序章 生まれて来なくて良かった英雄様
俺は…本当に生まれて来て良かった存在だったのだろうか?
俺を産んでくれた人も、
俺をここまで育ててくれた人も、
俺に人生のノウハウを叩き込んでくれた人も…
俺が気が付いた時には全員死んでしまったし…
俺は…何で生まれて来たんだ?
俺は…こんな孤独な生涯を生きる為に生まれて来たのか?
分からない…
俺は…
俺達悪魔の子供は…
「……本当に…生まれて来て良かったのかな…」
この時の俺はまだ六歳の子供だ。
こんな年で、
こんなに幼い体と心が、
「この世界は生き難い」と、
毎日毎日叫んでいる。
ここ最近は俺の同胞も各々闇堕ちし、
義の心得で動く英雄は俺しか居なくなってしまった。
義の英雄として活躍する俺の生活は、傍から見ている一般民からすれば嘸かし羨ましいものだっただろう。
だが…
そんな裕福過ぎる生活を数年送っていても、
金を沢山費やして幸せを得ようとしても、
力無き者に優しさを分け与えても、
犯罪に手を染めた輩を指導しても…
「……俺の心って…生きているのかな…」
俺の心はいつまで経っても
大きな穴が開いたままだった。
そんな俺の心の内情とは裏腹に、俺の功績は全世界の人々に称えられ…
「この世界の唯一の勇者である…■■■■様に大いなる祝福があらん事を!」
いつしか俺は全世界が褒め称える勇者の中でも栄誉ある権力と名声を手に入れる事が出来た。
だけど…そんな世界になっても俺の心は暗いままだった。
いいや、栄誉と権力と名声を手に入れ続ける度に、段々と黒く染まっている気がする。
俺は正直な話…
アイツ等と楽しい日々を送れるのなら、
世界の平和とか、
魔王の暴挙と殺戮とか、
勇者の教えとか、
正直どうでも良いし、
いっその事、俺とあの四人以外全員死んでしまっても構わないと思っていた。
この物語は、俺が作り出した悪夢を英雄譚と称賛する世界に生きるとある新人勇者と悠久の時を生きる俺が紡ぐ…
俺のハッピーエンドを求める身勝手な旅物語だ。
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