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人類最強の異世界ゴリマッチョおじさん、奴隷商から三姉妹を救ったらオタ趣味が捗った件  作者: 浅見朝志


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第29話 セリの特技

 足を止めたセリに、行商人は心なしか安堵したように息を吐く。

 

「3銀貨も負けるなんてなかなかないことだよ、お嬢ちゃん。20銀貨じゃさすがにこっちも食っていけないが……24銀貨でどうだい?」

「うーん……でも、叔父さんに買ってもらえるのは20銀貨までだし……あ、そうだ!」


 セリは悩んだ素振りをすると、ワザとらしく手を打った。


「ねぇ、あの真ん中の8銀貨のお人形さんも可愛いと思っていたの。その子も含めて30銀貨にはできないかな?」

「え、えぇっ⁉ 人形3体でかっ⁉」

「叔父さんからもらえるのは20銀貨までだけど、私のお小遣いを足せば30銀貨までは払えるの」

「な、ならそのお小遣いを使って24銀貨でふたつを買えば……」

「そっかぁ……じゃあもうひとつの行商人さんのところの方が良いかも……」

「うっ!」

「お願いお兄さん、30銀貨で!」

「いやいや、それはいくらなんでも……」

「でもひとつもお人形が売れないよりかはここで売った方が売り上げが増えるし、24銀貨よりも30銀貨の実入りがあった方がお兄さんとしてもお得でしょ? これから買い手が付かない可能性も考えると、なおさら」

「そ、そりゃそうだが……」

「どうしてもダメ……? 私もできたらここでお人形さんたちを買いたいな……」


 セリがうるうるとした瞳で行商人を見上げると、行商人は大きなため息を付いて力なく首を振った。


「……分かったよ。俺の負けだ。30銀貨でこの3体の人形でいいんだな?」

「いいのっ? ありがとうお兄さんっ!」

「まったく、可愛いお客さんが来たかと思えば、とんだ食わせものだよ……」


 そんなわけで、俺の持参した大きめの手提げの帆布カバンには予算ちょうどの30銀貨と引き換えにお人形が3体入ることになったのだった。


「あ、ありがとうセリ。まさか予算の30銀貨ちょうどで3体のお人形を買えるなんて」

「えへへ! すごいでしょっ!」


 少し離れた場所で待っていたキキョウたちの元に戻ってからお礼を言うと、セリは胸を張った。


「ああ、すごいな。いったいどこでそんな交渉術を学んだんだ?」

「前まではお金をいっぱいやりくりしなくちゃいけなかったから、よくおつかいに行った先で値切ってたりしたの」

「……そうか。立派なんだな、セリは」

「ふふーん、それほどでもあるかもっ! で、これでどうよお姉ちゃん!」


 セリの言葉に、キキョウは顔に手をやって……首を傾げた。


「これでどうって……なにが?」

「だから、ゴリウスさんのための仕事だよっ!」


 セリは俺の腕を抱き寄せると、大きく胸を張った。


「私はゴリウスさん専属の【可愛いグッズ仲介人】として働いたのっ! そのお駄賃代わりとして服を買ってもらうならいいんじゃないかなって」

「あ、ああ、その話ね。まだ続いてたの?」

「むぅ、そうだよっ!」


 膨れるセリにキキョウはひとつため息を吐いた。


「服なら私が買ってあげるって言ってるでしょ? いくらゴリウスさんが優しいからって、そのご厚意ばかりに甘えるのはダメよ」

「で、でも……それじゃまた、お姉ちゃんは私やスズの物ばっかり買うじゃん……」

「っ! セリ、あなた……」

「私、お姉ちゃんには、自分のためにもお金を使ってほしいから……」


 ……なるほどな。自分たちのためにキキョウに我慢してほしくなかったから、だからセリは自分なりに自分にできることを考えて行動に移したわけだ。


「キキョウ、セリの気持ちを汲んでやってはくれないだろうか」

「えっ……」

「俺はセリの行いがとても尊いものだと思えるんだ。それに俺の信条として、仕事にはきちんと対価を支払いたいという気持ちもある」


 俺は帆布カバンを持ち上げて見せる。


「本来35銀貨だったこのお人形たちを30銀貨まで負けさせたのはセリの手腕によるものだ。なら、その仕事には5銀貨分の価値があるということだろ?」

「それは……」

「キキョウが長女としてふたりの模範であるべき、ふたりのために頑張るべきと考えてできるだけ俺に頼らずにいようとしたい気持ちも分かる。だけど、たまには姉を想う妹の気持ちに甘えるのも悪くはないんじゃないだろうか……?」


 俺の言葉にキキョウは少しばかり考え込んだようだったが、最後にはコクリと頷いた。


「確かに、そうなのかもしれません……」

「セリはもう充分、頼りになる女の子だと思うぞ」

「はい。ありがとうございます、ゴリウスさん」

「いいや、俺は何もしていないさ。がんばったのはセリだ」


 キキョウはセリにへと微笑むと、その頭を優しく撫でる。


「お姉ちゃんのために、ありがとうね。大好きよセリ」

「っ! え、えへへっ! たまには姉孝行もしないとだからね!」


 照れ隠しするセリが微笑ましくて、俺はしばし頬を緩ませた。




 * * *




 俺たちは行来市でいろんなお店を巡り、3人分の服とその他に雑貨などを買い漁って、自宅に戻ってきた頃にはもう夜。それぞれ気に入った服を買えたようで始終機嫌も良く、俺は俺でお人形という収穫もあったのでとても良い1日だった。


「うむうむ、またコレクションが増えてしまったな……」


 夕食を取ってから、俺は自分の趣味部屋にさっそく手に入れたアンティークドールを飾っていた。配置をこだわり抜いていたからか、どうやら夜はもうずいぶんと深まってしまっていたらしい。外からは物音ひとつ聞こえない。


「また熱中してしまっていたか……? いかんいかん」


 明日は朝から1件依頼が入っており、もう寝てしまいたいところだった。しかし飲まず食わずで趣味部屋にこもっていたから、喉がカラカラだ。水を求めて一度リビングへと降りることにする。


「む、キキョウか……?」

「ゴリウスさん」


 リビングのテーブルにはキキョウが居て、階段を降りてきた俺に微笑みかけてきた。


「どうしたんだ、もう夜も遅いのに」

「ああ、いえ。その……これを」


 キキョウは俺の方へと来ると、おずおずとしながらも何かを差し出してきた。反射的に俺はそれを受け取った。


「これは、ぬいぐるみか?」

「今日の市で見かけてとても可愛いかったので、もしかしたらゴリウスさんも好きかもって」


 それは、キキョウの手のひらにも収まるほどに小さなクマのぬいぐるみだ。モコモコとした生地で作られたそれは、素朴ながらも温かみのある可愛らしさを持っていた。確かに、俺の好きなグッズだ。


「安物で申し訳ないですが、どうぞ」

「え、俺にくれるのか……?」

「はい。この里で初めていただいたお給金だったので、なにか形に残るようなものをゴリウスさんにお渡しできればと思って」

「……」


 あまりに意外な展開に、俺はまじまじとぬいぐるみを見つめてしまう。

 

 ……こんな、こんな可愛いものを贈り物としてもらったのは初めてだ。

 

「あ、あの……ご迷惑でしたでしょうか?」

「え」


 気が付けば、キキョウが不安げに俺のことを見上げていた。

 

「そ、そんなことはないっ! すごく嬉しい!」

「そうですか……?」

「ああ! ただ、こんな風にぬいぐるみをもらったのは初めてだったから、驚いたんだ。嬉し過ぎてな。ありがとう、キキョウ」

「……よかった。喜んでもらえて」


 ホッとしたように、キキョウが微笑んだ。

 

 ……もしかして、キキョウは今日の内にこれを俺に渡そうと思ってリビングで待っていてくれたのだろうか。

 

 温かな気持ちに心が包まれていくのが分かった。

 

「キキョウ、本当にありがとう」

「いえ、こちらこそ。いつもありがとうございます」


 明るい声でキキョウが言葉を返す。


「不束者ですが、これからもどうか私とセリとスズシロ共々よろしくお願いしますね。ゴリウスさん」

「……ああ。そうだな」


 ……これからもこんな穏やかな日々を。この子たちと共に。

 

 俺もそう願わずにはいられなかった。




【NEXT >> 第30話 非日常は唐突に】

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