久々に魔法を使った
「エリーすごくかわいかったな」
僕は王宮の階段の掃除をしながら昨日のことを思い出していた。そういえば、僕は昨日エリーとキスを・・。まだエリーの唇の感触が残っている。僕が昨日のことを思い出してニヤニヤしていると誰かが声をかけてきた。誰だこんないいときに?
「・・・ルーク君?何か考え事ですか?」
「そうなんですよー。ん?」
振り返ってみると、そこにはものすごく笑顔の執事長がいた。これはまずい。確実にぶちぎれている。執事長がキレたらマジでやばいってメイドさんの一人がいってたっけ。
「す・・すみませんでした!ウェインさん」
ウェイン執事長は僕が王宮についたときに王様のもとに案内したいかにも執事っぽい人である。まさか執事長だったなんて。僕はその場ですぐに両手を地面について土下座した。
「私に謝ってどうするんですか?このところ少し緩んできているようですね。仕事がすべて終わったら午後からもう一度訓練しましょうか」
ウェインさんは僕の土下座を意にも介さずに午後からの訓練を命じた。ごめんエリー今日は一緒にすごせそうにないよ。
そして午後には地獄の訓練があり二度と仕事中に考え事はしないと誓った。あとウェインさんは怒らせないようにしよう。
「ふーー。今日は疲れたなー。お湯が気持ちいい」
僕は風呂につかりながら思わず息を吐いた。王宮には従業員専用のお風呂が用意されている。王族に使える以上清潔さは大切だ。
「はーー。それにしても今日はエリーに会えなかったな」
今日は午後から僕の代わりに別の執事がエリーのお世話をしたらしい。エリーに会いたい。昨日のことを思い出していると大事なことを忘れていることに気づいた。
「そうだ。エリーの悪評を僕がなんとかするって約束したんだった」
昨日はついかっこつけてあんなことを言ってしまったけどどうしよう。悪評を取り除くといっても一体どうすればいいんだ?僕は頭を抱えた。
「エリーが料理人やメイドをクビにしたことは当人たちがいじめられていたからという噂を流すか?いやそれ以外にもあることないこと言われているみたいだから効果は薄いか」
うーん。そもそもの原因から考えるか。一番悪いのはこの国の第二皇女スカーレット様だ。彼女がエリーの悪評を流している犯人だ。つまり彼女がその噂を否定すれば国民は信じてくれるのではないか?エリーの悪評も取り除けるのでは?
「よし。これしかない!」
僕はその場で拳を突き上げた。
その日の夜。僕はベットでお風呂の続きを考えていた。スカーレット様に噂を否定してもらうためにはどうすればいい?お願いするか?いやスカーレット様は聞いてくれないだろう。それなら第一皇女のバイオレット様にお願いするか?
「いや一時的に効果はあると思うが、スカーレット様が悪評を流し続ける限り意味がないか。やはりスカーレット様に証言してもらわなければ」
ああー、考えすぎて頭が痛い。今日は寝てしまおう。午後のウェインさんとの訓練の疲れからかすぐに寝てしまった。
翌日。今日はエリーと王宮内の庭の散歩だ。昨日一日会えなかっただけなのにすごく久々に感じる。
「今日はルークに会えてうれしいわ!もうぼーっとしないでちゃんと働いてよね!」
エリーはオレンジ色を主体としたドレスをたなびかせながら僕を叱る。かわいい。
「ごめんよエリー」
本当にごめん。もうエリーと会えないのはこりごりなのでちゃんと働こう。
「うわー。やっぱり近くで見ると綺麗ね」
エリーは綺麗にさいた花壇の花を眺めている。いやエリーも十分かわいいよ。心の中で思ったがいうのは恥ずかしいのでやめよう。
その後僕たちはしばらく庭を歩いて綺麗な花を楽しんだ。そして庭にある大きな木の下で休むためにその木のもとに向かっていると
「ねえ。あれ降りれないんじゃない?」
エリーの指の先には今にも折れてしまいそうな枝に乗っているねこがいた。やばい今すぐ助けないと。僕がそう思って走り出す前にエリーが先に木に向かっていた。
「ちょっと!エリー!」
木にたどり着くとエリーは木をよじ登っていく。
「危ないよ!エリー!僕が登るから!」
「ダメよ!今行かないと間に合わないわ!」
エリーはどんどん登っていく。くそ!遅かった!そしてエリーはねこのもとにたどり着いた。
「ほらこっちに来て」
ねこに向かってエリーが手を伸ばした時。
「ばきっ!」
「きゃああああーーーー」
枝が折れてエリーが悲鳴を上げながら落ちていく。受け止めきれるか僕の力で?そうだ!僕は右手を前にして呪文を唱える。
「フロウ!」
僕はエリーに向かって呪文を唱える。すると緑色の光がエリーを包み込みエリーの体が一瞬浮いた。これなら!
僕はエリーの落下地点に走り、両手を伸ばす。すると見事にエリーをキャッチすることができた。そうお姫様だっこだ。僕は安心してエリーに笑顔を向けた。
「ふーー。無事でよかったよエリー」
エリーも怖かったようで少し泣きそうな顔になっている。
「ありがとうルーク。本当頼りになるわね」
彼女は泣くのを我慢して無理に笑った。本当にかわいい。
しばらく見つめあっていると
「にゃーー」
ねこの声が響いた。どうやら無事に着地できたようで良かった。しばらくするとねこはそのままどこかに行ってしまった。僕はエリーを降ろすとエリーは不思議そうな顔でこちらを見ている。
「もしかしてさっきのってルークがやったの?」
興味深々だ。親には魔法のことは人には秘密にしてと言われているがこの際しかたがない。
「そうなんだ。実は僕魔法が使えるんだ」
「ええーー!すごいじゃない!使える人少ないんでしょう?」
エリーは自分のことのように喜んでいる。かわいい。だができるだけ秘密にしておきたい。
「でも魔法を使えることはエリーと僕の秘密にして」
「分かったわ。誰にも言わないわ」
僕とエリーは指切りをして約束した。エリーと二人だけの秘密ができたことがうれしくもあった。




