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第8章|右肩上がりの市場価値 <3>ただいま戻りましたァ

<3>



 ―――夕方17時。



「あ、足立里菜。ただいま、戻りました……ァ」

「産業医鈴木、戻りました」


 本日の会社訪問5件を無事に済ませて、鈴木先生と一緒に『株式会社E・M・A』に帰社した。

 


今日も、忙しかったぁぁぁ……。


 

「せ、せ、せんせえ、ちょっと、甘いもの食べてから、報告書作っても、よろしいでしょうか……グフっ」



 そう。私たちのお仕事は「会社訪問」だけで終わりじゃない。

会社訪問が終わったら、今度はオフィスで、業務報告書の作成をしなければならないのだ。


――産業医と保健師が、今日どの会社を訪問して、実際にどんな業務を行ったか。

――顧客から、どんな質問が寄せられ、どう対処したか。

――見つかった課題は何か。


 これらをしっかり記録することで、たとえ担当産業医が交代になっても、シームレス(つなぎ目が無い)な対応ができるし、契約を続けて頂ける限り、長年の経過が保管されるから、結果的に『株式会社E・M・A』の信用と、顧客満足度向上につながる……。


と、いうことで。


報告書作成は、なくてはならない重要な業務、らしい。



 鈴木先生に『ペア保健師』がいなかったころは、鈴木先生は直行直帰が多かった。でも今は、研修中の私がいるので、契約先回りが終わった後、夕方こうして『株式会社E・M・A』に一緒に戻ってきて、報告書作成や、今日の振り返りなどに付き合ってくれている。



「ええ、どうぞ休憩を……と言いたいところですが、緒方先生からの呼び出しです。先にそちらのほうを片付けてから、小休憩をとり、仕事の続き、という段取りにしましょう」



 今日も一日じゅう東京の会社を飛び回っていたのに、鈴木先生は疲れも見せず、かといって笑顔でもなく、涼しい顔をしている。

 鈴木先生は、タクシーに乗っている間だけじゃなく、昼休憩中も、食事を早々に済ませて仕事をしていたハズ。



「先生、体力ありますねぇ……」私はげっそりして答えた。



「この仕事、体力的にきついとは全く思いませんが……。足立さんには、精神的な疲労もあるのでしょう。まぁ、最初はどんな仕事でも疲れるものです。業務に慣れ、見通しが立てられるようになればきっと楽になりますよ。では、緒方先生のところへ行きましょう」



*************************


 社長室に行くと、緒方先生が待っていた。


「あら、足立さん、お疲れみたいね」


「あ、いえいえ、全然ッ!疲れてません。元気いっぱいですッ」


 私は精一杯の虚勢を張った。

 鈴木先生が一瞬、疑いの視線を向けてきたような気がしたけど、私はそれを横目でけん制した。


 だって、無職で困っているところを、緒方先生に拾って頂いたのだ。

多少のことで、弱音は吐けない。


「そう。ならいいけど……。今日は当社に、業務依頼があったので、お二人に来てもらいました。この方……『ジュリー・マリー・キャピタル』の、栗栖くりす貞乃さだのさんから。新規で産業医のスポット対応をご希望よ。以前、女性経営者の集まりで顔見知りになっていたご縁でね。ちょうど今月号の『Folks JAPAN』に載ってるから、見てみて」


 緒方先生が、雑誌の記事を見せる。



「あ……これって……!! 」



 緒方先生が開いて見せたページに載っていたのは、今日、タクシーの中で見た顔だった。




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