エリザベス専属の執事になった
「エリザベス様。起きてください」
まるでお人形のような金髪のかわいらしい少女がベットで仰向けに寝ている。寝相は悪く、足や手が布団からはみ出てしまっている。なんともかわいらしい寝顔だ。僕はエリザベスの顔をまじまじと見つめた。
「・・ん・・・ふわーー」
エリザベスはまだ眠そうだ。一度起き上がったはいいもののまたすぐに毛布をかぶってしまった。
「エリザベス様。起きてください」
僕はもう一度やさしく起こす。エリザベスは布団でもぞもぞして
「ふわー。次起こしたらクビにするわよ」
と眠そうな声で言ってきた。そんな横暴な。しかたないこうなったら
「エリー。頼むから起きて」
僕は執事にあるまじき砕けた口調で言った。すると、エリーは布団から起き上がり伸びをする。
「ふわーー。エリーだなんて他の人が聞いたら打ち首ね」
エリーは微笑みながら僕を見てきた。だってエリーって言わないと起きないんだもん。以前エリーが寝ていると思って思わずそう呼んでみたらばっちり聞かれてしまっていた。
彼女はそれ以来面白がって二人きりのときはエリーと呼ばせてくる。僕は毎回エリーと呼ぶ度に誰かが聞いていないかすごくドキドキしている。単純に恥ずかしさもあるけど。
僕はエリーの着替えを手伝った後、一緒に食堂へと足を運んだ。食堂と言ってもそこは王様や皇女様たち専用の食事場で大きな長いテーブルが中央に置かれている。
すでに王様とお后様、二人の皇女様たちは席についていた。
「遅いわよ。エリー」
「ごめんなさい。お母さま」
お后様は待ちかねていたご様子でそれを見たエリーはすぐに席についた。するとエリーの隣に座っていた第二皇女のスカーレット様が僕を睨みつけている。
「ふん。奴隷は満足に起こすこともできないのかしら。全く使えないわね」
「申し訳ありません」
僕は深々と頭を下げる。スカーレット様は僕を良く思ってはいないようで、度々このような発言をしてくる。僕というか元々エリーの事も良く思ってはいないようだ。そういえばエリーを助けたあの日、
「きっと姉さまのしわさだわ」
と言っていたが、雪山に置いていくなんてなかなか酷いことをする。おそらくスカーレット様の差し金だろう。
「もういいじゃない。とにかく食べましょう」
第一皇女のバイオレット様はスカーレット様をなだめる。もう何度見た光景だろうか。バイオレット様はいつも僕を守ってくれるし、普通に喋りかけてくれるいい人だ。僕は心の中で尊敬している。
朝ごはんはパンに卵にバターと高級食材が並んでいる。平民の主食はほとんどが芋なのでうらやましい限りだ。そうして皇女様たちは朝ごはんを済ませて自室へ戻っていった。
「また後でね」
エリーは笑顔で手を振った後、食堂を後にした。
「よし、ここからが本当の仕事だ」
僕は気合を入れる。まず朝ごはんの料理を片付けた後、簡単に朝食を済ませ、王宮内の掃除、洗濯、所作の勉強を午前の内に終わらせなければならない。初めはまったく間に合わなかったが、今ではぎりぎり時間内で終わらせることができている。これも成長だ。
午後からはエリザベスのお世話だ。僕は専属の執事のため午後はずっとエリーと一緒だ。王宮の庭えお二人で見て回ったり、エリーのダンスの稽古を傍で見たりしてとても楽しい。この時間のために僕は頑張れるのだ。
あの独りぼっちで奴隷だった時の僕では考えられないくらい幸せだ。お母さんありがとう。女の子を助けたら自分にちゃんと返ってきたよ。思わず涙がこぼれそうになるのを堪えた。
エリーの執事となって二カ月が経った。
執事の仕事にも慣れ、毎日エリーと楽しい日々を送っている。今日はエリーと初めて城下町に行く日だ。今日は起こさなくていいと言われたので王宮の前で待っているとエリーが慌てて走ってきた。
「はあはあ。ごめんなさい。少し遅れちゃったわ」
エリーは申し訳なさそうに息を整えながら僕に謝る。エリーの今日の服装は長袖の純白のドレスに黒のヒールを履いている。本当に良く似合っている。
「全然いいよ。それよりその服とても似合ってるよ」
正直に感想を述べるとエリーは照れながらうれしそうに笑った。
「ふふ。ありがとう。それじゃあいきましょう!」
エリーは僕の手を引いて歩き出した。
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