第24話 ゴリウス
「アイツの故郷の話が出て来てからというものの、分かりやすいくらいモヤモヤと考え事が膨らんでいるようじゃないか。見ていて丸わかりじゃぞ」
「う、うそっ! そんな……!」
キキョウの慌てた反応を見て、コンはますます笑みを深くしていく。
「ウブじゃのぅ~。良いぞ良いぞ? 恋は女を綺麗にするからのぅ~」
「ち、違いますっ! そういうのではないですっ!」
「お? 違うのか? やっぱりお前も今ドキの娘らしく、ゴリマッチョおじよりも細マッチョ美少年がタイプなのか?」
「そうでもありませんっ! ゴリウスさんは私たち姉妹にとって最大の恩人で、感謝とか尊敬とか、今はそういった感情の方が大きいから……それに私、恋とかもまだよく分かっていませんし……」
「ほうほう? では今後そういった感情が整理できていくと共に恋愛感情が芽生えてくる可能性もある、ということかのぅ?」
「さ、先のことは分かりません……って、なんでこんな話になってるんですかっ!」
「ほっほっほ、ノリが良いのぅ~」
「もうっ! 私はただ、ゴリウスさんの故郷のことが少し気にかかっただけです!」
からかうように笑っていたコンに、キキョウはぷくーっと頬を膨らました。
「怒るな怒るな」
「むぅ……」
「詫びに少しだけ昔のゴリウスについての話をしてやるから」
「えっ……」
「ワシが知ってるのが意外か? これでもずいぶんと長く里長をしておるからのぅ。ゴリウスがこの里に来た時のことも、昨日のことのように覚えておるわ」
コンは遠い目をして、口元を緩ませた。
「ゴリウスがこの里に来たのはアイツが14の頃じゃった。最初はひたすら強さだけを求めるずいぶんな乱暴者だったわ」
「えっ⁉ ゴリウスさんがっ⁉」
「おうよ。その頃から実力だけはピカイチじゃったからの、ワシが自ら出て行ってボコボコにしてやってようやく言うことを聞かせたんじゃ」
懐かしそうに拳を振るいながら、コンは大らかに笑った。
「ゴリウスも自分が収まる場所を求めておったらしい。この里に定着するようになって次第に落ち着いていったわ」
「では、店長がゴリウスさんをこの里につなぎとめてくれたんですね……」
「どうじゃろうな。どのみちあの頃のアイツは心が疲れ切っていたからな、単なるエネルギー切れだったのかもしれん」
「えっ? 疲れ切っていた、って?」
「復讐に、じゃよ」
コンの表情から先ほどまでの笑顔が鳴りをひそめる。
「ゴリウスの故郷の里はのぅ、アイツが7歳の頃に大量のドラゴンの来襲によって滅びたそうじゃ。ゴリウスはその里唯一の生き残りとして、それからの人生をドラゴンを倒すための鍛錬と修行に費やしてきたんじゃと」
「……!」
「だが憎しみはな、生きる標にはなるが糧にはならん。復讐だけで人は生きていけない。ゴリウスは少しずつワシ以外の里の人間にも心を開き始め、馴染んでいった。そして今じゃあの通りのお人好しじゃ。もしかしたらゴリウスはもう、暗い過去を乗り越えたのかもしれんな」
……ゴリウスさんの強さの裏側に、そんな秘密が。
自分たちを救ってくれた存在の裏側にあった悲しい過去を知ってなお、キキョウはどう受け止めていいのか分からない。もし未だ苦しんでいるならどうにかしてあげたい、でもコンの言う通りもう塞がったしまった傷ならば、それに寄り添うことはできない。過去を知って、自分に何ができるのかが分からなかった。
「別に何かをしようとなんてしなくていい」
コンは、キキョウの葛藤を見通すようにして言う。
「人間生きていれば誰しもが、ふいに過去を誰かに聞いてもらいたくなる時もあるじゃろうて。その時に耳を傾けてやるだけで救われることもある」
「……そういうものでしょうか」
「そういうものじゃよ。それに、今のゴリウスは充分に幸せそうじゃ」
コンはニカッと笑みを浮かべる。
「お前たち姉妹と暮らすようになってから、アイツは今までよりもどこか生き生きとしているようじゃ」
「そ、そうなんですか?」
「ゴリウスと一番付き合いが長いのはワシじゃ。そのワシが言うなら間違いない」
コンはふふんと薄い胸を張った。
「キキョウ、これからもゴリウスと仲良くの」
「……はいっ!」
力強いキキョウの返事に、コンは満足そうにうなずいた。
「……付き合い始めたらまずワシに報告するんじゃぞ?」
「店長っ⁉」
「ほっほっほっ」
からかうような声を残して、コンはホールへと逃げていった。
【NEXT >> 第25話 復讐者たち】
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