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人類最強の異世界ゴリマッチョおじさん、奴隷商から三姉妹を救ったらオタ趣味が捗った件  作者: 浅見朝志


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第15話 クレープ屋さんへ行こう

 それは俺がキキョウの勤める喫茶店を訪れた翌日の午後のことだった。


「クレープ~♪ クレープ~♪」

「くえ~ぷぅ~っ! くえ~ぷぅ~っ!」


 山奥の里のメインストリートをスキップするセリとスズシロを微笑ましく思いながら、俺はその後ろをゆっくりと歩いていた。今日はふたりを若い女性の間で人気だとかいう【クレープ屋台】なるものに連れて行く約束だった。

 

「ゴリウスさん、本当に今日はなんでも頼んでいいんですかっ?」

「ああ、いいぞ」

「ぃやったぁ~!」


 バンザイして喜ぶセリに、つられてスズシロも着せ替え人形のミーたんを持つ手を大きく上にあげた。


「ごーうすたんごーうすたん、ミーたんの分もいいのっ?」

「え、ああ、うん。だけどミーたんは食べたいのかな……?」

「だいじょぶ。ミーたん食べれなかったらスズが食べるもんっ!」

「そうか……食べ過ぎてお腹を壊さないようにな」


 ……まあ、これは抜け駆けしてしまったお詫びだし、今日くらいはな。それにスズが食べられなかった分は俺が食べてしまえばいいだろう。

 

 今回、こうしてふたりを連れてクレープ屋台に赴くことになった発端は、昨日俺がひとりでキキョウの働く喫茶店を訪ねてしまったことにある。

 

「──え~! スズも、スズもいきたかったのにぃ……」


 昨日の夕方、キキョウが元気に働いていたとふたりに伝えたとたん、スズシロの表情が曇ってしまったのだ。どうやら、スズシロの中ではすでに俺とセリの3人で働いているキキョウに会いに行く思いでいたようだった。

 

「ご、ごめんな……キキョウが心配で、つい」

「そうだよスズ、ゴリウスさんは別にワザと私たちを置いて行ったわけじゃないんだから、スネないの」


 俺とセリの言葉にコクリと頷いたスズシロではあったが、しかしどうやらモヤモヤした感情は残ってしまったらしい。悲しげな表情のスズシロに申し訳なさが立ってしまい、俺は安易かなと思いつつも『お詫びにどこか好きなところに連れて行こう』とスズシロに約束したのだが、

 

「えっ⁉ じゃあじゃあ、クレープ屋台なんてどうかなっ⁉」


 その約束に対して予想外に食いついてきたのがセリだった。

 

「くえーぷ……? セリたん、くえーぷってなぁに?」

「クレープだよ、クレープ。この前に町でチラッと耳にしたんだけどね、すごくすっご~~~く、美味しいんだって!」


 セリによる熱弁がふるわれ、またたく間にスズシロの顔は輝き始めた。

 

「くえーぷ! スズもセリたんと同じくえーぷ食べたい!」

「でっしょ~?」

「ごーうすたん、くえーぷ食べにいこっ?」

「ゴリウスさん、私もいっしょにダメですかっ?」


 そんなキラキラとした4つの瞳で見上げられてしまって、まさか首を横に振ることなどできやしない。

 

「まあ、ふたりがそれでいいなら」


 ……とまあ、そういう成り行きだった。

 

「あっ、ここだよ!」


 セリが指さした先にあったのはこの前の祭りで見たような露店だったが、違うのはそこに並ぶ人々。長い列を作るその人々は圧倒的に若い女性が多かった。


「さっ、ゴリウスさん早く早く~!」

「はやくはやくっ!」


 駆け出すセリとスズシロの後を追って俺もまたその長蛇の列の後ろへと並んだ。一瞬、女性たちの視線が俺に留まるものの、子供連れということが分かると興味を失ったように逸らされた。

 

 ……俺ひとりじゃ並べなかったな、これは。セリたちが居てくれなきゃ一生食べられなかったかもしれん。

 

 30分ほど並んで手に入れたクレープをまじまじと見つつ、そんなことを思う。俺が頼んだのはクリームたっぷりのベリー系の果実がメインの【ベリー&ベリー】。ひと口かじると、クリームの甘さと果実の酸味と爽やかな香りが非常にマッチしていて美味しい。

 

「ん~~~! 美味しい~~~!」

 

 セリもまた幸せそうにほっぺたを押さえていた。セリが頼んだのは【レモンバターシュガー&ミルクアイス】。ジワリと口の中に甘さが広がりそうなトッピングである。

 

「ほぇぇぇ~!」


 スズシロは目をまん丸にしながら【バナナチョコ&カスタード】に一心不乱に噛り付いていた。ちなみにスズシロは有言実行で2つ注文し、もうひとつの【パインホイップ&レモンバター】は落としてしまわないように俺が持っている。

 

「……美味しかった!」


 セリもスズシロも満足気に息を吐き出していた。スズシロは結局2つともひとりでぺろりと平らげてしまって、夕食が入らないのでは? と少し心配だ。

 

 ……だがまあふたりともすごく嬉しそうだし、たまにはいいだろう。

 

「本当に美味しかったな。今度はみんなで来るとしよう」

「いいのっ⁉ やったー!」

「やたー!」


 セリもスズシロも、とても無邪気にバンザイをする。その歳相応な反応に俺も思わず頬が緩む。

 

 ……打ち解けてきたとはいえ、キキョウもセリもまだまだ俺に遠慮しているところが多いからな。もっと子供らしくしてくれていいんだが。

 

「今度来たら~……今日は売り切れてた【ピーチホイップ】っていうのを食べてみたいなぁ」

「ああ、アレか。目の前で売り切れてしまって残念だったな」


 今回は【レモンバターシュガー&ミルクアイス】を頼んだセリだったが、直前までは【ピーチホイップ&ミルクアイス】にするつもりでいたのだ。


「ピーチホイップはそんなに美味しいのか?」

「うんっ! 女の子たちの間で一番人気なんだって!」

「そうかそうか。確かにそれは気になるな」


 クレープ屋台に立てかけられるようにしておかれている大きいメニュー看板を見ながらセリたちとそんな話をしているときだった。屋台の中から紙を持ったスタッフが現れる。

 

「なんだろうな?」

「もしかして……新商品っ⁉」

 

 目を輝かせるセリの前で、スタッフはペタリとその紙を看板へと貼った。


「……えっ⁉ そんなっ!」


 その内容を見て、セリが大きな声を上げた。

 

『──原材料のピーチの実が入手困難なため、しばらくの間ピーチホイップ系の商品の提供を取り止めます』




 * * *




 クレープ屋台でセリが楽しみにしていた大人気商品の【ピーチホイップ】。それが売り切れどころかしばらくの間復活しないとはただ事ではないだろう。

 

「お仕事中にすまない、ちょっとよろしいだろうか」


 俺はメニュー看板へとそのお知らせを貼った女性に声をかけた。


「えっ? ああ、確か人類最強のゴリウスさん、ですよね? 先ほどはお買い上げありがとうございました」

「うん。とても美味しかったぞ。ところでその、ピーチホイップについてお聞きしたいのだが」

「はい、コチラですね……私たちとしても非常に残念なのですが」

 

 女性スタッフは重たいため息を吐いた。


「なんでも例年には無いことらしいのですが、付近の【ピーチアリゲーター】が一斉に繫殖期に入ったらしく」

「なんと!」

「そのせいでピーチの実の入荷が完全に止まっているんです」


 ピーチアリゲーター、それは背中にピーチの果樹を生やす大型のワニ類モンスターだ。繫殖期に入ってしまった地域のピーチアリゲーターから果実を入手するのはとても難しい。

 

「それは……仕方ないとしか言いようがないな……」


 理由を教えてくれた女性スタッフへとお礼を言うと俺たちは帰路に着く。

 

「ピーチの実、いつになったら入荷されるんだろう……」

「たぶん3カ月後くらい、だな」

「そ、そんなにっ⁉」


 絶望の表情を浮かべるセリの袖をスズシロがくいっと引っ張る。


「セリたん、【ぴーちほうぃっぷ】ってそんなに美味しいの?」

「わかんない……ピーチの実も食べたことないし、ぜんぜん味の想像がつかないけど……でもわかんないからこそ食べてみたかったの……」

「……いいなぁ、スズもたべてみたい」

「3カ月待たなきゃね……」

「さんかげつって何日?」

「んーっと……100日くらい?」

「えぇっ⁉ スズ、おとなになっちゃうよっ?」


 ショックを受けるふたりが痛々しく、どうも俺も気落ちしてしまう。

 

 ……ピーチアリゲーター、か。確かこの山奥の里をさらに奥に行った先の沼地にも棲息地(せいそくち)があった気がするな。

 

「よし、俺が取ってくるとしよう」

「えっ?」


 セリが目を丸くする。


「え、でもピーチの実は取れないって……」

「まあ俺が行けば取れるだろうさ。食べたいんだろう?」

「う、うん……でも、いいのかなぁ……」

「いいのさ。任せておけ」


 ……俺はピーチの実自体は過去に少し事故があったこともありあまり好きではないのだが、ふたりが喜んでくれるというのであればそれだけで充分にひと肌脱ぐ価値はある。


 家に着くと、俺はさっそくピーチの実の入手準備を行う。植物や木の実の採取依頼のときに使う藁かごを背負い、ハンマーを肩にかける。


「じゃあさっそく行ってくるとしよう」

「も、もうっ⁉」

「早いに越したことはないだろう? 早ければ明日の夕方には戻るから、キキョウが仕事から帰ってきたらよろしく伝えておいてくれ」

「う、うん……ありがとう、ゴリウスさん」


 俺はどこか不安げなセリと、何がなんやらと首を傾げるスズシロに見送られて家を後にした。




【NEXT >> 第16話 セリのワガママ】

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