表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイアラカルト

潔癖症のための潔癖症

作者: 降井田むさし

 僕は、潔癖症の人のために、潔癖症になった。潔癖症の人のための、潔癖症になった。潔癖症の人のためだから、他の潔癖症と、少し違う。


 潔癖症の人が、まわりにいなかったら、潔癖症にはならなかっただろう。ずっと、それなりの綺麗さで、とどまっていただろう。


 僕はどんなときも、まわりの人に合わせる。カメレオンのように、まわりに溶け込んでいたいから。要するに、自分がないのだ。


 僕ひとりだったら、特に綺麗でなくていい。特に、何にも気を使わずに、過ごせるだろう。ほぼ僕ひとりしか、目に入らない場所。そこは、普通で何の問題もないんだ。


 部屋の中とか、部屋の中とか、部屋の中とか。誰も来ない場所は、正直やや汚い。それでいい。誰も、招き入れる予定はないから。誰も家に来たいと、言ってこないから。


 無人島では、掃除も整理整頓もしないだろう。二人で漂流して、実質二人島になった場合は、例外だが。それ以外では、集めてきた枝などは、乱雑置きだろう。


 みんなの目に映る場所は、徹底的に綺麗にしてきた。身の回りから、身の少し遠くまで。手を石鹸で、何度も洗ったり。しっかり汚れが落ちているか不安で、長時間洗ったりしてきた。


 歯磨きも、かなり入念にやるようになった。念入りに、念入りにやってきた。誰かと、自然と距離を取るようにも、なっていた。潔癖症の人の近くにいたから、やや染まってしまった感じ。


 今は、意識していない。意識せずに、色々と壁を作ってしまっている。それは、潔癖症の人と同じ姿。まわりにいた潔癖症の人、そのものになっていた。


 最初は、誰かのためだった。しかし、満足できず、どんどんエスカレートしてきた。時間が増えて増えて、また増えて。


 カタールで開催された、サッカーのワールドカップ。そこでは、アディショナルタイムが、異様に長かった。そのような感じだ。


 最終確認を、何度もしてしまう。終わった場面から、これよし、あれよし、あそこよし。みたいに繰り返す。これが、潔癖アディショナルタイムだ。

 

 今では、かなりのバリアを張ってしまっている。高い壁を、作ってしまっている。普通の壁ではない。ただ、ベルリンの壁ほどでもない。言うなら、あの有名な反り立っている壁よりも、やや高いくらいかもしれない。


 僕に近い人物に、かなりの潔癖症がいた。それは、ひとりではなかった。複数人いた。それで、気にして清潔にし始めた。かなり近い存在だったから、余計に気になった。


 そこから、汚れの全てが、気になり始めた。僕しか触れない場所でも、掃除するときには、徹底的にやってしまっていた。その時その時で変わるが、特殊なのは、否めない。


 僕は潔癖症。でも、王道潔癖症ではない。僕の潔癖症。それは、誰かのための潔癖症だ。嫌われないための潔癖症。だから、自分のためでもある。自分が傷付かないための行動。それが僕の、潔癖症だ。


 子供の頃は、10分で済んでいたお風呂。それが、1時間弱かかるように、なってしまった。今は、30分前後になったのだが。


 歯磨きも、10分から1時間弱になってしまった。どこを磨いたか分からなくなって、また最初から磨く的な。


 潔癖症というより、心配性だ。心配なことが多すぎて、頭が真っ白になる的な。


 歯ブラシは、すぐにダメになる。すぐにヤンキーのツンツンヘア、みたいになる。広がってしまう。そりゃそうだ。


 そりゃそうだ。だって、小学校時代に、学校で使っていたミニホウキ。それは、通常の状態を見たことがない。常に、カッスカスだった気がする。


 細い物体束ね系道具は、すぐダメになるのだ。潔癖症との、相性は良くない。潔癖症は、色々と消耗してしまう。人一倍、消費をするのが潔癖症だ。


 水とティッシュ。それは、必需品だ。潔癖症に、なくてはならないものだ。ふたつがあれば、なんとか綺麗になったと、思い込める。


 すべて潔癖症が、原因。それはないと思う。だが、きっとかなり影響している。潔癖症で、様々な支障が出てきている。


 トイレ掃除も、1時間弱かかってしまう。仕事場が、トイレ掃除当番のある仕事場で。そこでも、かなり綺麗にしてしまった。


 手を洗うところの掃除を、特にしてしまっていた。水滴が、許せなくなるときがある。だから、布で綺麗に拭き取ったりしてしまった。


 でも、どこか大雑把なところがある。だから、厄介なのだ。急げと言われれば、それなりの短い時間で、済ませられる。


 その反面、急がなくていいよと言われると、丁寧さが増してしまう。もう、ありとあらゆる箇所の、細かさを追求してしまう。だから、疲れる。


 誰かの車に乗るなら、ビニールシートを敷きたい。何かしらの、布でもいいから、敷きたい。助手席に、何でもいいから、何か敷きたい。


 本来の潔癖症なら、誰が座ったか分からない席に、座りたくない。だから、シートだったりを敷く。それで、誰かから距離を取る。


 でも僕は、その車に僕の汚れを残したくない。僕が乗ったことで、何かしらを変えたくない。痕跡も、僕という成分も残したくないのだ。


 現場保存というものだろうか。僕は、菌も何もかも、変化させなくないのだ。空気になりたい。幽霊のようでありたい。そんな域まで、来てしまった。


 誰かの五感を、ザワつかせたくない。誰かの心を、波立たせたくない。少しでも、誰かを不快にさせたくない。


 だから、道を譲ったりする。誰かがピンチのときに、駆け寄ったりしてしまう。距離は取るけど、助けたい。小さなピンチなどを、救いたいのだ。


 本当に、変な性格だ。まわりに潔癖症がいて、気遣い生活をしていたせいか。お世話人間になっていた。


 誰かに、触れたくないのに、触れて助けたい。矛盾している。本当に変だ。潔癖症に限りなく近い、平穏求め男だ。


 こんな性格になった理由は、まわりに潔癖症の人がいたから、だけではない。AB型だから。それも、あると思う。


 僕の中の、B型の部分がいろんな、汚さを出す。それを、僕の中のA型の部分が、修正に入る。


 思うがままに、事を進めてしまうB型。そこから、A型意識に変わってしまったとき。そこが、ツラい。


 まわりに汚れを出さないようにしたいのに、B型はそれをしてくる。それを、かなり几帳面のA型が、悩み苦しみながら、必死で直そうとする。


 そんな、戦いが日々行われているのだ。僕は、意見が変わってしまう。思っていることが、変化する。そんなことも多い。


 それは、大目に見てほしい。意見が変わってしまったわけではない。両極端な面を、持っているんだ。




 誰かに、汚いと思われたらどうしよう。誰かに、迷惑は絶対に掛けたくないよ。これも、立派な潔癖症だ。潔癖症も、かなり広いのだ。


 清潔にしたいと思ってしまう、偏った習慣みたいなもの。それが、潔癖症だろうから。合っているだろう。誰かのために、清潔にしたい。それも、潔癖症だ。




 潔癖症。その言葉を、それほど知らない。辞書で調べたことは、たぶんないのだろうと思う。近いものなのに、よく知らないのはよくない。


 潔癖症を、辞書で調べてみた。僕の症状が、潔癖症の概念に当てはまるか。知りたいから。当てはまっていなくてもいい。当てはまっていなかったら、新設すればいいから。


 ●潔癖症とは、神経質なほどのきれい好き。度を越えた、きれい好き。


 ●まわりのあらゆるものが、不潔に見えてしまう。消毒や手洗いなくしては、生活できない。


 ●妥協せず、完璧なものを求めてしまう。完璧な、美しさを求める。


 そんな感じだ。これらが、潔癖症の特徴みたいだ。自分は、これらに当てはまるだろうか。当てはまっていたら、潔癖症ということになる。


 綺麗が好きなわけではない。神経質だが、汚い世界でも生きることができる。たまに、無意識に綺麗好きのようなものが出る。でも少しなので、当てはまらないな。


 不潔に見えるのは、客観視したときの、自分自身だけだ。ありとあらゆるものではない。まわりが汚いなんて、思わない。


 消毒や手洗いを、頻繁にしなくても生活はできる。TPOによって、かなりの差が出てきてしまう。だから、これも当てはまらない。


 完璧なものは、求めていない。誰かの不快に触れないように。それを考えて、それをやるだけ。自分の中の、凪の頂点は求めてしまっているかもしれない。


 ほとんど、当てはまらない。これは、潔癖症ではないのか。潔癖症ではないなら、新しい名前がほしい。


 好きだから、身だしなみに気を付ける。それはしない。『人類皆同率一位』。そんな感覚で、生きてしまっているから。


 『潔癖症特化潔癖症』。こんなのは、どうだろうか。『対人潔癖症』。こんなのも、いいかもしれない。


 潔癖症から、気遣いしすぎるように、なってしまった。それで、毎日苦しい。でも、それが僕なのだろう。


 スマホのメモ帳などに、メモするとき。頭と尻を合わせないと気が済まない。文字数を合わせて、きっちりしたくなる。


 1文字、左に行ってしまうみたいな、そんなのが許せない。 これは、対人ではないが、どうだろう。




 この随筆は、誰かのために書いていない。自分のために、書いているのだ。自分の中の潔癖的部分を、知るために。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ