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ベントの決意

 「ルーク!ナーシャ!」


 二人とも倒れていて動かない。そんな二人に止めをさすようにゆっくりとゴーレムが歩き出した。まずいこのままでと二人とも死んでしまう。とにかく魔法を打たないと!


 「シャドウボール!」


 ゴーレム目掛けて黒い玉を放つ。しかしゴーレムはウィンドカッターで僕の魔法を打ち消した。そのまま僕にも魔法を放ってくる。


 「シャドウカーテン!」


 それをなんとかシャドウカーテンで防ぐ。くそ!やっぱり僕の魔法じゃ速度が足りない!その間にもどんどんとゴーレムはルークたちに近づいていく。どうする?いやだ。死なせたくない。初めての友達なんだ。


 ルークはお父さんが帝国に裏切ったことを知っていても尚一緒にいてくれた。今度は僕が彼を救うんだ!お父さん力を貸して。お父さんに教わった絶体絶命の時にしか使ってはいけないと言われた魔法。僕がどうなってもルークとナーシャを救うんだ!


 「シャドウバーサーク!」


 僕はシャドウカーテンを体に纏わせる。そして意識がどんどんと闇に浸食されていく。くそ・・やっぱり・・意識が・・・・



 「・・ここは?」


 大きな地響きと共に目が覚める。あたりを見回すとゴーレムが何かと戦っていた。そうだ!俺はゴーレムの魔法を食らって。いった!右腕がいたい。幸いなことに折れてはないようだ。でもさっきからゴーレムと戦っているのは・・


 黒い影に包まれた獣のような悪魔のような生き物がゴーレムを圧倒していた。あれはベントか?とてつもなく強い。目にもとまらぬ速さで黒い大きな手でゴーレムの身体を切り裂いている。まるで獣だ。


 「ぐるわあああああ!!!!」


 ベントは獣のような咆哮を上げると、手から無数のシャドウボールを繰り出してゴーレムにぶつけた。そしてゴーレムはなすすべなく体を穴だらけにされて倒れた。ドシーンという大きな音と共にゴーレムが地面に倒れて動かなくなった。


 「ぐるわあああああ!!!!」


 倒れたゴーレムの上でもう一度咆哮を上げた。すごいベント!あのゴーレムを一人で倒すなんて。でも様子がおかしい。本能にしたがう獣のようだ。ふとベントと目があった。次の瞬間ベントは僕に向かってシャドウボールを放った。


 「な?!ファイアボール!」


 僕は慌ててファイアボールを放つ。やっぱり!確実に理性が飛んでいる。


 「ベント!しっかりして!」


 僕は必死に呼びかけるも反応はない。ベントを見ていたはずなのに一瞬で視界から消えていた。


 「ベント?!どこに!・・ぐっ!」


 気が付いたら僕はベントに首を掴まれて持ち上げられていた。やばい・・意識が・・


 「ベント・・しっかりして・・ベント・・」


 

 僕は真っ暗な空間にただ一人佇んでいた。あれ?僕は何をしているんだっけ。周りを見渡しても何もない。すると父さんが目の前に現れた。


 「お父さん!やっと戻ってきて!父さん!行かないで!・・」


 お父さんはどこかに消えてしまった。父さんどうして・・どうして僕とお母さんをおいていったの・・ふとお母さんが夜中に泣いていることを思い出した。お母さん・・


 「寂しいよ・・誰か・・助けて・・」


 寂しさがこみ上げて思わず泣いてしまう。


 「この裏切り者が!・・」


 「あれが敵に寝返った人の子供みたいよ。仲良くしちゃだめよ」


 嫌な記憶が蘇ってくる。そうだ。もうこのまま一生ここに一人でいた方が・・辛い現実なんてもう見たくない・・


 「・・・ベント・・・ベント・・」


 どこからか僕を呼ぶ声が聞こえる。この声は・・ルーク。僕の初めての友達。僕は声の向かう方へ歩いた。でもルークもきっといつか・・思わず足を止めてしまう。


 すると小さいころのお父さんとの記憶を思い出した。お父さんの膝の上で子供の僕が本を読んでいる。こんな事もあったっけ?


 「ベント。もしお父さんがいなくなったらお父さんの代わりにお母さんを守ってね。約束だよ」


 「分かった!僕に任せてよ!」


 「さすが俺の息子だ」


 そう言って頭を撫でてくれた。妙にうれしかったことを思い出した。そうだ。どうして今まで忘れて・・そうだ!お父さんが僕の前からいなくなったのも何か理由があるはずだ。子供のころおお父さんはいつも優しかった。


 「僕はお父さんに会って真実が知りたい!」


 僕はルークの声をする方へ走り出す。そうだ!そしてルークと一緒に僕も超越者になってお父さんにあいに行くんだ!目の前でルークが手を伸ばしていた。僕はその手をしっかりと握りしめる。すると世界が光に覆われた。


 「ベント・・しっかりして・・ベント・・」


 ルークの声が聞こえる。目を開けると、僕がベントの首を絞めて苦しそうにしているルークの姿があった。


 「ルーク!」


 慌てて手を離すと、ルークは苦しそうにせき込んだ。


 「ごめんルーク!いつの間にか意識がなくて・・」


 そうだったシャドウバーサークを使ってから意識がなくなって。そして・・そこからはあまり覚えていない。


 「ごほっ。ごほっ。・・良かったよ意識が戻って。でも死ぬかと思った」


 「本当にごめん」


 ベントは頭を下げる。本当に死ぬかと思った。でもベントがいなくてはどちらにせよあそこで死んでいた。


 「それにしても強かったねベント。あんな魔法が使えたなんて」


 「うん。前お父さんに教えてもらってたんだ」


 僕たちは地面に腰を下ろした。ナーシャはまだ目を覚まさない。隣で意識を失っている。


 「・・ナーシャ起きないね」


 「でも見た感じたいした怪我ではないからそのうち起きると思うよ」


 「・・でもどうする?いったん遺跡を出る?」


 「そうだね。僕がナーシャを抱えるから今日は帰ろうか」


 ナーシャをおんぶする。すごく軽いな。こうすると昔エリーをおんぶしたときの事を思い出すな。僕たちは一階への階段に向かって歩きだした。


 「・・それにしてもあんなゴーゴーが出てくるなんてね」


 「うん。そう簡単にはいかないみたいだ。それに行方不明の魔法使いも見つかってないし」


 「どうする?別の人に代わってもらう?」


 「いや。ここで諦めたらダンジョン攻略なんてできない。それにあの通路がいっぱいある部屋の攻略法は思いついた」


 「え?本当?」


 ベントが驚いた顔でこっちを見てくる。まあ試してみるまでは分からないけど。


 「よし!傷を治してまた再挑戦だ!」


 その日はぐっすりと眠れた。


 



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