魔法学校 編入試験
王様を説得してから次の日。僕は早速魔法学校の編入試験を受けることとなった。エリーに会いたかったが、一度会ってしまうと甘えてしまいそうなので止めた。
そして今は魔法学校の正門の前に来ている。国が運営してるだけあって、建物は立派だ。貴族のお屋敷くらいの大きさはある。中央には噴水があり、地面はレンガで敷き詰められている。
「よし!入るぞ!」
気合を入れて扉をくぐると、30代くらいの女性が出迎えてくれた。
「こんにちは。ルークさんですよね?」
水色の美しい髪に青い瞳。身長は160cmほどで黒色のローブを見に纏っている。だれだろうこの美人は。
「えっと。あなたは?」
「私はローズと申します。この魔法学校の学長をしています」
ローズさんは礼儀正しく挨拶してくれた。それにしても学長だったなんて。
「すみません学長様とは知らず。無礼な態度を」
僕は執事のときに習った挨拶である、右腕を体と垂直にしてお辞儀をした。
「別に構いませんよ。王様から話は伺っています。魔法学校に入ってダンジョンに挑みたいのですよね?」
「はい!」
僕は改めて決意を固める。
「そうですか。ではついてきてください」
そう言うとローズさんは歩き出した。僕もとりあえずついていく。しばらく歩くと、ドーム型の大きな建物が見えてきた。
「えっと?あのドーム型の建物は?」
「あれは魔法の訓練場です。建物には協力な結界がはってあるので少々魔法をぶっ放しても、壊れることはありません。私たちの目的地もあそこです」
そうなのか。僕は初期の魔法しか知らないからそんな威力は出せないけど。そして僕たちはドーム型の建物に入った。中は王宮の庭ほどの広さで結構広い。地面は土で、ドームに沿って観客席のような椅子が並んでいる。
すると先生が中央まで歩いて振り返った。
「ルークさん。今からあなたには私と戦ってもらいます」
ローズさんはにやりと笑った。え?
「え?!そんな!いきなりですか?!」
そんな無茶な。
「はい!もちろん手加減はしますよ。とりあえず今使える魔法を教えてもらえますか?」
「僕が使えるのは、光を生み出すホーリーライトと、物を少し浮かせるフロウと、火を生み出すファイアボールと、水を生み出すウォーターボールと、土を動かすサンズと、風を生み出すウィンドくらいですかね」
母は初級魔法しか教えてくれなかったのでこの程度だ。失望されただろうか。
「えっと。多くないですか?本当ですか?」
ローズさんが驚いた顔でこちらを見てくる。え?すごいのか?
「はい。でもこれってすごい事なんですか?」
「もちろんですよ!普通は多くて3つの属性しか使えないのに、ルークさんは火、水、土、風、光の5属性も使えるじゃないですか!5属性扱える人に会うのはルークさんで二人目ですよ!」
そうなのか。僕はすごいらしい。よし!これでダンジョン攻略の確立があがる!でも一人目はだれだろう?
「一人目ってどんな人なんですか?」
「一人目はその・・今はいいです。ルークさんもいずれ会うかもしれませんね。会わないにこしたことはないですけど」
ローズさんは言いよどんで、寂しそうに笑った。余計に気になるな。いつか会えるといいけど。
「そうでした!早速今から編入試験を始めます。ルールは私に一撃食らわせることです。じゃあいきますよ。ホーリーアロー!」
ローズさんがホーリーアローと言うと、彼女の頭上に光の矢が十本現れた。おいおい。まじかよ!
「えい!」
ローズさんは光の矢を一本ずつ放っていく。くそ!今は走ってよけるしかない。一本目。二本目。三本目。とかわした後で四本目が来た。さっきよりも速い!くそ!これはかわせない。
「サンズ!」
僕は土を動かし壁を作って四本目をガードする。ふー。危なかった。
「やりますね。じゃあこれはどうします?」
ローズさんは五本目。六本目。七本目を束ねて一つの矢にした。これはたぶんサンズでは守り切れない。どうする?時間がない!さっきよりも威力もスピードもある光の矢が飛んでくる。
「フロウ!」
僕は並べられてある椅子をフロウで浮かせて光の矢にぶつける。するとなんとか軌道をそらすことができた。良かった。椅子にも魔法があたっても壊れないように結界が貼ってあると思ったが勘が当たって良かった。そうじゃなければ今ごろ。
「ローズさん!今の当たってたら僕は!」
試験にしては本格的すぎないか?
「ええ。おなかに穴が空いていたでしょうね」
ローズさんは淡々と述べる。いやいくらなんでもおかしいだろ。
「じゃあ次いきますよ」
ローズさんはそんなことお構いなしに魔法を準備する。今までより光の矢が細い。もしかしたら今までのよりはや・・
その瞬間光の矢が僕の左腕をかすめた。
「え?・・あ。あああああああ!!!」
痛い。痛い。痛い。見てみると左腕の肉がえぐれている。僕はその場にうずくまってしまう。
「あああああああ!!!」
くそ!いたい!ふざけんな!これは試験だろ。
「早く立ちなさい。このままでは不合格ですよ」
ローズさんは冷たい声で言う。さっきまでとは大違いだ。
「ぐっ。はあ。はあ」
僕は左腕の激痛に耐えながらなんとか立ち上がる。いたい。いたい。
「それじゃあ。同じの行きますよ?」
ローズさんは再びあの細い光の矢を構える。
「ま。まって」
今度は右腕の肉をえぐられた。
「あああああああ!!!」
いてええーー。くそ!おかしいだろ!
「どうしたの?はやく立ちなさい」
ローズさんは冷たい目を僕に向ける。
「はあ。はあ」
僕はまた立ち上がる。そうだ。この試験を突破しなければエリーに顔向けできない!魔法学校にすら入れなかったなんて絶対エリーに言いたくない!
くそ!でもどうする。あの矢は速すぎる。考えろ!今ある手札で何ができる!そうだ!
「サンズ!」
僕はサンズで動かせる最大量の土を目の前に盛った。6メートルくらいか。
「ウィンド!」
その土をウィンドで風に乗せて先生に向かって飛ばした!
「なるほど。目くらましと攻撃を同時に行うのですか。でも甘い。ウォーターボール」
ローズさんは僕よりはるかに多い水を自分の前に生み出して、土から完全に身を守った。
「なかなかいい攻撃でした。次は」
僕は椅子で体を隠しながら先生に向かって一か八かの突撃をする。
「椅子を盾にしての接近ですか。うーん。だめです。想像力が足りていない。もしこの椅子が貫かれるほどの攻撃が来たら?終わりですね。ホーリーアロー」
ローズさんは10本の矢を生み出しそれをすべて束ねたものを椅子に向かって放った。すると先ほど光の矢を弾いた椅子が見事に貫通している。これで終わりか。
「はあ。これで終わりですか。さて治療を・・ん?」
あれ?ルークさんがいない!椅子を盾にしての突撃ではなかったのか?あたりを急いで見回すが見つからない!いったいどこに行った?!
「ルークさん!一体どこに!」
「ファイアボール!」
突如後ろから放たれたファイアボールに反応できず。そのまま顔に食らってしまい、後ろに吹っ飛ばされる。
「はあ、はあ。やった!いててて!」
僕は腕の痛みをこらえながらなんとか喜ぶ。でも顔はやりすぎたかな?ローズさん大丈夫かな?ローズさんを見るとなにやら自分に魔法をかけると何事もなかったかのように立ち上がった。そして
「すごいですよ!ルークさん!期待以上ですよ!あっ。とりあえず直しますね。エレメンタルヒール!」
ローズさんが僕に魔法を放つと両腕が元通りになった。すごいこれが学長の力か。
「すごいですね!こんなに綺麗に治るなんて」
「ああ。それは私ダンジョンを攻略して女神さまからもらった魔法だからです」
「は?」
え?ということはローズさんは?
「言ってませんでしたっけ?私この国の超越者の三人の内の一人。マリー・ローズです」
ローズさんはどや顔で答える。
「ええええええええーーー!!」
これが僕とローズ学長との出会いだった。