が出来たら金をかけたくなる奴なんで山ほどいる。人間は欲望に弱い、最初にちょっと儲けさせてやれば、後は止められなくなるもんさ。そいつらから金をむしり取って、金のなくなった奴はタダ同然で使うんだ。それには市長を何とかしなければならないという事くらい分かるだろう。孫娘を迷子にできないなら、恩を売る為の別の方法をさっさと考えろ!」


 孫娘を攫って市長を脅すよりも、後々の事を考えれば恩を売っておいた方が自分たちの仕事もやりやすくなる。パトリツィオの考えた計画は、孫娘を森で迷わせ、市民がそれを知る程大事になった後、パトリツィオが孫娘を助けだすというもの。


 そうすればパトリツィオの評価も上がるし、市長も露骨に反対は出来まい。よって、孫娘が外に出たタイミングを見計らって、アレッシオに孫娘が森に行くように魔物を使って仕向けたという訳だ。


 具体的に言えばデスバードに誘導されて、予定している場所に孫娘が来た時、使役しているサーベルウルフに彼女を襲わすつもりだった。魔物から恐怖と痛みを十分に植え付けた後、アレッシオが助けて治療する。危険から救ってやれば子供は絶対に懐くものだ。ましてや治療までしてやるのだから、間違いは無い。それからパトリツィオの元へと連れて行き、何か美味いものでも食わせてやるのだ。その後、必死になって孫娘を探している市長たちの前に治療済みのその孫娘を返す。孫娘はパトリツィオの事を優しいおじさんと言うだろうし、感謝の言葉を並び立てるだろう。パトリツィオたちは孫娘の命の恩人だ。その恩人に対して、計画の反故ほごを言えるはずはない、そう思っていた。


 だが、予想外の出来事が起きたのだ。デスバードを追ってくるはずの孫娘が予定の場所には来なかったのだ。魔法でデスバードを呼び寄せても、デスバードも戻ってはこない。使役している魔物は逃げることが出来ないので、逃げたという事は有り得ない。また、冒険者ワーカーを見つけると距離を取る様に仕込んであるので、迂闊に人に近寄ったりもしないはずだ。それでも何者かに狩られたのは間違いない。


「くそう、あのデスバードを訓練するのにどれだけの時間がかかったと思っているのだ。誰かを見つけて痛い目に遭わせてやる」


 そうブツブツ呟いている時、その部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「だれだ?」


「へい、ゲルダです。ちょっとボスのお耳に入れたい話が……」


「入れ」


 頭を低くしてパトリツィオの部屋に入ったゲルダは、見知らぬ冒険者ワーカーについての話を始めた。つまりそれはレアの事、コテンパンにやられたうえに、女迄取られたと。


「力不足で申し訳ありません。でも、このままではブラックシューズの名がすたります。是非ともボスの力を貸していただきたく……」


「ほぉ、それでおめおめと戻ってきたわけなのか、この恥さらしが。で、俺がお前に手を貸して、お前は俺に何をしてくれるんだ?」


「へい、その逃げられた女を献上します。まだ若くてすこぶる良い女ですぜ。きっと気に入ってもらえると思います」


 パトリツィオは女に困ってはいない。興味がない訳ではないが、どちらかと言うと金の方が大事だ。何故なら女などその気になれば、何時でも手に入るからだ。だが、ゲルダから金をせしめた所で所詮はした金。望んでいる額とは桁が全く違う。ここは敢えて女に興味があるフリをしてゲルダに恩を売った方がいい、その方が今後奴を使いやすいからだ。


(部下との関りは信用と駆け引きだ、せいぜい俺の役に立ってもらおう)


「よし、お前は最近デスバードの魔石を売った奴を調べ上げろ、そして、その女を奪った冒険者ワーカーの特徴と一緒にキラーズに知らせておけ」


 キラーズと言うのはパトリツィオ直下の特殊部隊的な3人組の事だ。特殊工作から暗殺さえも行う手練れたちで、目を付けられたら最後、絶対失敗は無いとさえ言われている。彼らに知らせておけと言うのは、パトリツィオがゲルダとアレッシオの顔を立てたという事だ。


「「感謝します」」


 ゲルダとアレッシオは深々と頭を下げ、パトリツィオにお礼を述べた。デスバードの魔石を売った奴を調べろというのは、デスバードを狩った冒険者ワーカーを始末してくれるという事だ。次は失敗すまいという気持ちがアレッシオにも芽生える。


 アレッシオが使役していたデスバードを狩ったのも、ゲルダの言う女つまりアリスを助けたのも同人物のレアである。


 こうして、レアとアリスは知らない所でブラックシューズから狙われることとなったのだった。


いつも読んで下さりありがとうございます。

第二章開始までしばらくお待ちください。一応完結設定致します。

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