表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/429

第9章|弱肉強食の世界 <1>江鳩さん面談 2回目 セルフケアルーム

<1>


 金曜日。江鳩さんが、2回目の産業医面談を受けるため、『株式会社E・M・A』にやってきた。


 今日は、鈴木先生にオンラインでの臨時面談依頼が入ってしまった。江鳩さんの面談開始ぎりぎりまで、鈴木先生はそちらの対応で手が離せないため、まずは私から江鳩さんに『セルフケア』についてご紹介する段取りになっている。


 事務所に現れた江鳩さんは、前回お会いした時より、少し元気そうだった。


「こんにちは。少し、体調は回復されましたか?」聞いてみた。


「ええ……。というか、面談場所が『ジュリー・マリー・キャピタル』じゃないだけでも、かなり気持ちが楽なんで」


 確かに、江鳩さんの顔色は前より良く、表情が柔らかかった。


「そうですか! 良かったです。さぁ、こちらへどうぞ」


 私は江鳩さんを“セルフケアルーム”へご案内した。



 この部屋は、『株式会社E・M・A』のオフィスの一角に設置されていて、インテリアは黄緑、黄色、オレンジなど明るいビタミンカラーで統一されている。


 ここに定期的に外部の人が通ってくることはないけれど、何かの折に来訪した契約先企業の社員さんに、ストレス対処の方法を学んでもらうのに役立てようと、緒方先生が作った部屋だそうだ。


 ナチュラルウッドカラーの本棚には、様々なストレス対処方法……例えば『認知行動療法』『アサーション』『職場コミュニケーション』などについて書かれた本のうち、スタッフが厳選したお勧めのものを揃えてある。ちょっと変わったものでは、写真集や詩集も置いてある。


 他にも、アロマオイル、枕のサンプル数種類、ビーズクッション、気持ちを書き出すためのノートなどもさりげなく置いてあって、自由に手に取って使い心地を試すことができる。


 ヨガマットも置いてあるので、靴を脱いで、保健師と話しながら、少しストレッチをすることもできる。


 人それぞれ、ぴったりくるストレス解消法は違うので、押し付けず、色々な方法をご提案できるようになっていた。



私は部屋を見せながら紹介した。


「この部屋の名前の由来になっている『セルフケア』は、“労働者自身がストレスに気付き、それに対処するための知識・方法を身に付け、実践すること”です。ちょっと難しい言い回しですが、自分のストレスに早めに気付いて、上手に付き合う方法、というカンジでしょうか。

メンタル不調になられたとき、そして不調を予防するとき、メンタルの『セルフケア』は、とても大切なんです。この部屋の本やサンプル、是非、ご自由に手に取ってご覧くださいね」

 


 “セルフケアルーム”は、小さなスペースではあるけれど『株式会社E・M・A』の本気セレクトが詰まった場所なので、訪れた人にはけっこう好評だ、と先輩保健師さん達が言っていた。『株式会社E・M・A』は、高級路線を貫く方針らしく、オフィスも立派だし、こういう所も手を抜いていない。ちょっとしたショップのような、ワクワク感がある場所に仕上がっている。



「へぇ……これ、いいなぁ」

しばらく本棚を眺めていた江鳩さんは、星の写真集を手に取った。


「その写真集、素敵ですよね」


「ええ……癒されますね……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ