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5 契約書

アプリを初めてから2週間と少しがすぎた。


私は相変わらず"るい"として、

彼女と、時々彼の配信に通っていた。



この日もいつも通り、彼女は勉強しながら配信を開いていた。


私も彼女の話を聞き流しながら課題をこなす。

いつも通りの休日の昼下がり。


配信時間も中盤に差し掛かった頃

勉強に疲れた彼女は、日々の愚痴をこぼす。


彼女は真面目な努力家だ。リスナーも少ない時間帯。

多少のストレス発散は必要なのだろう


「お疲れ様」とコメントを打つ。


愚痴を続ける彼女、耳を傾ける私。


その中で、彼女は 「領収書を作らなければいけないのがダルい」 という趣旨の発言をした。


領収書

なんのことだろう。


引っかかる物を感じ取る。


ひとまず、フリー素材を使うことを勧めると

彼女は 「依頼主がオリジナルの領収書を作れと言ってるんだ」 と話した。


"領収書"

"彼女に気楽に接する依頼主の存在"


怪しすぎる


不審に思った私は彼女に詳細を聞く。


少し言いずらそうにしながらも彼女は事情を教えてくれた。



ある"お友達"が、自らの会社でバイトとして働かないか、と勧めてくれたこと。

オンラインかつ彼女の予定に合わせるという好条件。


彼女は二つ返事で承諾した。


その為、契約に伴うバイト代請求の書類の制作を求められたこと。


請求書を作るにあたっての必要情報は全て教えて貰っており、

残るは彼女が請求書を自作し、情報を記入した後に送信するのみであること。



彼女は嘘が下手である。


お友達、と名言は控えていたが相手など一目瞭然。

明らかに彼、Syoであろう。


止めるべきである。

彼女を止めなくてはならない。


けれども、彼女を止めることは

「私がSyoという人物を信用していない」

と明言することを意味する。



彼を信頼している彼女

彼を信用出来ない私




ぐるぐると考えた後に、

私は彼女の安全を優先した。


「話したいことがあるんだけど、時間ある?」


震える手で彼女にLINEを送る。


この件で彼女に嫌われたらどうしよう、


漠然とした恐怖


それでも、彼女守るためならば。


翌日、彼女から了解と返信を貰い、通話を繋いだ。


休日の朝、判断能力の鈍っていた私。

私は情けなくも本当に彼女に甘い。


結局私が彼女に伝えたのは


「そのバイトは怪しいから考えなおして欲しい」

「個人情報は送るな」


という内容。


"Syoに関しては

「ちょっと私は信用出来ないから、気をつけて」

と軽く話す程度に収めてしまった。


本当ならば

「彼のことは信用出来ないから、私はAちゃんとの今後関わり方を考える」

位のことを言うべきであった。

今でも後悔が尽きない。


彼女からは


「心配症だな、嫉妬でもしてるの? わかったから大丈夫だよ」


との返事。


何一つ伝わっていない事が見て取れる返答だった。


そして、苦い思いのまま通話を切った。



何も得られなかった後悔の中、

ただひとつ残された事実があるとするならば。



この件で、私は完全に彼のことを信用出来なくなったことだろう。




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