第一話 新人勇者のドタバタ冒険譚の始まり part3
ここがセイバーさんの行き付けの酒場…
床には綺麗な布が一面敷かれているし、
壁には高級そうな絵画が沢山貼り付けられているし、
椅子もテーブルも高そうとしか言えないほど立派なものだミャウ…!
「ささ、俺が今回全部奢るからさ?
好きなもの頼んじゃってよ?」
「い…いきなりそう言われても…」
「さっきの事は忘れようぜ、これから仲間になるんだからさ?」
「…え?」
仲間…何でその言葉が出て来るのかな?
僕達は一言も「仲間になってくれ」なんて言ってないし…
まさか、この人も千里眼で僕達の心を見抜いたのでは…!?
「おやおや?その顔は俺が千里眼で心を見抜いたと思ってるね?」
「えぇっ!?そこまで見抜かれているとは…!?」
「うん。半分正解で半分不正解…
俺は千里眼なんか持ってないし、無くても心の声くらい表情で見抜ける」
「えぇ…要するにエスパーって所ですね?」
「人を変質者扱いするな」
千里眼なしでも心の声を見抜けるとは…
世界は広いミャウ。
「そう言えば王家の食事が何なのかをまだ理解してないんだよな?
レインだっけ?」
「何故俺の名を?」
「さっき君の隣にいる桃髪狐の王女様が言ってたから…」
「スノウさん、易々と俺の名をばらさないで下さい!」
「へぇ…やっぱり国王関連の旅人だったか…
まぁ、ソユコトで…」
「それで、何故に俺達の仲間になりたいんです?」
「何でって…あぁ、そう言う事ね?」
先程セイバーさんは僕達の仲間になりたいと言ってたけど、
セイバーさんは勇者視点でも最強レベルだし、
剣聖視点でも最強格の実力を持っている方ミャウ。
そんな最強格のセイバーさんが何故、僕達みたいな新人の仲間になりたいのか…
その理由がまだ分かっていなかったんだミャウ。
レイン様の質問にセイバーさんはこう答える。
「君達の仲間になりたい理由は大きく分けて二つ。
一つ目は国王さんから『レインとスノウを導いてくれ』って言われたから必然的に指示に従うしか道がなかった。
そして二つ目…これが君達の仲間になりたい理由だ。
……でも、恥ずかしいし言っても分かって貰えなさそうだから、やっぱ言わなーい」
「俺達はもう18の大人ですよ!
話の分別くらい付けれます…俺はね!」
「ちょっとちょっと、僕ももう大人ミャウよ!?
何で僕は例外になってるミャウか!?」
「スノウさんは見た目も中身も馬鹿だからね?
3年前までおねしょしてた事をお忘れで?」
「そっ…それは言わない約束ミャウよ!
何をシレっと暴露してるミャウか!?」
「言われたくないなら成長した姿を見せて下さい!」
「アハハ…君達は本当に仲が良いんだね?」
「「良くないわ(ミャウ)!」」
「息ピッタリだね、将来が楽しみだ♪」
「「勘違いするなぁ(ミャウ)!」」
あーもう…セイバーさんが何で僕達の仲間になりたいのか、その真意が聞けなかったミャウ。
でも、理由はさて置いて最高戦力が仲間になるんだ。プラスに捉えて間違いはないだろうミャウ。
「さぁさぁ、初めてでも飲める酒を選んだから飲みな飲みな?」
「…厚切りベーコンと大きなステーキ…」
「カレー炒飯にポテトサラダ…」
「あぁ、新人に飯を奢る時はこのメニューにしてるんだ。
君達はまだまだ若い新人さんだ。こういう時は気持ち良く『はい』って言ってくれたら嬉しいな♪」
「…はい!頂きます!」
「…ぼ、僕も頂くミャウ!」
「うんうん、俺は嬉しいぜ♪」
その後、僕達とセイバーさんは三時間飲みながら語り合ったミャウ。
でも、セイバーさんの謎である仲間になりたい理由は喋ってくれなかった。
それに、千里眼を持ってない僕にも分かったんだけど…
「…アイツ等も一緒だったら…尚更嬉しかったんだが…」
彼の心の奥に、大きな悲しみの要因になっているものがある事だ。
でも、この事を聞き出すのは野暮な事だ。
僕はこの疑問を一旦心の奥にしまう事にしたミャウ。
多分だけど、彼にこの事を聞き出せば…何か大きな問題にぶつかる…そんな気がしたから。
一方その頃、レクム王国から少し離れた所で不穏な話をする者達が居た。
「そういえばさ、俺達の目的のあのお方は出て来るのかよ?」
「そうだよな?幹部の皆様は彼の登場に期待満々だけど、それに従わされる俺達の身になって欲しいよな?」
黒服の衣装を身に纏う二人組の男が愚痴話をしていると…
「おい、私達の思想を愚弄するとは…」
「「ひぃっ!?」」
「…どういう料簡だ、コラ…?」
ガタイの良い40代くらいの男が二人の目の前に現れ、すぐさま二人の首を断ち切った!
「お許しを…がはっ!?」
「止めて…ぎぃやぁぁ!?」
「…フン、私達の大いなる理想に反した貴様等は必要ではない。
それに、あの方がお出でになる…サードがそう言ってたしな?
楽しみじゃのう…『災厄の五天子』の元メンバーであり、最強の伝説と謳われるレクイエム様が…あと数日で私達の目の前に…!」
この男のせいで、レクム王国は危機に襲われるのである。