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人類最強の異世界ゴリマッチョおじさん、奴隷商から三姉妹を救ったらオタ趣味が捗った件  作者: 浅見朝志


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第31話 状況確認

 俺の向かった先、戦士ギルドの中はいつになく張り詰めた雰囲気が漂っていた。集まっていたのは里長であるコン、ギルド長、アザレア、そして熟練の戦士たち。何人かが俺を振り返る。

 

「おう。来たかゴリウス」

「ああ。説明は?」

「いや、まだこれからさ。座んな」


 俺のために席を空けておいてくれたらしい。その周りの戦士たちは見知った顔ばかり。みんな、俺が若いころからよくお世話になった先輩戦士ばかりだった。


「──さて、招集に応じてくれた戦士諸君。状況の説明を始めよう」


 俺が到着してしばらくして、そう切り出したのはこの戦士ギルドのギルド長である、ベルドット・ブーケットだ。初老を迎えていながら、装備を身にまとい愛用の弓を持つその精悍(せいかん)な姿は衰えることを知らない。その隣には娘のアザレアが控えている。


「ガーベラたちからすでに伝わっているとは思うが、早朝に対象のドラゴンに動きがあった。辺りを探っている様子だった対象は、本格的にこの里がある山の付近に目星をつけたらしい。現在は隣の北の山で活動中だ。早くて明日の朝にはこの里を見つけ出すだろう」

「ドラゴンの推定サイズは?」


 熟練戦士のひとりが発した問いに注意が集まる。みな、それを気にしていた。ドラゴンの生態はそのほとんどが謎に包まれているものの、しかし大きいサイズの個体ほど強く、小さなサイズのドラゴンであれば努力次第で追い返すことも可能、ということは分かっているからだ。

 

 ……現に、俺は比較的小さな10から13m程度のドラゴン相手であればこれまでも引き分けに持ち込むことに成功しているからな。

 

 だからこそ、戦士たちの期待のまなざしも俺に集まっている。しかし、俺は知っていた。その期待には恐らく、応えてやることができないことを。


「サイズは推定──25m級だ」

 

 集まった全員が息を飲んだ。


「25……そんなの、聞いたこともないぞ」

「伝説の中の存在だろう……」

 

 戦士たちの呟きに、ベルドットは首を横に振る。


「現在ドラゴンの動向を探ってもらっている戦士たちの報告と、この中では一番にドラゴンとの戦闘経験があるゴリウスに調査に赴いてもらった結果がそれを物語っている。対象の個体は先月、別の15m級のドラゴン相手に一方的な勝利を収めていた。その致命傷となった咬み傷の大きさからも、25m以上あるのは間違いない」


 それは、あまりにも規格外だった。俺にへと集まった視線に、俺は緩く首を振った。俺だってとうてい敵う気のしない、途方もない相手だったから。


「そう、か……」


 ため息のような声を最後に、唯一の希望すらも打ち砕かれたギルド内は一気に重苦しい雰囲気に包まれた。しかし、


「戦士諸君」


 コォンッ! という音が沈黙の帳を貫く。みんなの視線が集まった先では、ベルドットが手に持った大きな弓を床に突いていた。その注目に、ベルドットはニンマリと笑顔を作った。


「死んでこようぞ。我らが家族のために」


 その言葉に、ぷはっ! と誰かが噴き出した。


「そりゃそうだっ。そのために集められた俺たちだ!」


 熟練の戦士たちは全員、胸のつかえでも取れたかのように笑った。


「ガキのこたぁ、おっかぁに任せておけばいい。ありゃドラゴンより強ぇから」

「酒の味を知ったばかりの若造どもにはまだ、天にあるという酒の泉の良さは分かるめぇ」

「私らが今を守る。残された者らが未来を創る。最初からそれでいいと割り切ってたんだもの。今さら恐れることなど何もないわ」


 みんな、笑って自らの死を受け入れていた。ここに集う戦士たちは、そのほとんどが30代後半以上の男女たちである。若い戦士たちは里の住民たちと共に避難先へと向かっているところなのだ。


「ありがとう戦士諸君。俺たちが捧げた命が、里の者たちの逃げる時間となる」


 ベルドットは微笑むと、それから娘のアザレアの背中を押した。


「避難先での新たな戦士のまとめ役は、我が娘アザレアに任せたいと思っている」

「ああ、異論は無いね。アザレアちゃんになら血の気の多い若造どもも素直に従うだろうさ」


 集まった戦士たちからは賛同の声が次々に上がる。


「頼りになるからな、アザレアは。里のことは任せる」


 もちろん俺もまた頷いた。アザレアは唇を噛み締めながらも、さらに数歩前に出た。


「新たな里は、必ずやこの私がこの命に替えてでも守ってみせる……! 必ずだっ!」

「任せたよ、アザレアちゃんっ!」

「……っ。叶うなら、私もみんなと肩を並べて戦いたかった……!」


 ベルドットが、震えるアザレアの肩へと手を置いた。


「お前の戦う場所はここじゃない。この先の未来だ。分かるな?」

「……はい、父上。分かっております」

「よろしい」


 ベルドットはそれから、俺へと視線を向けた。


「ゴリウス。本来ならお前も、アザレアたちと共に逃げてほしかった」

「ギルド長……」

「お前はまだ若い。この先、お前ほどの戦士はそうは生まれないだろう。だからこそその力で里の者たちを導いてほしいと、俺は今でもそう思っている」


 ベルドットは悔しそうに言う。


「だが、お前こそがこの戦いの要だ。きっと俺たちだけでは数刻の時間も稼げないで死んでしまうだろう。そうなれば、逃げる最中の住民たちが危険にさらされてしまう。すまない、ゴリウス……」

「言うな、ギルド長」

「いや、まず謝らせてほしい。無力な先達(せんだつ)を許してくれ」


 ベルドットがその頭を深く下げてくる。


「もしも時間を稼ぎ切ったその後に、お前が生き残ってくれていたら……そのときはどうか戦っている俺たちや亡骸は放って、そしてお前だけでも逃げて生き延びてほしい」

「……いや、それは無理だ」


 俺は首を横に振る。


「俺はもう、誰かを置いて逃げるのだけは嫌なんだ」


 遠い昔の、俺を守るために最後までドラゴンたちに立ち向かった姉たちの背中、その光景が今でも俺のまぶたの裏側に色濃く残っていた。その時に味わった無力感、罪悪感、そして悲しさはこの生涯決して消えることがないだろう。

 

 ……もう二度と、そんな思いをしてたまるものか。


「背中を向けるつもりはない。俺も、最期までみんなと共に戦わせてくれ」


 決してそれだけは曲げることができない。早ければ明日、俺たちはみんな、そろって力の限りを尽くして死ぬのだ。




【NEXT >> 第32話 決戦前夜】

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