18 終わりは突然に
私が話している間、おそらく彼はほとんど聞いていなかった。
定期的に聞こえる、ガラスのぶつかる音、頭をかく音、何かをいじる音。
その全てが物語っていた。
彼は変わらない。だけど、せめて、彼女にだけは伝わりますように。
そう思って、全てを話した。
一通り話した私は、二人にこう告げる。
「これが私の考えです。これに対しての反論や意見を、聞くつもりはありません。
全ての最終決定は、お二人に委ねますので、私は抜けさせていただきます。」
彼らがどんな決断を下そうと、それは彼らの自由。
だが、私の言葉を聞いて尚、彼女が彼を選ぶと言うのであれば、
その時は...
それでも信じていたかった。彼女の言葉を。
" 私は[Syoくん]と[るいちゃん]のどちらかを選べと言われたら、
迷いなくるいちゃんを選ぶ。
るいちゃんの方が信用できるし、大切だから。”
話し合いの翌日
月曜日
1:04
彼女からチャットが届く。
「お話終わった。」
そして続けて、こう伝えられた。
「結局、私はまだSyoくんを好きになりきれてないってなり、
でも、Syoくんは別れたくないってなって(仮)で付き合ってるって形になってる。
ちゃんと正式に付き合うってならない限りは、親への紹介はしないことになった。、
もし、私が1年後、5年後どっかに好きってなったらちゃんと付き合うって感じかな。
好きになる程度的には、るいちゃんを超えてくださいって言っといた。」
ああ、私の言葉に意味はなかったのか。
絶望と悲しみ
ひとまず彼女に返信を書かなくてはならない。
「わかったよ。
私は、Aちゃんが決めたことなら受け入れる。
私の立ち回りは、ちょっと考えさせてね。」
彼女の返信を見ずにチャットを閉じる。
それとほぼ時を同じくして、彼からのチャットが届いた。
「わざわざ時間作って話す時間くれてありがとう。
本心でぶつかってくれて嬉しかった。
結論としては、別れはしなかったお試しみたいな形になりました。
好きだけど、まだその感情が育ちきってなかったって言われました。
なので、本気で好きって言ってもらえるように頑張っていきます。
とは言っても、今まで通り素の自分を好きになってもらわなきゃ意味ないから、
何か変わるって訳でもないんだけどさ?
その過程を、るいちゃんにも見守ってて貰えたらと思います。」
彼は何も変わっていない。そのことにむしろ安堵すら覚えた。
この結末を迎えた今、私がとるべき未来は、確定したに等しいから。
だから、彼には誠実に返信を書く。
「機会を作って頂いたことには、感謝致します。
このような形でぶつかる事になったのは申し訳なく思っています。
傷つける発言もあったと思いますが、私の本心がそうさせた結果なので、許してください。
そのくらい、あの子が大切なんです。
私の立ち回りは、明日考えることにします。
泣き疲れちゃったんで。何事も、上手くは行かないものですね。
次、もしお会いする事があれば、その時はいつもの”るい”として参りますので、
そこはご安心ください。
今日お話したのは"私”ですので。
私が"るい”として戻るという立ち回りを選んだその時は、どうかどうか
“るい”とMaoちゃんを、よろしくお願いします。」
彼女から送られて来た最後のチャットが目に入る
「大丈夫?泣いてない?」
ああ、残酷だ。
現実も彼女も、あまりにも残酷すぎる。
こんなにもがき苦しんだのに、結局結末は変わらないのだから。
こうなるのだったらいっその事、何も後腐れなく縁を切れてしまった方が幸せだった。
そうすれば、必要以上に苦しまなくて済んだのに。
ベッドに横になり、泣きながらこれからについて考える。
こうなった以上、私は彼女から離れるべきである。
そうしなければいけない
期待した私が愚かであった。
彼女と出会わなければ良かったのかもしれない。
そうすれば何もなく平和に過ごせていたのだろうか。
この日の私は疲れていた。
一日であまりに多くの出来事が起きたのだから。
そのおかげもあってか、思考の波に飲まれるその前に、私は眠りに落ちていた。
翌朝
目が覚めると、私の目は悲惨なほどに腫れていた。
鏡を見て笑えてくる。
ああ、私はなんて愚かなのだろう。
吐き出すかのように、仲のいいコミュニティーに投稿をする。
「何が正解か分からなくなってもた。
いったん目が腫れ過ぎてて笑える。草」
ある意味の決意表明。
この投稿があれば、私に何かあっても、コミュニティーの誰かが私を救いあげてくれるだろう。
今日、彼女を手放す。
その決断と行動を起こさなくてはならない。
ようやくこの悲惨な物語が終わるんだ。
喜ばしいことではないか。
ひとまず、この目をどうにかしよう。
そして、心の整理をしよう。
そんなことを思いながら携帯を開くと、彼女からチャットが届いていた。
11:11
「大切な話があるから、招待した人のみで配信をするんだけど、来れる?
Syoくんはちなみに呼んでない。
無理そうだったらいいからね。」
…はい?
理解し切れていない頭で枠に入ると、枠にいるのは彼女だけだった。
「あと数人招待したんだけどね。まだ来てないみたい。」
彼女の意図していることが分からない。どういうことだろう。
そして彼女は続ける。
「私はもう決めたんだ。
散々迷惑かけちゃったから、るいちゃんにだけ先に話すね。
私、Syoくんと縁を切って、このアカウントごと転生することにしたの。」
……。
こうして物語は思いもしない形で幕を閉じた。
あと1エピソードで終わります。




