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エリーと城下町

 僕たちは手をつなぎながら城下町に向かって歩いた。同年代の女性とデートなど初めてなので緊張する。上手くできるだろうか?少し暗い顔をしていると


 「何暗い顔してんのよ。せっかくのお出かけなんだから楽しまないと死刑よ」


 そう言ってエリーは僕に笑いかける。本当にかわいい。


 「うん!」


 僕は精一杯明るく返事をした。


 城下町にはこの国の約半数の人間が住んでいて商売が盛んに行われている。服屋や酒場、防具屋、武器屋などこの城下町では大抵の物が揃えられるだろう。この国では商売にかかる税金が他国よりも格段に少ない。そのおかげで城下町は賑わい、この国は大国と呼ばれるまでに成長したと聞いた。


 つまりこの国は民と王族の信頼関係によって成り立っている、そのため民も王族に関することには興味深々だ。当然エリーにも。


 城下町を歩いているとお肉のいい匂いがしてきた。露店がやっているらしい。平民の主食は芋だが、当然豚肉や鶏肉、牛肉も存在する。値段が高いのが難点だけど。


 「あの、コロッケとかいうの食べましょう!」


 「ちょっと。エリー」


 エリーはものすごい力で僕を引っ張る。よっぽど食べたいようだ。かわいいやつめ。


 「おじさん。コロッケ二つ」


 エリーが僕の分も注文してくれた。うれしい。


 「あいよ!ってエリザベス様?!す、すいませんお代は結構ですので」


 店主は怯えた様子ですぐにコロッケを渡して隠れてしまった。なんだあの態度は客に失礼だろ。僕はエリーを侮辱された気がして苛立ちを抑えきれない。


 「いいのよルーク。次行きましょう」


 エリーはそう言って僕を引っ張る。まったく二度とあの店では買ってやらないぞ。


 歩いていくと人通りの多い道にでた。すごい盛況だ。道の両端には露店が並んでいて雑貨屋やアクセサリー店がある。


 エリーはアクセサリー店で立ち止まると、とてもシンプルな指輪を見ている。輪っかしかない。


 「エリー。それならもっとこの赤色の宝石が付いたやつのほうが」


 僕は隣にある指輪を進めてみる。するとエリーは首を振った。


 「いいじゃない。この何にも取り繕ってない感じが」


 エリーは指輪を空に掲げながら嬉しそうに見ている。たしかにエリーが言うならそうかもしれないな。我ながらちょろい男だと思う。


 すると店主が僕たちに気づいたようで話かけてきた。


 「いらっしゃい。今日は何をお探しで、ってエリザベス様?!気づかずに大変申し訳ございません。さ、さ、好きなもの持って行ってください」


 店主は客がエリザベスだと分かると怯えた表情で言った。何だこいつは?なぜこんなにおびえているんだ?僕が疑問に思った時、


 エリーはいきなり走り出してしまった。


 「ちょっとエリー!待って!・・・くそ!」


 エリーは僕の呼びかけには応じずに遠くへ行ってしまう。僕は店主に金を投げつけ、普通の指輪を持ってエリーを追いかけた。


 人がいっぱいで前がよく見えない。僕はなんとかエリーに追いつくため人混みの中を走る。


 「すみません!通してください!」


 僕は必至に叫んで、エリーの後を追う。人混みをなんとか抜け出した後、前を見るとエリーが左の道に入っていった。僕もすぐさま後を追う。


 ここら辺は人もおらず前方には橋が見える。僕のほうが足が速いのでなんとか橋の上でエリーに追いつくことができた。


 「はあはあ。エリーいきなり走らないでよ」


 僕は息を切らしながらエリーの手を掴む。やっと追いついた。一体どうしたんだ?エリーも息を切らしながらこちらを見ようとはしない。


 僕はエリーの顔を覗き込むとエリーの目は涙で滲んでいた。


 「ちょっとエリー大丈夫?」


 僕はできるだけ優しい声で言った。エリーは黙ったままだ。しばらくするといきなりエリーが僕に抱き着いてきた。


 「ちょっ。エリー?」


 いきなりのことで頭が混乱する。どうしよう?こういうときどうすればいいんだ?


 エリーは泣いているようで顔をあげようとはしない。


 僕は子供のころ泣いたときには母親が頭をなでてくれたことを思い出した。よし、覚悟を決めてエリーの頭を撫でる。


 エリーの髪はすごく綺麗でおまけにさらさらで僕の手が包まれるようだった。撫でていると少しエリーが泣き止んだ気がしたので僕はエリーが泣き止むまで撫で続けた。


 ようやくエリーが泣き止んだ後、僕たちは手をつないで橋の先の草原に一緒に座った。太陽が暖かく、風がとても気持ちよかった。エリーは座りながらも顔を上げてくれない。


 とりあえず、僕はエリーが喋るまで待つことにする。僕はエリーの手を今よりも強く握りしめた。


 エリーは落ち着いたようでようやく顔を上げてくれた。エリーの目を見ると赤くなっていた。


 「えっと大丈夫エリー?」


 つい喋りかけてしまう。


 「ええ。もう大丈夫よ」


 エリーは強がって見せた。それにしても町の人々は明らかにエリーに怯えている様子だった。王族だからって怯えすぎだろ。しばらくしてエリーは少しずつ小さな声で喋り始めた。


 「町の人々は私に怯えているの。「暴君」って呼ばれているわ。笑っちゃうわよね」


 エリーは悲しそうに微笑んだ。ちっとも面白くなどない。怒りがこみ上げてくる。


 「なんで!こんなにエリーは可愛くてやさしい子なのに!」


 僕はつい本音がでてしまう。


 それを聞いたエリーは


 「ありがとう」


 と笑って見せた。


 「私最初に会った時話したでしょう。メイドと料理人をクビにしたって。それは事実だけどそれ以外にもメイドを殴ったとかメイドをいつもいじめているとかあることないこと広まっているの」


 「なんで?誰がそんなことを」


 「多分スカーレット姉さまね。小さいときからよく絡まれていたわ」


 エリーは悲しそうに答える。そうかスカーレット様が。自分の妹に対してひどいじゃないか!くそ!でも王族に対してただの執事の僕のできることなんて・・とにかく今はエリーを元気づけないと


 「聞いてエリー。周りが何と言おうと君が優しい子だということは僕が知っている。僕がなんとかするよ!僕に任せて!」


 僕は胸を叩いてアピールした。まだ何も考えてないけど、とにかく何とかして見せる!


 それを見たエリーは僕を見て大笑いした。


 「ハハハハハ!ありがとう。期待してるわ」


 なんだか信じられてないようだが僕はやるぞ!でもエリーが元気になってくれて良かった。そうだ。


 「はい。エリーこれ。僕からのプレゼントだよ!」


 僕はエリーに先ほどのシンプルな指輪を手渡した。


 「わああーー。ありがとう!つけていい?」


 「もちろん」


 エリーはとても嬉しそうに指輪を見つめている。すごくかわいい。エリーは指輪を右手の薬指にはめて右手を空に掲げている。そんなに喜んでくれたのならよかった。僕もすごくうれしい。


 「ふー。そろそろ帰ろっか?」


 僕は立ち上がりエリーに手を指し伸ばす。エリーは僕の手を取った後一瞬固まった。


 「エリーどうしたの?」


 心配になって尋ねてみる。次の瞬間エリーは僕の手を引っ張って僕の唇にキスをした。え?何が起こったか分からかったがエリーの唇がとても柔らかかったことだけを覚えている。


 エリーは僕にキスをした後、


 「今日のお礼よ!感謝しなさい!」


 そう言ってエリーは橋の方へ歩き出した。エリーの顔は夕焼けのせいか赤く染まっていた。


 「エリーちょっと待ってよ!」


 僕はエリーの後を追いかける。僕はこの時エリーの事を異性として好きになった。



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