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人類最強の異世界ゴリマッチョおじさん、奴隷商から三姉妹を救ったらオタ趣味が捗った件  作者: 浅見朝志


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第19話 美鬼 アザレア

 祭りの期間が終わり1カ月と少しが経った頃。人々の賑やかさで溢れかえる真昼の山奥の里へと、大きな弓と矢筒を背中に携えたその女は足を踏み入れた。

 

「うおっ⁉」

 

 腰ほどまでに伸ばした長い髪をたなびかせながら歩く彼女に、人々は気圧されるかのように自然と道を開ける。

 

 ──女の名前はアザレア・ブーケット。この山奥の里の戦士ギルド長の娘である。

 

 年齢は27歳、身長は190センチと大柄で、切れ長の鋭い目と雄々しい立ち居振る舞いに同性ながらも惚れた女性は多い。【美鬼】の二つ名で呼ばれるアザレアは、この里においてゴリウス・マッスラーに次ぐNo2の実力者だと名高い存在だ。

 

「ふっ、No2? いや、それももはや過去の話だな……」


 アザレアは今回の討伐依頼において過去最大級のワイバーンの討伐に成功していた。全長8.8メートルの巨大ワイバーンである。これまでにゴリウスの作った8.4メートル級の討伐記録を40センチも上回る大きな手柄だ。

 

 ……これほどの実績があればもう2番手だなんて呼ばれはしまい。

 

 ゴリウス・マッスラーという存在はアザレアにとって目の上のタンコブだった。なにかと言えば引き合いに出されるし、どうしてもゴリウスの持つ逸話と比べるとアザレアの実績が薄くなってしまうのだ。これではギルド長の娘としてメンツが立たない。

 

「でも、それも今日で終わり……! ふっふっふ、悔しがる姿が目に浮かぶぞ、ゴリウス。次はお前がNo1である私の背中を追う番なのだ!」

 

 アザレアが肩で風を切るようにして道を歩いていると、


「──っ!」


 戦士として鍛え上げられたアザレアの鋭い聴覚が遠くの声を拾った。


「どこかで子供が……泣いているっ⁉」


 それを把握した直後、シュバッ! と地面を蹴ってアザレアは近くの民家の屋根へと上る。

 

 ……方角は北。距離にして約200メートルというところか。

 

「はっ、はっ、ほっ!」


 屋根の上をまるで羽のようにフワリフワリと跳んで移動して、アザレアは声の発生源へとたどり着く。そこに居たのはとても可愛らしい着せ替え人形を片手に持った4、5歳くらいの幼女だった。辺りにその子の両親や保護者と思しき姿は見えない。


 ……迷子か。この里ではこれまでに見ない顔だが……?


 アザレアは民家の屋根の上から飛び降りて、ひとりでグズっているその幼女の目の前へと着地する。


「お嬢ちゃん、困っているのか」

「っ⁉」


 アザレアの突然の登場に、幼女はビクッと肩を震わせる。無理もない。いきなり巨大な女が現れたかと思えば声をかけてくるのだから。

 

「ふっ」

 

 顔をこわばらせる幼女を前に、アザレアは自嘲気味に笑う。現に、これまでも彼女に声をかけられた幼子はその大半が泣きじゃくる。それも仕方ない。子供というのは自分よりも大きな相手に、大人が考える以上のプレッシャーを感じてしまうものなのだ。


 ……まあ、今回も逃げるか泣きわめかれるかのどちらかだろう。そうしたら無理やり抱えてでも戦士ギルドまで連れて行けばいいか。それで新人戦士向けの保護者探し依頼を発注してやればいい。

 

 アザレアがそんな覚悟を決めていると、しかし。


「……あのね、セリたんがいなくなっちゃったの」

「えっ?」


 涙で目尻を赤くした幼女がテクテクと、アザレアの方へとためらいなく歩み寄ってきた。普通なら幼子が自分から2倍以上大きな体格の、それも目つきの怖いアザレアのような大人に近づくなんてそうそう無い。

 

 ……私のこと、怖がっていないのか?

 

 幼女からはまるでアザレアに臆する気配がしない。常日頃から高身長の大人といっしょにいて慣れでもしているのだろうか。その意外さにアザレアは一瞬驚いたが、気を落ち着けると幼女へと目線を合わせるように屈んだ。


「えっと……その【セリたん】っていうのは、君のお友達か?」

「ううん、おねーちゃん」

「そうか。じゃあお姉さんとふたりで居たのか?」

「うん」

「……じゃあ、私といっしょにお姉さんを探さないか?」

「うんっ!」


 アザレアがそっと手を差し出すと、幼女の小さく温かな手のひらが載ってきた。握ると、思いのほか強い力で握り返される。

 

 ……おぉ。

 

 アザレアは謎の感動に鼻の奥を熱くした。

 

 ……私、いま大人になって初めて子供に受け入れられた……?


 これは周りに隠していることだが、実はアザレアは大の子供好きだ。だがその子供に怖がられる見た目から、自分から子供に近づくことは極力避けて今日まで生きてきた。本当はお喋りしたり、いっしょに遊んであげたり、肩車してあげたりしたかった。

 

「私ね、スズってゆーの。この子はミーたん」

「スズちゃんか。可愛い名前だな。それとそちらがお人形のミーたんだな。覚えたぞ。私はアザレアだ」

「あざれあ? あざれあたん!」

「っ!」


 ニコーっ! という無邪気な笑顔の光線にアザレアは大きくのけ反った。


 ……おいおい、なんだこの可愛い生き物はっ!

 

 キュン死しそうになる心臓を手で押さえながら、アザレアは人生最大級の幸せを享受する。

 

 ……嗚呼、素晴らしきかな。私はいま長年夢見た【子供とのふれあい】を実践しているっ!


 アザレア・ブーケット27歳。子供の頃の夢は多くの人々を守り、大人からも子どもからも好かれる英雄になること。しかし10歳に入る辺りから身長がグングンと伸び始め子供に怖がられるようになって、捨てた夢だった。


「スズちゃんは今日はお外で何をしていたのかな?」

「えっとねー、セリたんとね、ねぇねーのところに行こうとしてたの」

「そうなんだね。スズちゃんはお姉さんがふたりいるんだねぇ?」

「うんっ。セリたんは元気いっぱいのねぇねーで、キキョウねぇねーはすっごくやさしいねぇねーなの」

「そっかぁ」


 ……あぁ、すごい。いま私、子供と楽しくお喋りできちゃってる……。


 ニヘっと頬を緩ませながら、アザレアはギルドへと足を向ける。


「スズちゃん、戦士ギルドって知ってるかな?」

「うんっ。ごーうすたんとよく遊びにいくー」

「ごーうすたん……? まあ、それはいいや。これから戦士ギルドに行って、スズちゃんのお姉さんかご両親を呼んでもらおうね」

「ごりょーしん?」

「お父さんとかお母さんってこと」


 アザレアの言葉にスズは首を傾げた。


「おとーさんもおかーさんも、スズにはいないよ?」

「えっ……」

「ずっとキキョウねぇねーとセリたんの3人だったの」

「そ、そうだったのか……ごめんね、スズちゃん」


 アザレアは奥歯を食いしばった。

 

 ……私としたことが、舞い上がっていたばかりになんて失態を! 少し考えを巡らせれば避けられた問答だろうに!

 

「でもね、この前からはごーうすたんともいっしょだよ!」

「……ごーうすたん?」

「うんっ。すっごくおっきくてね、やさしいの! だから今はね、前よりもまいにち楽しいの」


 ……ごーうすたん、さっきも言っていたな? 話の流れからするに恐らく犬かなにかのペットだろう。きっと三姉妹だけという忙しく苦しい生活の中で、それでもスズの日常を明るいものにしたいという一心で姉たちが買い与えたのだろう。なんて健気な姉妹愛だろうか……。

 

「ぐすっ」

「あざれあたん、どうしたの? 泣いてるの?」

「泣いて、ないよ……!」


 ボロ屋で身を寄せ合う三姉妹と犬一匹の光景を勝手に想像して思わず涙してしまったアザレアは、急いで目元を拭くと、再びしっかりとした足取りでギルドを目指す。

 

 ……スズちゃんの保護者のお姉さんを見つけたら提案してみよう。【三人と一匹そろって私の家に来ないか】って。

 

 酒もやらなければ趣味もないので、金なら有り余るほどある。三姉妹くらい自分一人で養っていけると、アザレアの瞳の奥に覚悟の炎が(たぎ)った。




【NEXT >> 第20話 ごーうすたんの真実】

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