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人類最強の異世界ゴリマッチョおじさん、奴隷商から三姉妹を救ったらオタ趣味が捗った件  作者: 浅見朝志


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第27話 最強の次も最強

 谷底の里は1年を通して日照時間がとても少なく、人にとってもモンスターにとっても近づきがたい場所にある。それゆえに、人目をはばかるような仕事を生業とする人間が多く集まる里でもあった。

 

 そんな谷底の里で1、2を争う影響力のある組織のひとつがスレイヴン商会だ。賭博、売春、奴隷売買、幻覚剤を始めとする危険薬の売買など、あらゆる後ろ暗い商売に手を着けていた彼らは、当然ダークサイドの人間との繋がりが強い。ゴリウスへの人質を捕えるために若頭に集められた3人も、そんなツテを使って集められた闇の世界では指折りの強者たちだった。

 

 【悪戯猫】の二つ名をもつ美青年ジャム。彼は暗器使いの快楽殺人者だ。自分の殺した死体の両頬には必ず3本の猫ヒゲを入れるクセがある。その軽い身のこなしを武器に、より強い者を求めてどんな組織にもケンカを売る厄介者だ。

 

 【大金棒(おおかなぼう)】のボグワッツ。身長は2m50cmを超す大男であり、その身体と同じ大きさの大金棒を武器としている。その一振りは、かの凶暴無比で有名な繁殖期のピーチアリゲーターを昏倒させるという威力を誇る。

 

 そして、【神速の射手】と呼ばれたフォーシー。本業は暗殺者。瞬きの間に矢を3本射るという神業を持つ谷底の里きっての弓の使い手だ。長距離射撃の正確さも随一で、近辺の里ではフォーシーの右手に出る暗殺者はいないともっぱらの評価だった。


「──ひざまずいて許しを請いなさい」


 フォーシーは得意げに微笑んで、3本の矢が番えられた弦を引き絞った。彼はいまだかつて早撃ちで負けたことはない。フォーシーをナメた相手はいつだって気が付いたら矢を体に受けて倒れており、死の縁で彼の強さを知ることになる。今回も、そうなるはずだった。なのに、


「へっ……?」


 ドスドスドスドスドスドス、という音と共に、そんな間抜けた声がフォーシーの口からこぼれ出たかと思うと、その体は力なく仰向けに倒れた。

 

「遅いな、まだ矢を番えた段階だったか」

「あぁぁぁっ⁉」


 フォーシーの両手両足を激痛が襲い、直後その意識が飛ぶ。フォーシーは辛うじて残った意識の中で目撃したアザレアの弓を降ろすその残心に、遅れて理解した。アザレアが自分よりも数段早く、自分が番えていた倍の数の矢を放ったのだということを。


「フンッ!!!」


 間髪入れずにアザレアの背後から、いつの間に移動したのかボグワッツが大金棒を振り下ろしていた。大型のモンスターさえもやすやすと昏倒させるその重たい一撃をアザレアは、


「フンヌッ!!!!!」


 振り返りざまの左拳の鉄槌(テッツイ)で真っ二つにへし折った。


「オ、オレの金棒がっ⁉」

「フン、重たいだけの金棒を振るって力自慢か? だがゴリウスの腕力はそんなもんじゃあなかったぞッ!」


 ──アザレア・ブーケット、27歳。その腕力はこの里において3番手。彼女の上にいるのは、言わずもがな知れた里随一の力持ち、2トン越えのワイバーンをひとりで容易く持ち上げて運ぶゴリウス。そして2番手はかつて連戦により弓に番える矢が無くなったとの理由からワイバーンの首を素手で引きちぎったという武勇伝を持つアザレアの父、【鬼哭(おにな)き】の二つ名を持つ戦士ギルド長。


 そんな強者たちと腕相撲をして育ったアザレアの腕力は、10代前半にして成人男性の戦士を上回るものになっていた。そして現在は語るまでもない。


「──歯を食いしばれ。貴様らがナンバー2だなんだとナメくさった拳の威力を味わってみるがいい!」

「ひっ……!」


 ギュオン、と。弓を握りしめたままのアザレアの右拳が唸りを上げる。


「ズラァァァッ!!!」

「──ボギャフッ⁉ ⁉ ⁉」


 白く細く、しかし鋼のように引き締まったアザレアの拳がボグワッツの顔面へとめり込んだ。その巨体がやすやすと浮き上がる。ご近所迷惑なるといけないという理由から、アザレアはボグワッツの体を吹き飛ばさず、そのまま真下の地面へと叩きつけた。


 ──シン、と。再び辺りは夜の静寂に包まれる。もう誰もアザレアへと飛びかかっていく者はいない。


「う、うそ、だろ……?」


 若頭の喉からは、もはや涸れた声しか出なかった。


「じ、冗談だよなぁ? 谷底の里最強の3人が、まさかこんな簡単に……ナンバー2の戦士ごときにやられるなんて」

「おい」

「ひぃっ⁉」


 ドスの利いたアザレアの声に、若頭の肩が飛び跳ねる。アザレアが向けた形相は、若頭が谷底の里でこれまで相手してきたどんな闇の世界の住人よりも恐ろしいものだった。


「誰がナンバー2だ? 言ってみろ……」

「あ、あの……」

「貴様も私と()りたいか……?」

「……投降させてください」


 若頭とその他の男たちはその夜の内にアザレアと里の守護たちによって牢に入れられた。これは余談だが、その後スレイヴン商会は谷底の里内部での権力争いに負けて解体された。

 

 ちなみに三姉妹たちはその翌朝も何事もなく起き、昨晩の戦いのことなどつゆ知らず、いつも通りの平穏な1日を過ごした。




 * * *




 一方その頃、山奥の里と洞窟の里を結ぶ交易路沿いの森の中で。


「……ふむ」


 ゴリウスこと俺は森の中、顎に手をやって静かに深く考え込んでいた。


『洞窟の里付近の交易路でドラゴンを見かけた。交易路が安全かどうか調査をしてほしい』


 そういった内容の依頼を受けたのが3日前のことだった。ドラゴンの動向は里の行く末を左右する案件のため、俺はギルド長の意向もあって最優先でこの調査に乗り出した。そしてその調査結果は【交易路にはドラゴンがいた痕跡は無い】というものになった。

 

「交易路、にはな」


 俺は独り、小さく呟いた。目の前に倒れ伏している、15メートル級のドラゴンの死骸を見ながら。

 

 ……死んだドラゴンを見るのは、生まれて初めてだな。


 これは決して巨大なワイバーンというわけではない。これまで一度も勝ったことはないものの、何度も戦った経験があるから分かる。面長な顔つきをしているワイバーンとは対照的な丸い頭部、立派な角。それらはドラゴンの特徴だった。


「いったい、ここで何があったというんだ……?」


 ここは交易路からはだいぶ離れた森の中。ドラゴンが目撃されたという報告にしてはあまりにその痕跡が無さすぎるので、俺は横に捜索範囲を広げていたのだ。そうしているときにこの木々が荒らされた一帯を見つけ、その中心にこの死骸があったというわけである。


「腹部に大きく骨と肉ごと内臓をえぐられた痕……まさか、嚙みちぎられたのか?」


 ドラゴンのウロコは特別に硬い。鉄製の武器など寄せ付けもせず、打撃もその一切が通じない。ワイバーンの歯だって立たないはずだ。なのに、現に目の前ではドラゴンが外傷を負って死んでいる。そして、周辺には何か巨大なモノ同士が争った痕のように木々が軒並み倒されていた。そこから導き出される答えは──。

 

「……早く帰還して、ギルド長と里長に報告しなければ」


 俺は辺りに落ちていたドラゴンのウロコを拾うと、急いで山奥の里に向けて歩き出した。




【NEXT >> 第28話 行来市<ぎょうらいいち>】

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